「あんぱん」“柳井嵩子”事件、ドロドロ展開を期待してごめん。黒井先生の凛とした姿は見事でした

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2025-05-17 06:00
投稿日:2025-05-17 06:00

第7週「海と涙と私と」#32

 卒業が近づいてきたある日、のぶ(今田美桜)は黒井(瀧内公美)から手紙の差出人『柳井嵩子』が偽名なのではと指摘される。関係を怪しむ黒井に、嵩(北村匠海)の絵に救われたことなどを話すのぶ。そして、もう手紙がくることはないと思うと言ってうつむく。黒井は「あなたは、やっぱり弱い」と言い……。

 そんななか、のぶの卒業後の配属先が決まる。そして、昭和13年3月、のぶは女子師範学校を卒業し、新たな一歩を踏み出す!

【こちらもどうぞ】「あんぱん」メイコたちの“椰子の実”をどこかで聞いた…ヒロインの妹は歌う法則があるのか?

【本日のツボ】

黒井先生(瀧内公美)の凛とした姿は見事

 ※※以下、ネタバレあります※※

 卒業間際に降って沸いたような「柳井嵩子」偽名事件。まもなく卒業だし、金曜日だし、どうせ大ごとにはならないのだろうな、と思ったら案の定でした。黒井の恩情で、「学校には報告しない」とのことでしたが、報告するにも、この学校、教師は黒井しかいないのでは!?(笑)

「愛国の鑑」として人気者ののぶに嫉妬し、「柳井嵩子」が偽名だと黒井にチクったのはうさ子(志田彩良)なのでは、と思いましたが、そんなドロドロ展開にはなりませんでした。そんなふうに思うドス黒い心の自分を恥じます。うさ子ちゃん、ごめんなさい。

 とはいえ、考えてみれば、女子師範学校の2年間、このドラマにとってさほど重要ではなかったのかも…。のぶはしょっちゅう実家に帰ってくるし、学園生活はほとんど描かれずで、クラスメイトはモブ扱い。

 主な出来事といえば、のぶが軍国女子になったことくらいでしたから。そんななかでも、黒井先生を演じた瀧内公美の凛とした姿、立ち振る舞いは見事でした。のぶの卒業で出番が無くなってしまうのが惜しいくらいです。

豪の仕事着をギュッとする蘭子

 そして、やはり、この人。蘭子役の河合優実です。豪ちゃんの着ていた作業着の半纏をギュッと掴むシーン。

 台詞もないほんの一瞬でしたが、豪の無事を願う気持ちと寂しさが綯い交ぜになったような想いが伝わってきて、胸が締め付けられそうになりました。蘭子と豪ちゃんの物語を、もっともっとみたいです。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


タナケン(生瀬勝久)の決め言葉、「どうだろうね」に込められた真意
 スズ子(趣里)は、不安を抱えたまま喜劇王・タナケン(生瀬勝久)との舞台稽古を続けていた。  なんとかしようと、ス...
桧山珠美 2024-01-22 15:16 エンタメ
ブギウギ新章、タナケン役生瀬勝久の“顔芸”と「3枚の張り紙」が見もの
 小夜(富田望生)が付き人をやめると言って姿を消してから3カ月、愛助(水上恒司)は大学を卒業し、村山興業で働き始める。 ...
桧山珠美 2024-01-17 15:49 エンタメ
5年ぶり「おっさんずラブ」にコレジャナイ感?それでもいいと思うところ
 あの「おっさんずラブ」が5年ぶりに帰ってきました。2018年4月期にスタートした同作は、ピュア過ぎるおっさんたちの恋愛...
小夜(富田望生)の食い意地は国境を越えた!愛か、餌付けされただけか
 復学した愛助(水上恒司)は、スズ子の公演に触発され、いっそう勉学に励んでいた。  そして、公演が再開して以来、ス...
桧山珠美 2024-01-12 16:05 エンタメ
任侠ドラマ出演の高岡蒼佑様…小栗旬&芸能界批判に“かわいいチワワ”か!
 アウトローな役柄などで人気を博していた元俳優の高岡蒼佑。役者引退宣言をしていたものの、今年2月にリリースされる任侠ドラ...
堺屋大地 2024-01-11 06:00 エンタメ
朝ドラ名物の闇市、小夜の食い意地はタダモノじゃねえ!
 戦争が終わって3カ月、世の中の混乱は続き、スズ子(趣里)たちは未だ公演ができずにいた。  愛助(水上恒司)の病状...
桧山珠美 2024-01-09 14:50 エンタメ
歯に衣着せぬ小夜のキャラを生かしたブギウギ流「玉音放送」シーン
 終戦の日。スズ子(趣里)たちは巡業先の富山で玉音放送を聞く。りつ子(菊地凛子)は慰問先の鹿児島で敗戦を知る。  ...
桧山珠美 2024-01-08 15:50 エンタメ
原作は4コマ漫画! 名作“ぎぼむす”のイケメントリオを味わい尽くそう
 新年あけましておめでとうございます。  例年であれば、大晦日は「ジャニーズカウントダウンライブ」で年越しするので...
特攻隊の前で「別れのブルース」、過去の“淡谷のり子物語”と異なる描き方
 1945年、日本の戦況はますます悪くなっていた。富山に慰問に来ているスズ子(趣里)は、女中の静枝(曽我廼家いろは)の話...
桧山珠美 2024-01-05 14:00 エンタメ
制作費の都合?「夜来香ラプソディ」音楽会シーンなしは残念すぎる
 上海の羽鳥善一(草彅剛)は、音楽会の準備を進めていた。羽鳥は、黎錦光(浩歌)が作曲した「夜来香」にブギを取り入れた音楽...
桧山珠美 2024-01-04 17:50 エンタメ
【2023年人気記事】マッチ様は逃げ上手と無責任のプロだった
【「残念プロフェッショナル」の流儀】  2023年も「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大き...
堺屋大地 2024-01-02 11:44 エンタメ
辻希美&杉浦太陽はニベアのCM…仲良しラブラブ芸能人夫婦はお金を生む
 元モーニング娘。のなかで1番の勝ち組は、やっぱり辻ちゃん(辻希美)でしょう。  先日も元モー娘。の中澤裕子、保田...
スズ子と愛助の無償の愛、平和ボケの今とは違って生きるも愛するも命がけ
 東京に戻ったスズ子(趣里)は、空襲で一面ががれきになっている惨状を目の当たりにする。  スズ子が三鷹の家に戻ると...
桧山珠美 2023-12-28 14:10 エンタメ
東京大空襲、愛し合うスズ子と愛助の運命は…金曜放送回を前におさらい
 トミ(小雪)の許しが出て、山下(近藤芳正)が正式に楽団のマネージャーとして加わることになった。  スズ子(趣里)...
桧山珠美 2023-12-27 17:40 エンタメ
コワモテ黒田の起用は大正解! スズ子派に寝返り、顔芸と手振りが秀逸
 結核が再発した愛助(水上恒司)の看病を、三鷹の家で続けることになったスズ子(趣里)は、日々愛助のために身を尽くしていた...
桧山珠美 2023-12-26 15:50 エンタメ