今なら炎上必至も…大多亮プロデューサーのリアルな言語感覚
【あの頃、テレビドラマは熱かった】
「愛という名のもとに」(1992年/フジテレビ)
◇ ◇ ◇
バブル景気が崩壊し、就職氷河期の入り口でもあった1992年。この年の1月、フジテレビの月9と並んで高視聴率ドラマを連発していたフジ木10の“木曜劇場”で放送されたのが、「愛という名のもとに」だ。
前年1月期の月9「東京ラブストーリー」でヒロイン赤名リカを演じ、一躍人気女優となった鈴木保奈美(59)が主演。脚本は「101回目のプロポーズ」などで月9を牽引した野島伸司。大学のボート部だった男女7人が卒業から3年後に再会するところから始まる青春群像劇である。
主題歌は浜田省吾の「悲しみは雪のように」。挿入歌やサブタイトルに至るまで“ハマショー”で固められた構成も話題になった。いまやNHK大河主演俳優となった仲野太賀の父・中野英雄が演じた“チョロ”の衝撃的な場面、そしてラストシーンのイチョウ並木──当時の若者=今の50代後半を中心とした世代にとっては、鮮烈な記憶として刻まれているだろう。
このドラマでハマショーにハマった人も多い。ものすごく怒る人もいるかもしれないが、この世代にとって刺さるのは尾崎豊よりも断然、ハマショーなのだ。おっさんが「もうひとつの土曜日」をスナックで熱唱してヒンシュクを買っても、構わないのだ。
それはさておき、このドラマのプロデューサーは、月9をはじめ数々のトレンディードラマを手がけてきた大多亮。ドラマ放送の少し前、ブイブイ言わせていた頃の大多さんが語っていたのをふと思い出す。
「僕らがターゲットにしているのは、小田急線の各駅が止まる、経堂とかの1Kで家賃6万~7万円くらいのアパートに住んでるOLさん。生活は苦しくても都会に憧れて、ちょっと背伸びしたいような子」
今なら炎上必至の“決めつけ”ぶり。でも、生々しくて誰の頭にも浮かぶリアルなたとえだ。当時は「デキるプロデューサーの言語感覚」として確かに説得力があった。それに腹落ちしたスタッフは一丸となってそこに突き進み、トレンディードラマは隆盛を極めたのかもしれない。
だから、こないだの“中居問題検証番組”で話題となった「女子アナは上質なキャバ嬢」発言も、ある意味、大多さんらしいと妙に納得してしまった自分がいる。いや女子アナさんも世間も許さないだろうけれども。
そうそう、キャバ嬢といえば、チョロが夢中になるのもよく分かるくらいチャーミングだったルビー・モレノは今、どうしているだろうか。
(テレビコラムニスト・亀井徳明)
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