15分の朝ドラで高揚感を得られるんだ! のぶ&嵩の“子役最終回”が見せた未来の夫婦関係

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2025-04-12 06:00
投稿日:2025-04-12 06:00

第2週「フシアワセさん今日は」#10

 久しぶりに登美子(松嶋菜々子)の顔を見て胸がいっぱいになる嵩(木村優来)だったが、登美子は困惑した表情を浮かべる。のぶ(永瀬ゆずな)はいなくなった嵩が心配でいてもたってもいられない。そんなのぶを、羽多子(江口のりこ)は売れ残ったあんぱんを売りに行こうと外に連れ出す。

 すると、道にへたり込む嵩の姿が。羽多子とのぶが見守る中、あんぱんを夢中で頬張る嵩。腹の底から力が湧いてきた嵩は、力強く歩き出す。

【こちらもどうぞ】『あんぱん』RADWIMPSの主題歌は本当に「合っていない」のか? 正統派・朝ドラOPの真逆を貫いた意味

【本日のツボ】

ありがとう! チビのぶ&チビ嵩

 ※※以下、ネタバレあります※※

 ヤムおんちゃんが、1個10銭とふっかけていたあんぱんですが、結局のところは1個3銭に落ち着いたようです。が、ほとんど売れていないようで、これでは儲けどころではないのでは? と心配になります。

 お金にシビアなヤムおんちゃん、壊れた自転車を修理して隣町にまであんぱんを売りに行くとか。どこから持ってきたのかわからないパン作り道具一式も代金を朝田家から徴収したとは思えないし、材料費しかり。なんだかんだ言ってやっぱりいいひとなのでは。

 本日のメインはやはり、「母をたずねて三千里」のマルコなみに、高知まで歩いて母に会いに行った嵩でしょう。ハガキに書かれた住所を頼りに、よくぞ辿り着けました。なのに、母の迷惑そうな態度。「何しにきたの?」のあげく「親戚の子」呼ばわりですから。

 マルコの母とはえらい違いです。この出来事は嵩の心に大きな傷を作ったに違いありません。嵩を演じた木村優来(ゆら)の静かな怒りと哀しみが綯い交ぜ(ないまぜ)になったなんともいえない表情がよかったです。

 力尽きて道でへたり込む嵩にあんぱんを差し出す羽多子。夕映えの道のこんなシーン、絵本の「あんぱんまん」(「アンパンマン」ではありません)で、読んだような記憶が…。

 嵩がのどを詰まらせないように、水筒の栓をとって渡すなどあれこれ世話を焼くのぶに、おとなになった暁の2人の関係性を見たような気がしました。

 そんなチビのぶ&チビ嵩とも本日でお別れ。最近の朝ドラは、ヒロインの子ども時代を演じた子役が、その後、ヒロインの子どもとして転生するのが定番ですが、史実では、やなせ夫妻に子どもはいないとのことで、その可能性も低いか、と。

 この2週間、チビのぶ&チビ嵩のおかげで、楽しい日々を過ごすことができました。朝ドラってこんな高揚感を得られるのですね。直前の半年間ですっかり忘れていました。ありがとう、チビのぶ&チビ嵩!

桧山珠美
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TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

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