中年の会話は「あれ、あれ」のオンパレード。それでも“物忘れ”は悪くないと感じた女同士のとある会話

小林久乃 コラムニスト・編集者
更新日:2025-08-06 13:31
投稿日:2025-08-06 11:45
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老化現象についてありのままに綴ります。第40話は「物忘れと本番力」。

昨日の食事を忘れる

 キッチンで料理をしていて、ふと何かを思いついたので洗面所に何かを取りに行った。

(…あれ? 私、何を取りにきたのだろう?)

 40代を迎えた頃から始まった日常的な物忘れ。若い頃の記憶は鮮明で、当時覚えた曲の歌詞はいまだに脳裏へ刻まれているのに、昨日食べたものさえ忘れてしまう。私は他人よりも記憶力が良いという自負がある。人生で最初の記憶は3歳で、親子3人で風呂に入っていた。が、母親に話すと真っ向から否定される。

「お父さんと一緒にお風呂に入るなんて、あるわけないじゃない!」

【こちらもどうぞ】そう来る!? AI提案の「酷暑の乗り越え方」に笑った。私が考えたオリジナル“心理的”対処法も教えます

 否定ぶりがあまりにも全力なので、その記憶が事実であると自ら証明している母。他にも妹が生まれた5歳当時、夜中に叩き起こされて着たセーターの柄や、深夜の病院、看護師に間違って「男の子です」と言われて、飛び上がって喜んだ父の姿(即座に「女の子だ」と訂正された、その後の落胆ぶりも)など、幼い頃の記憶のボリュームといったら。30代でも記憶力は絶好調で、編集者として参加したとあるタレントさんのインタビュー時、ライターさんのレコーダーが録音されていない事件が起きた。その瞬間、私の脳内レコーダーが動き出して「今から話す内容をメモしてくれ」と、トーク内容を完全再現して話した。本人が意識していないのに、全て覚えていたらしい。

 記憶力自慢をしたいわけではなく、物忘れとは縁遠い生活ぶりだったはずなのに、海馬は確実に劣化。冒頭の“何か”を思い出せないまま、キッチンへ戻った。あれは一体なんだったのか。

 物忘れにいちいち落胆していると中年なんてやっていられない。電池と同じで記憶力も摩耗していくのだ。でも時には物忘れも悪くないと思わせてくれる出来事があった。

小林久乃
記事一覧
コラムニスト・編集者
出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にてデビュー。最新刊はドラマオタクの知識を活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディアの構成と編集、プロモーション業が主な仕事。正々堂々の独身。最新情報は公式HP

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


費用0円!「いま暇?」LINEに付き合ってくれる“神友”との暇つぶし3選
 暇で退屈な時に、暇つぶしに付き合ってくれそうな気の知れた友達に「いま暇?」とLINEを送ってしまうこと、ありますよね(...
美術館で「名画の習作」から教えられたこと 2023.7.26(水)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
昔は仲良かったのに…友達との溝ができる5つの理由と対処法
 学生時代から続いている友達とは気心が知れているものですが、だからといって永遠にいい関係が続くとは限りません。また、大人...
業務スーパーが有能すぎる! おすすめ食材5選&飽きないアレンジ方法
 プロ仕様の食材や調味料が大容量で買えると人気の「業務スーパー」。一度にたくさん買うのでお得だし、おいしい食材もたくさん...
4回の引越しで実感!家族で住みやすい土地にする3カ条、転勤族でも安心
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
夕暮れが忍び込む街 2023.7.24(月)
 日差しが落ち着いて、街が暖色に染まる時間。  自分が生まれた場所でもないのに、なぜだか懐かしい気持ちになる。 ...
絶景!ガラステーブルの下は“たまたま”も肉球も見放題の天国
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
天然=可愛いのあぁ勘違い…職場のぶりっ子アラフォーの痛すぎLINE3選
 口調や仕草で可愛らしさをアピールする「ぶりっ子」は、若い世代ならまだ可愛いなと思える範囲ですよね。でも中には、アラフォ...
なぜこんな男と結婚した!? 姉の旦那が嫌いだと感じた5つの瞬間と対処法
 大人になっても仲良しな姉妹って最高ですよね。でも、大好きなお姉さんが選んだ相手だからといって、旦那さんとまで気が合うと...
飛ぶためには一度なにかを手放す必要がある 2023.7.23(日)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
そんな格好…、恥ずかしくって無理!!
 ストリップの公演中、めでたく誕生日を迎えるお姐さんのために、幕間にお祝いの会が開かれることとなった。  その司会...
他人事じゃない! 厄介なご近所トラブル5つの“元凶”と賢い対処法
 暮らしている場所で揉め事が起きると、めちゃくちゃ厄介。日常生活がままならなくなってしまうこともあります。ややこしいご近...
湿度すら雨が洗い流した朝 2023.7.21(金)
 大きく深呼吸をして新しい空気を取り込んだら、冷たい水でのどを潤す。  この水もきっとすぐに汗になって出ていくのだ...
ノー天気に生きてるわけじゃない! アラサー独身女性“不安あるある”5選
 独身を謳歌していてもアラサーになるとふとした瞬間に不安を感じること、増えますよね。周りが既婚者だらけになって、「このま...
美徳だけど危険度高め⁉︎ 優しすぎる人、自分の心がグッタリしてませんか
 優しい人でいたい――。きっと誰もがそう思って生きていますよね。私もいつも思いますし、なるべく優しい気持ちを忘れずに過ご...
ハラハラドキドキ☆ “たまたま”の恋のバトルの瞬間をパチリ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...