「あんぱん」のぶ、“落とし前”の付け方はそれでいいのか。次郎役の中島歩はあまりにも素晴らしかった

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2025-07-01 17:39
投稿日:2025-06-23 16:07

第13週「サラバ 涙」#61

 終戦から5か月が経ち、国民学校ではGHQの指導のもと軍国主義教育からの転換が図られる。のぶ(今田美桜)は病気が一向に回復しない次郎(中島歩)の見舞いに、海軍病院に通っていた。努めて明るく振る舞うのぶだったが、次郎にあることを打ち明ける。

【こちらもどうぞ】「あんぱん」ここがヘンだよ、戦争パート。のぶが夫に駆け寄らないのはなぜだ?

【本日のツボ】

次郎の速記が気になる

 ※※以下、ネタバレあります※※

 生徒たちに「先生はみんなに間違うたことを教えました。ごめんなさい」と謝るのぶ。そして、学校を去りました。

 あとで、次郎に「あの子らの澄んだ目を見たら、何ちゃあ言えんなってしもて」と心の内を語っていましたが、“愛国の鑑”と言われ、日本の勝利を信じ、子どもたちにも軍国主義教育を叩き込んできたことの“落とし前”の付け方がどうも釈然としません。

 GHQを登場させるとなると、稲川素子事務所からタレントを調達しなくてはいけませんから、その手間を省いたのかもしれませんが、校長先生やほかの先生たちが、軍国主義教育から一転、民主主義教育へと手のひら返しするところや、その時ののぶの立ち位置など、もっと描いて欲しかったような……。

 せめて、教科書の問題あるとされる箇所に墨を入れるシーンはのぶにやっていただきたかったですね。

 そして、次郎です。愛用の手帳に、なにやら記号のようなものを書いてのぶに見せます。それが“速記”だということを、次郎の母・節子(神野三鈴)から聞いて知るわけですが。

 残念ながら、“速記”の心得がなく、次郎がなんと書いたのか、わからないのがもどかしく……。おそらく、この先、のぶが速記を学ぶことになるのでしょうが、その時に、次郎が速記の意味を知る、という展開になるのでは、という気がします。

 明日はいよいよ次郎との別れでしょうか。

 次郎の死がなければ、嵩(北村匠海)との再婚はないわけなので、仕方のないことなのですが、次郎役の中島歩があまりにも素晴らしく、このまま退場してしまうのが残念でなりません。いっそ霊になって、のぶにまとわりついてくれればいいのに、という願望。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


