途切れる集中力。気づいた時にはすでに遅し
「この間のドラマ、あれ面白かったよね」
「あれ、なんだっけ?」
「ほら、フジの木10のさ」
「あ、そうだ、フジって言えば最近、FODに入ったんだけどね、これが良くてさあ」
「FODっていくらするの?」
「……いくらだったっけ? 旦那がやっちゃったからさあ」
「Netflix月額1590円くらいだけど」
「あ、ねえ、Netflixって言えばさあ」
40〜50代の女性3人が集まって繰り広げた会話の一部だ。ドラマタイトルを思い出そうと始まった会話がいつの間にか、動画配信サービスの話へ転換されている。おばさんの会話とは全く脈絡がなく、ネタを深掘りはしない。それはなぜか。単純に集中力が減るからだ。45歳を超えると更年期とともに、集中力の途切れが確実に迫ってくる。単純に脳も老化しているので、ワーキングメモリの減少による影響が、生活の随所へ顕著に現れてくる。
最初に「あれ? 要領が悪くなったんだろうか」と疑問を感じたのは、家事の手筈。単身なので毎日、大量の洗濯物や料理には追われていないけれど、自分なりの長年のルーティーンがある。起床して今日は家事をしようと決めているなら、まずは洗濯をして、片付けをして…とタスクを消化していく。その最中で気づいたのが、家事のやりかけだ。例えば下着は手洗いをしようとつけ置き洗いをしたのに、忘れている。ついさっきまで片付けをしていたのに、視界に入ってきた汚れを落とそうと手に雑巾を持っている。あれ?
二日酔いのせいだろうと流していたけれど、そうでもないらしい。最近では心の中で「集中!」とつぶやいてから、家事をするようになった。
それから読書。出版社勤務経験を経て、現在こんなエッセイを書いているゴリゴリの出版業界人間なので、ふつうの人に比べたら読書量は多い。取材資料として読まなければいけない本、興味がある本。常に私の周りには本が溢れていた。が、読んでいるとどうにも眠くなったり、「あ、そうだ、お湯を沸かさなくちゃ」と気が散ってしまう。30代まで当たり前のように自分に備わっていた、読書に没頭しすぎていつの間にか朝を迎える集中力=スペックが薄らいでいる。気づいて焦りを感じたので、最近は毎日わずかな時間でも良いので「読む」癖を戻そうと、必死だ。
会話が飛ぶ、家事がなかなか完遂できない、本が読めなくなってきた。似たような経験、ないだろうか。
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