見えそうで見えない、柴田理恵の権威とは無縁の自由な笑い
【今週グサッときた名言珍言】
「私たちは隠すことが美学だから!」
(柴田理恵/フジテレビ系「ぽかぽか」9月25日放送)
◇ ◇ ◇
柴田理恵(66)といえば「ワハハ本舗」の看板女優のひとり。2008年に開催した公演で“事件”が起こった。その公演に対し、局部を露出しているという通報があり、現行犯逮捕を狙って警察がビデオカメラを手に15人体制で見に来たのだ。そのときを柴田が回想し、絶対に見せていないと主張した一言が、今週の言葉だ。
「見えそうで見えないところが面白い」のだと。事実、公演中露出することなく終了。そのエンディングで客席に踊りながら降りた久本雅美と柴田は警察に「楽しかった? イエーイ」と手を掲げると、警察もそれに応えてハイタッチを交わしたという。
柴田は大学4年生の頃に、佐藤B作と一緒に芝居がやりたいと思い、東京ヴォードヴィルショーに入団した。だが、数年経っても活躍の場がなく、同じ若手劇団員だった佐藤正宏、久本雅美らと独立。主宰を務めたのは喰始だ。「ゲバゲバ90分」や「カリキュラマシーン」(ともに日本テレビ系)の構成作家だったが、テレビの自主規制が嫌になったこともあり、劇団を立ち上げた。
とはいえ、喰は決して「下ネタ」が好きなわけではなかった。だが、「ギャグになってれば、ジャンルは何であれ」面白いと気付き、「下だからっていうだけで、低いって見なすものの考え方は大間違い」と、下ネタに光を当てようと考えたのだ(YouTube「みんなのテレビの記憶」24年7月5日)。
だから、本来は股間を手で隠しながら客席を走り回る演目なのに、つい隠すのを忘れた俳優には「ふざけんじゃねえ!」と烈火のごとく怒った。喰との対談で「見せてしまった瞬間にただの下品に成り下がる。意味がぜんぜん違ってしまうんです。笑いとおふざけは紙一重」(CINRA「CINRA」17年4月17日)と久本も言う。
冒頭の“事件”の際、喰は再び「自主規制」の問題を感じたという。それに対しては「徹底的に戦う」と宣言している。なぜなら、人は国籍や宗教が違っても、笑い合うことによって同じような人間だと分かり、「笑いは武器になる」と信じているからだ(同前)。柴田は「ワハハみたいな無法地帯のようなところは無い」(ローソンエンタテインメント「ローチケ演劇宣言!」21年5月10日)と言う。
「権威的ではなく、鯱張るわけでもなく、本当に……底辺な、って言っちゃうけど(笑)、そういうのって本当に他にないから」(同前)
そう、そこには権威とは無縁の自由な笑いがあるのだ。
(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)
エンタメ 新着一覧