松本潤&井上真央の"ワイプ共演"が話題…結婚説と破局説が20年燻り続けた背景と後輩カップルたち
 アイドルグループ「嵐」の松本潤(41)が11日、「Snow Man」の冠バラエティー番組『それSnow Manにやらせ...
2025-07-18 17:03 エンタメ
松本人志“ビットコイン資産激増”報道の一方で…秋から始動の「ダウンタウンチャンネル」の不安要素
《信じてくれたん 松本さんだけやったなぁ》  自身のインスタグラムのストーリーズでこう投稿したのが、たむらけんじ(52...
2025-07-18 10:58 エンタメ
BoA、五木ひろし、さだまさし、及川光博…「体調不良で公演中止」が相次ぐ背景
 歌手のBoA(38)が「骨壊死」と診断され、9月から予定していたライブツアーの中止を発表。心配の声があがっているが、こ...
2025-07-18 10:58 エンタメ
柴咲コウ“スピ化”加速? インタビューで語った有機農業と「EM菌」「周波数」発言で心配される今後
《長崎県の佐世保で微生物の力を借りて農業をしている〝菌ちゃん先生〟と出会えたことで、好奇心が加速しました》  7月13...
2025-07-18 10:58 エンタメ
「あんぱん」紅白未出場、浅田美代子の歌唱をここで聞けるとは。吉田鋼太郎の笑顔もグッとくる
 三姉妹揃っての朝田家ご帰還。朝ということは、蘭子(河合優実)は昨夜、のぶの家にお泊りしたのでしょうか。ならば、久々の三...
桧山珠美 2025-07-17 17:39 エンタメ
ラウール「愛の、がっこう。」コア視聴率1%台で爆死寸前… “ホスト美化”演出に若者ソッポ
 木村文乃(37)が主演を務め、Snow Manのラウール(22)がホストを演じるドラマ「愛の、がっこう。」(フジテレビ...
2025-07-18 14:43 エンタメ
ちょいマヌケな斎藤工も新鮮!日本版「誘拐の日」永尾柚乃×安達祐実“新旧天才子役”の共演が熱い
《うろたえる斎藤工さんは新鮮で魅力的ですね》なんてレビューもある。斎藤工(43=写真)主演の連ドラ「誘拐の日」(テレビ朝...
2025-07-17 10:58 エンタメ
小室哲哉“カネと女”で転落から前期高齢期で復活! 中森明菜&氷川きよしとコラボやライブに活路
 13日、都内でファンクラブイベントを開催したのが、60歳の誕生日を迎えた中森明菜。赤い着物で登場した明菜は「ついこの間...
2025-07-17 10:58 エンタメ
BSの芸人番組が醸し出す“心地よい空気感”の秘密 バナナ日村×サンド伊達のコラボ企画も実現
 BSから目が離せない。7月1日、8日放送の「バナナマン日村が歩く!ウォーキングのひむ太郎」(BS朝日)ではサンドウィッ...
2025-07-17 10:58 エンタメ
選挙 行ってみなきゃ言えなくね? 人気男性グループが“ラップ”で投票を呼びかけ「最高!」「こんなアイドルいる?」と反響
 7月20日に行われる第27回参議院議員通常選挙(以下、参議院選挙)を控え、11人組ボーイズグループ・INIの池崎理人さ...
“乙女”な風間俊介に熱視線! 大河のクールな“鶴屋さん”から一転、テレ東BLドラマの可憐な演技に反響続々
《やっぱ風間くんすごいな》なんてレビューもある。7月4日に始まったテレビ東京の深夜ドラマ「40までにしたい10のこと」(...
2025-07-16 18:08 エンタメ
「あんぱん」薪鉄子が持つ“小道具”の細かさに気づいた? すれ違いコントは見なかったことにします
 鉄子(戸田恵子)からの電話に出た東海林(津田健次郎)は、ひとり考え込んでいた。鉄子がそんなに怒っていたのかと、慌てて謝...
桧山珠美 2025-07-16 17:31 エンタメ
五木ひろし「デビュー60周年公演」急遽休演…昭和レジェンド歌手に求められる「働き方改革」
 歌手の五木ひろし(77)が慢性閉塞性肺疾患と気管支炎のため「デビュー60周年記念 五木ひろし特別公演 坂本冬美特別出演...
2025-07-16 17:03 エンタメ
遠野なぎこ“重い演技”の裏にあったもの…朝ドラ女優の確かな演技力でも抜けきれなかった哀しい生い立ち
 今から24年前のことである。熊井啓監督からのご指名で、新作映画「海は見ていた」の現場密着ルポを頼まれた。これは山本周五...
2025-07-16 17:03 エンタメ
『あんぱん』から消えた"イケメントリオ"の今後…「豪ちゃん」は冬に復活、「国民の弟」は民放ドラマへ
 NHK連続テレビ小説「あんぱん」は、放送開始から14週目の7月2日、ついに世帯視聴率が17.8%という最高記録に達した...
2025-07-16 17:03 エンタメ
坂上忍のパワハラ体質がまた公に…コンプラ違反で「一発アウト」になった国分太一との“境界線”とは
 坂上忍(58)の「ガチ説教」が話題だ。フジテレビ系「坂上どうぶつ王国」の2年前の打ち上げでのこと。King & Pri...
2025-07-16 17:03 エンタメ