更新日:2025-08-01 11:45
投稿日:2025-08-01 11:45
刃が上なら「殺人未遂」、刃が下なら「傷害罪」
そのとき、拓海さんの口から出たのは、思いもよらぬ一言だった。
――刃を下に向けろ!
突然の怒声に、妻はハッと動きを止めた。そして、拓海さんは続けた。
――俺は刺されてもいい。でも、子どもたちの母親を「殺人犯」にしたくない。
冷静にそう告げたという。
「ご存じですか? ナイフで刺すとき、刃を上に向ければ『殺人未遂』ですが、刃を下に向ければ『傷害罪』で済むんです。ふたりの息子たちに母親が犯罪者になる姿は見せたくなかった…」
我に返った妻は、その場に崩れ落ち、手にしていたナイフを落とした。
その一瞬の隙をついて、拓海さんはナイフを素早く蹴り飛ばした。
妻を犯罪者にせずに済んだ
「なぜあの言葉がとっさに出たのか、自分でもわかりません。でも、結果的に、妻を犯罪者にせずに済んだ。それだけは不幸中の幸いでした」
拓海さんはそう苦笑する。
だが、刃物を握り、怒りに任せて突進してきた妻の姿は、今でも鮮明に脳裏に焼きついている。
その光景はときおり夢にも現れ、背筋が凍るような恐怖を呼び起こすという。
ナイフの向きひとつで、罪の重さは変わる。
崩壊は、いつも「想定外」の顔をしてやってくる。
これは、嫉妬の炎がどれほど危険かを教えてくれる、静かで恐ろしい事実だ。
ほんの出来心が、人生を破滅へと導くこともある。それが「嫉妬」という感情の正体――そして、誰もがその引き金を握る可能性があるのだ。
関連記事
ラブ 新着一覧
交際期間が長くなると、どんなカップルにも訪れるのが「倦怠期」。もちろん、倦怠期知らずのカップルもいますが、ごく稀しょう...
「何歳からでも夫婦になるのは遅くない」とお伝えする本連載。今回は番外編です。のべ3000人以上の離婚案件の相談に乗ってい...
彼氏に浮気されたら誰だって悲しいものですが、その後の対応は人によって異なります。あっさりと別れを選ぶ人もいますが、愛情...
どんなにラブラブだったカップルも、思いがけないことが原因で別れてしまうことがあります。お互いに納得して別れていれば良い...
「魔性の女」とは、独自の魅力で男性を翻弄する女性のこと。男性からモテる性質を持つ魔性の女に、憧れたことがある女性も多いで...
男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
「冷酷と激情のあいだvol.58〜女性編〜」では、恋人の二股交際が発覚した女性・七海さんの苦しい本心をご紹介しました。で...
夫の不倫問題に苦しんでいる妻は少なくありません。中には、ある日突然、夫の誤爆LINEによって不倫が発覚し、一気に修羅場...
ガツガツして下心丸出しの男性も困りますが、反対にあまりにも性欲がないと「私に魅力がないのかな……」と不安になってしまい...
自分のことしか考えない自己中な彼氏と付き合うと、ストレスが溜まるものです。「そろそろ別れようかな」と考えている人もいる...
近年、ミスターコンやイケメンオーディションに大きな変化が起きています。それはライブ配信サイトでの課金額が勝敗を左右する...
恋愛中は、どんな時でもワクワクできるわけではありません。時には「疲れるなぁ」なんて感じてしまうこともありますよね。最近...
学生時代や20代の頃は、周りにたくさん男性がいて、その中から自分が好きになれる人を選んで恋ができていたのに……。今は「...
結婚して何年も経てば、相手の存在が当たり前になり、ドキドキ感は薄れてくるものです。ドキドキ感がなくなるということは「家...
よく女性は「自分だけを愛してくれる一途な男性と付き合いたい」と言いますが、実際に好きになる人とは違いがあるようです。そ...
長引くコロナ禍では「コロナ離婚」に至った夫婦も珍しくなくなっています。これまで水面下に問題を抱えていた男女ほど問題があ...