「大金に手が震えた」若手芸人が打ち明ける“営業”の実態…VIP相手の席で抱いた違和感の行方

おがわん ライター
更新日:2025-09-05 11:45
投稿日:2025-09-05 11:45

自分はただの酒席の道具なのか?

 会場は繁華街のラウンジ。

 集まったのは企業の経営者や夜の店のオーナーらしき人々で、酒が進むにつれ空気は乱れていった。芸人たちはネタを披露し、時には下ネタ混じりの即興を要求された。

 客は大笑いし、チップ代わりに1万円札を直接渡す。

「お前ら、いいなあ。テレビ出たら俺がスポンサーになってやるよ」

 そんな言葉を浴びせられながら、Aは笑顔で頭を下げたが、心中は複雑だった。芸を届けているつもりが、ただ酒席の“道具”になっているような感覚が拭えなかったからだ。

 それでも営業の誘いは増えていった。クラブのVIPルーム、豪邸のパーティー、さらには結婚式の二次会。

 ギャラは現金手渡しが基本で、封筒に札束が無造作に入っていた。中には「今回はギャラなしだけど、飲み代は出す」というケースもあり、盛り上げ要員にされることもあった。

「誰の金で笑わせているのか」

 芸人仲間の間では「営業で稼げているやつは強い」という評価があった。

 劇場やテレビに出るより効率的に稼げ、人脈次第でスポンサーに繋がることもある。しかし「あいつ、怪しい営業に出てるらしい」と噂されると、事務所からにらまれテレビの仕事を逃すリスクもあった。

 営業は諸刃の剣だったのだ。

 特に恐ろしいのは、相手が反社会的勢力や違法ビジネスに関わる人物だった場合だ。

 Aの知人芸人の一人は、一度そうした場に呼ばれただけで番組出演を自粛させられ、「闇営業芸人」と叩かれた。本人は深く考えず参加しただけだったが、人生を左右するほどの代償を背負った。

 以来、Aは営業の誘いを受けるたびに慎重になった。封筒に入った現金の重みは、アルバイト10時間分の時給を一瞬で超える。しかし、その封筒一つが将来を壊しかねない。お笑いは本来、人を笑顔にするための仕事だ。けれど気づけば「誰の金で笑わせているのか」が問われる場面に立たされる。

おがわん
記事一覧
ライター
かつてちょっとだけ芸能の世界に所属。現在は縁あって、雑誌やWebメディアなどでライターとして活動中。エンタメ系から日常ネタまで、気になるあれこれを取材。楽しく読んでもらえる文章を目指して、日々ゆるっと執筆中です。

ライフスタイル 新着一覧


便利家電を使いこなすお婆ちゃんが教えてくれたこと
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
虫歯1本に治療費100000円!? ベラボーな額を請求される米国の高額治療費
「アメリカに住んでます!」 と聞くと、日本にはないキラキラした素敵な生活を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。 ...
2024-02-26 19:02 ライフスタイル
〆ラー卒業のアラフォーに!「かに鍋&水炊き」缶のススメ
 お酒を飲んだ後、人はなぜラーメンが食べたくなるのでしょうか? アルコールに浸った体が脂と塩分を欲しているのか…。  ...
子どもの友達に「ばあば」と間違えられたショック! 高齢出産の後悔4つ
 世間では、高齢出産する人がとても増えていますよね。晩婚化が進んだ背景や、不妊治療が保険診療になった変化も大きいでしょう...
日本海から吹きつける風の中、黙々と歩く少年たちが愛おしい
 早朝にも夕方にも見える空の色、学生服の少年少女、ミラーに映る電車。  どこか非現実的な景色は、まるで中村宏の絵画...
おんにゃの子の匂いに夢中!“たまたま”君の恋が実るといいな
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
親バカ上等!いうて夫よりマシかも?子どもの可愛すぎるお手伝い失敗談
 子どもはいつだって、ママを助けたい、褒められたい、役に立ちたいと思っていますよね。だから、小さい子どもはママを喜ばせよ...
惚れてまうやろー!彼氏より気が利くChatGPTに「好き」について聞いた
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
ほっこり癒し漫画/第65回「パカラパカ、春のひとみにタツノオトシゴ」
【連載第65回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 「しっぽ...
恐怖の親知らず抜歯!30女が超ビビりながら人生初抜歯した話
 皆さんは親知らずがまだ生えていますか? 筆者は30代になってもすべての親知らずが生えたままです。  歯は大切にしてい...
千代田区民は“勝ち”だよね。通勤ラッシュを知らない自分は上流階級層の女
――『東京の中心に暮らす、ということ』…なんてね。  鈴木綾乃の頭の中にマンション販売のコピーのような、そんな言葉...
え…? 優雅な御茶ノ水ママ友会をブチ壊した、地方出身者の悪気ない一言
 御茶ノ水駅が最寄りの持ち家に住む薬剤師の綾乃。2歳年上の夫・孝憲と4歳の娘・香那と3人家族で余裕ある生活を送る彼女は、...
世帯年収1500万円でも越えられない壁。耐え難い屈辱を喰らった女の選択
 御茶ノ水駅が最寄りの持ち家で2歳年上の夫・孝憲と4歳の娘・香那と3人家族で余裕ある生活を送る彼女は、ママ友と共に充実し...
たまにはこんな日もあるよね? 終電を見送ってしまった夜
 久しぶりの仲間との時間が楽しくて、「あと1杯だけ」「あと10分だけ」を続けていたら終電を見送ってしまった。  だ...
「自責と他責」バランス上手な大人が口癖にしている神ワード
 ここ数年、自責思考・他責思考みたいな話題をよく見かけませんか? 私はもう見るたびに「うるせぇ~!」となっている反面、し...
出張ホスト、ママ活、女風…女性の金目当てに上京する男性が増えている!
 近頃は地方移住が話題となっていますが、その逆に「地方では稼げないから上京する」男性も出てきています。  出張ホストや...