40代は“知人の訃報”がくる年齢だ。憎んだ男の「死亡通知書」で20年ぶりに集う同級生、独身の私はどう映る?

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-06-15 10:16
投稿日:2025-06-14 06:00

彼の死をきっかけに集う、かつての仲間たち

 故人の住所は世田谷区だった。あの頃、死んでも赤羽を離れないって言っていたクセに、彼は赤羽からはるかな場所で死んでしまった。

 ふと、スマホに2件の留守電があったことに気づく。おそらく同じタイミングでハガキが来たのだろう。こちらも20年近く会っていない大学時代の友人たちだった。

『ハガキ、来た?』

 探るような問いかけをしてきたのは、美鈴だ。彼女は、私の記憶から状況が更新されていなければ、2人の子持ちの専業主婦。

『壮一の訃報のハガキを見ました。大学の仲間で線香をあげに行きませんか?』

 具体的に簡潔な連絡だったのは、詩織。彼女は大企業に就職したことをきっかけに、連絡はとっていない。

 百恵はSMSで返答をし、さっそくLINEグループを作った。子どものアイコンとビールのアイコン、名乗らずともどれがどっちだか把握できるのが可笑しかった。

20年ぶりの友達にどう映っているのだろう? 

 その日は、雨の代田橋駅で、待ち合わせをすることになった。

 比較的落ち着いた色のセットアップで百恵は時間から少し遅れて現れると、喪服のふたりが駅に立っていた。

「やっときた」

「いつぶりだっけ?」

「20年くらい?」

「相変わらずだね」と、詩織が言った。百恵はその言葉が自分が喪服ではないことの指摘だと察したが、嫌な気分はしなかった。かつての彼女なら、会うなり嫌味を言っていたはずだから。

 20年の成長を実感する。

 美鈴もそう。笑顔で出迎えてくれた時の、目尻に刻まれた皺やほうれい線の濃さが、空白だった時間を感じさせる。

 私はどう彼女たちに映っているのだろう? 

 時間と環境が作った薄い壁を感じながら、私たちは訃報に記載の住所へと足を運んだ。

#2へつづく:48歳、乳がん検診の「要精密検査」に衝撃。独居暮らし男の孤独死に重なる…誰にも看取られない恐怖】

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


我が子なのになぜ? 娘と気が合わない3つの理由と子育てが楽になる考え方
 人間同士には相性があり、親子だって相性が合わないこともあるでしょう。とくに、娘は母親と同性なので、余計に気になるのかも...
お地蔵さんのパワー
 街道の片隅で、どれだけの仏が力を合わせれば良い世の中になるのだろう。  日本全国津々浦々でも足りないの?
四字熟語「人三化七」読める? くれぐれも使い方にはご注意を
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
「大谷翔平です」はアレンジOK!? 初対面から好印象を抱いたLINEの面白い挨拶3つ
 LINE交換をしてから最初に送る内容は、意外と大切かもしれません。だって、ただの挨拶よりも面白い挨拶を送れば好印象を抱...
自分の年齢を言いたくない時は「98歳になるよ!」もアリ。困った時のスマートなかわし方6選
 40代を超えると、年齢はあまり言いたくないものになりませんか?(苦笑)年齢を聞かれた時には、スマートなかわし方を身に付...
幹事は多めに払うべき? 同窓会で見たちょっと切ない「友情とお金」の話
 ずっと続く友情っていいものですよね。大人になっても昔の友だちと飲みにいけるなんて幸せなことだなと思います。だけどスナッ...
【ゼクシィ付録】結婚予定はないけど買ってみた!「アフタヌーンティー」ポーチの実力は?
 結婚の「け」の字すらない状況なのに、こんなことをしていいのでしょうか。付録目当てでゼクシィを購入してしまいました!(汗...
メルカリか永久引き出し奥か。女友達からのいらない誕生日プレゼント6選
「誕生日プレゼントってもらえるだけで嬉しい♡」と、どんなものにも感激していたかわいい時代は、遥か昔。アラサー・アラフォー...
男社会で出世する女性は何が違うの? 特徴&今すぐ身に付けたい3つの習慣
 女性の社会進出はかなり進んできましたが、まだまだ男社会で出世する女性になるのはたやすい話ではないでしょう。では、どのよ...
「鏡も見たくなかった」対人恐怖症の筋肉マッチョが自分を好きになるまで
 日本で唯一のコンテスト主催団体による“生涯現役で魅力ある存在を目指す”ミスターコンテスト「Mr. Phoenix(ミス...
出費額は100万円!? なぜ筋肉マッチョは「ミスターコンテスト」に挑むのか
 女性の外見や内面の美を競うミスコンテスト(以下、ミスコン)。ルッキズムの議論が広がる昨今、ミスコンの意義を問う議論が絶...
記憶鮮明な阪神・淡路大震災発生前夜の“異変”。冬眠モードのカメが突然大騒ぎして…
 8月8日16時42分ごろ、日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が発生。その後、気象庁が初めて「南海トラフ地震臨時情報(...
“たまたま”チェックに余念のない茶トラ君♡ 写真集の表紙になれるかな?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「妊娠アウティング」経験者たちのエピソード 悲劇はどうすれば防げたのか
 皆さんは、「妊娠アウティング」という言葉を知っていますか? もしかしたら、実際に被害を受けたことがある人もいるかもしれ...
あの人気観葉植物が地震を予知!? 植物の異変から事前兆候を察知する話
 テレビ画面に映し出される南海トラフの「巨大地震注意」の文字…。不安で心が押しつぶされそうになりますな。ワタクシが生...
アプローチ中のおんにゃの子は塩対応? “たまたま”の恋の行方にドキドキ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...