仕事一筋の私が『対岸の家事』詩穂に共感した理由。くだらない「専業主婦vsワーママ」対立してる場合じゃない

森鷹ユキ
更新日:2025-06-14 06:00
投稿日:2025-06-14 06:00

「今日は残業できる日なんだ!」ワーママの彼女がつぶやいた一言

 私の場合はそんな感じなのだが、ふと周りを見渡してみると、“ゲームオーバー”にならないように仕事と家庭を「両立」している礼子のような女性たちが多いことに気づく。

 私がまだ会社員だった頃、とても印象に残っている出来事がある。

 普段は子どものお迎えのために、17時半には退勤していた女性社員が、ある日こう言ったのだ。「今日は残業できる日なんだ!」と。「今日は旦那が子どもたちを見てくれているから、思いっきり残業できるの」と、彼女は嬉しそうに話していた。

 働き方改革やワークライフバランスが重視される今、こうした発言は批判されるかもしれない。でも、彼女にとっては、2週間に一度の“残業デー”が、思う存分仕事ができる特別な日だったのかもしれない。

  彼女に限らず、ワーキングマザーたちのスケジュールはいつも分刻みだ。退勤後、子どものお迎えに急ぐ彼女たちと駅まで一緒に歩くことがよくあったが、「ごめん、○時○分の電車に乗らなきゃいけないから、早歩きでもいい?」と、決まって申し訳なさそうに言われた。

 東京では電車なんて次々に来るのに、それでも「その一本」に乗ることが彼女たちにとっては切実なのだ。それだけ、毎日を必死に生きているのだと思う。

 男性と女性の分断を煽るわけではないが、仕事と家庭の「両立」を求められるのは常に女性だ。新聞やネットニュースの見出しを見ても「両立」のラベルが貼られるのはほとんど女性だ。

「あなたは本当にそれでいいの?」と問いかけたい

 ドラマの話に戻ろう。『対岸の家事』にはサブタイトルとして、「これが、私の生きる道!」とついているが、全話を通してこの理念(?)が貫かれていたドラマだったと思う。


 冒頭で触れた詩穂もしかり、礼子も夫の転勤についていくために一時は会社を辞めて専業主婦になろうとするが「私、会社やめません! ここに残ります!」と宣言。

「私、やっぱり仕事続けたい。今の会社で働くのが好きだし、もっと挑戦したいこともあるから。私も楽しんでいる背中を子供たちに見せたい」と夫の量平に訴え、量平が転職をするという形で家族一緒に暮らせる道を選ぶ。

 学生時代の友人にも夫の転勤でキャリアを諦めた女性が何人もいる。そのたびに私は(大きなお世話だけど)歯痒かった。なぜ妻のほうがキャリアを諦めるのか? それこそ他人の人生だし、本人が納得していれば私がどうこういうのは間違っているとは思いつつも、いまだに「あなたは本当にそれでいいの?」と心の中で問いかけずにはいられない。

森鷹ユキ
記事一覧
1982年生まれ。新聞社系エンタメサイトで記者を務めたのちに女性系メディア、ライフスタイル系メディアで編集者兼記者として従事。エンタメ、ライフスタイル、ジェンダーについての取材執筆を行う。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


ほっこり癒し漫画/第65回「パカラパカ、春のひとみにタツノオトシゴ」
【連載第65回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 「しっぽ...
恐怖の親知らず抜歯!30女が超ビビりながら人生初抜歯した話
 皆さんは親知らずがまだ生えていますか? 筆者は30代になってもすべての親知らずが生えたままです。  歯は大切にしてい...
千代田区民は“勝ち”だよね。通勤ラッシュを知らない自分は上流階級層の女
――『東京の中心に暮らす、ということ』…なんてね。  鈴木綾乃の頭の中にマンション販売のコピーのような、そんな言葉...
え…? 優雅な御茶ノ水ママ友会をブチ壊した、地方出身者の悪気ない一言
 御茶ノ水駅が最寄りの持ち家に住む薬剤師の綾乃。2歳年上の夫・孝憲と4歳の娘・香那と3人家族で余裕ある生活を送る彼女は、...
世帯年収1500万円でも越えられない壁。耐え難い屈辱を喰らった女の選択
 御茶ノ水駅が最寄りの持ち家で2歳年上の夫・孝憲と4歳の娘・香那と3人家族で余裕ある生活を送る彼女は、ママ友と共に充実し...
たまにはこんな日もあるよね? 終電を見送ってしまった夜
 久しぶりの仲間との時間が楽しくて、「あと1杯だけ」「あと10分だけ」を続けていたら終電を見送ってしまった。  だ...
「自責と他責」バランス上手な大人が口癖にしている神ワード
 ここ数年、自責思考・他責思考みたいな話題をよく見かけませんか? 私はもう見るたびに「うるせぇ~!」となっている反面、し...
出張ホスト、ママ活、女風…女性の金目当てに上京する男性が増えている!
 近頃は地方移住が話題となっていますが、その逆に「地方では稼げないから上京する」男性も出てきています。  出張ホストや...
ご飯をありがとにゃ! お母さんが大好きな“たまたま”君たち
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
荒れる2024年幕開け 花屋が祈りを込めた「復興と希望」の花束
 2024年が明けました。今年は元旦から思いもよらないことが起こって、まさに辰年。大きな変化の年が始まったようでございま...
2024年こそシンデレラボディ!フェロモンジャッジで分かるケア&香り術
 素敵な女性はいい香りがする――。  そう感じるのは、肌から放たれるフェロモンの効果。フェロモンが高まると色気だけ...
動物は「あったかい場所」を見つける才能があるみたい
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
暇すぎ死にそう…大きな声じゃ言えないけど仕事中にばれない暇つぶし5選
 同じ仕事でも、忙しいと時間は早く過ぎ、暇すぎると永遠に時計が止まったように見えるもの…。とはいえ、仕事の拘束時間なので...
見上げた青空が眼に染みて…1日に1回くらいは空を眺めてみる
 青空が眼に染みると思ったら、しばらく空を見上げていなかった自分に気が付いた。  うつむいて歩くのがクセになってい...
私「復縁希望?」女友達「あと2年で吹っ切る」失恋かまってちゃんLINE
 失恋をして心が傷つくと、少しでも誰かに気持ちを聞いてもらいたくなるもの。  でも、あまりにしつこかったり、常識が...
キャンプより安近短なべランピング!楽しむコツ&それでも失敗したエピ
 空前のキャンプブームが到来していますが、やはりイチからキャンプギアを集めてテントを張って…となると、ハードルが高いと感...