中年女の前髪問題、もう「600円カット」で良くない? “アンガ田中似”美容師の実力はいかほどか

小林久乃 コラムニスト・編集者
更新日:2025-10-22 09:34
投稿日:2025-10-22 08:45

お代600円(税込)カットの結果は?

 初めての美容院の扉を開けるのは何十年ぶりだろう。ややドキドキしながら開けると、店主らしきアンガールズの田中に似た男性が、客の髪の毛を切っていた。待ち合いには二人の中年女性がいる。鏡台数は3点。小さな灯りの暗い店だった。

「あの何か…」
「(いやどう考えても客ですが)すみません、前髪カットの看板を見て」
「今、ちょっと忙しくて。18時なら…」
「あ、ハイ。じゃあ後ほどまた来ます」

 突然の予約のない客に、店主はどう見ても面食らっていた。1時間後と言われて、近所のスーパーで買い物を済ませて、また店のドアを開ける。

「あ、いらっしゃいませ」

 もう客はおらず、そのまま椅子に通された。希望の長さを聞かれたので、眉が隠れる程度と回答。ケープをかけて、シャカシャカと前髪は切られた。

「終わりです」

 5分もかからなかった。ドキドキしていた自分はどこへやら、あまりにも素っ気ない展開に拍子抜けしてしまった。そして当日、髪の毛を洗い、翌朝、鏡の前で「あ…」と声が出る。客の希望通り、眉が隠れる長さの前髪は根本から立ち上がり、短くなっていた。おばさんオン・ザ・眉だ。あの髪型が似合う中年はジュディマリのYUKIだけだと思っていたけれど、やはり当たった。本当に似合わない。

(これがご近所美容院の洗礼か〜)

 慣れ親しんだ表参道の美容師は、私の髪の毛の生えぐせやつむじ、性格に至るまで把握しているので、洗ったところで前髪が短くなる現象はない。でも昨日出会った田中(仮)は、初見だ。客の言う通り、当たり障りなく切って当然だし、何より600円(税込)だ。仕方なくそのまま前髪の伸びるのを待ち、おばさんオン・ザ・眉でしばらくを過ごし、今は普通の長さになった。快適。多分、私はまた(仮)田中の元へ行く。

 美容院は3ヶ月に1回、白髪はセルフカラー、前髪は近所で600円。これが私の現在のヘアケアだが、楽でいいと納得している。そう、おばさんにとって髪型とは似合わせの追求ではなく、いかにして最短時間で済ませられるのかが課題。もし迷っている方がいたら、ご参考までに。

小林久乃
記事一覧
コラムニスト・編集者
出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にてデビュー。最新刊はドラマオタクの知識を活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディアの構成と編集、プロモーション業が主な仕事。正々堂々の独身。最新情報は公式HP

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


息抜きは絶対必要!忙しいワーママが自分時間を確保する4つのアイディア
 世の中のワーママは、仕事や家事、育児と朝から夜まで大忙し! 自分の時間なんてほとんどありませんよね。しかし、人には息抜...
「糟糠の妻」の意味は? 出世しても〇〇してはいけないんだゾ
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
ほっこり癒し漫画/第85回「食べる! 食べるでござるーッ!」
【連載第85回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
酔っ払い同士の胸熱&ちょっと恥ずいLINE3選。きのこたけのこ戦争の和解にもおすすめ?
 人はお酒を飲むと日頃心に秘めている本音が出てきますよね。酔っ払い同士のLINEをのぞいてみると、本音同士の面白い会話が...
お互いの「子どもの共通点」に愕然。平凡になったのは元彼と私、どっち?
 新川崎の大規模マンションに暮らす真央。「量産型主婦」を自覚しているが、かつての真央はバリバリの個性派女子だった。そこで...
言われたくない! ただのオジサンになった「元彼からの一言」に怒りが…
 新川崎の大規模マンションに暮らす真央。量産型主婦を自覚しているが、かつての真央はバリバリの個性派女子だった。20年前の...
「浜崎あゆみみたい」って褒め言葉? サブカル女からママ友への小さな抵抗
 かつて京浜工業地帯を支えた巨大な貨物列車ターミナルだった新川崎は、今や「品川から3駅に住まう」などというまやかしのよう...
「奢る代わりに…」急に見せた“男”にドン引き! 仲良かった友達が苦手になった瞬間【LINE編】
 仲良くしていた友達と、LINEがきっかけで疎遠になった経験はないでしょうか? 「こんな人だったの?」という違和感から、...
「センスが悪い」ってモラハラじゃないの? かつての「センスがいい人」はどこに…
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...
これは盲点…!カラオケ苦手な人が乗り切る必勝法。カギは「地元」にあり
 気づけばもう2024年も残すところあと少し…。なんか今年早くないですか?? こうやって時間は過ぎていくのかと思うと、本...
総額いくらなの!? 美的の「スキンケア大充実セット版」は韓国コスメの現物も入ってお得感100点満点でしょ
 毎回、付録違いのVer.を発売している美的。12月号は「スキンケア大充実セット版」を購入してみました。  話題の...
40代、職場で地雷女に?「ソフト老害」流行語大賞候補入り、“10のこじらせ言動”に要注意
 職場に一人でも老害と思われる人がいると、雰囲気が悪くなってしまいますよね。2024年の「新語・流行語大賞」の候補には「...
「嫌われる話し方」5選。無意識にやらかしがちだけど、みーんなイライラしているかもよ?
「この人と話を聞くとなんかストレス溜まるんだよな」「会話していてなぜかイライラするの何で?」こんな風に、話していてモヤモ...
チャールズ・ブロンソンみたい! 草原の激シブ“たまたま”にキュン♡
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
やっべー、既読スルーしてしまった後のLINE3選。返信忘れて気まずさMAXからの挽回方法は?
 もはや日常生活に欠かせない連絡ツールになっているLINE。でも、時にはつい既読スルーしてしまい、大切な人との関係が気ま...
金運ガチで上げたい!「パンジーの切り花」が超絶オススメな理由&“最高のコラボ”の飾り方は?
 猫店長「さぶ」率いる我が愛すべきお花屋は、おかげさまでお客様が途切れることなく(花を買う以外の方が多すぎw)来店くださ...