固定ファンがいるのに…“お金の事情”で時代劇は減る一方
【城下尊之 芸能界ぶっちゃけトーク】
前回のコラムで、昨今の映画やドラマ界は良い作品や人気シリーズを作りにくい環境であることを伝えたが、僕も好きで根強いファンもかなりいると思われる「時代劇」は輪をかけて制作しにくい状態だそうだ。
時代劇といえば、現状はNHK大河ドラマ(来年は「豊臣兄弟!」)だけといっていいほど新しい作品を目にすることがない。しかし、もうすぐ隻眼片腕の剣士「丹下左膳」を放送するBSでは、再放送でも一定の固定ファンがついているようだし、CS放送の中でも時代劇専門チャンネルは人気だそうで、ここでは新作も制作し続けていて、人気作品が登場することもある。
知り合いの映画プロデューサーによれば、ロケをする場所が「本当に少なくなった」という。
例えば、城をバックに武士たちを撮影するシーンはよく見るが、見上げるような格好で撮るという。なぜなら、地べたが映り込むと、そこはアスファルトだからだ。しかもカメラを固定しておかないと、ちょっと動かしただけでビル群が映り込んでしまう。斬り合いのシーンを山の中腹で撮っていたら、バックの山道を軽トラが頻繁に走っていて、そのたびに撮影がストップするのだとか。
そこで、やむを得ずセットでの撮影となるが、時代劇のセットは金もかかるし、時代考証も怪しくなる。故・松方弘樹さんが晩年の映画撮影の時のこと。監督やスタッフが若手で勝手がわからなかったようで、セットの和室を見るなり「おい、この時代にこんな置物はないぞ」とアドバイス。結局、作品全体の時代考証を務め、「主演料だけじゃ足りないよ」とボヤいていたそうだ。
身分に応じたカツラも必要で、それを演者の頭にあわせる「結髪」と呼ばれる担当者も必要なのに、高齢化で極端に数が少なくなっているらしい。いや、“斬られ役”まで老齢化しており、うまい斬られ方をする役者が減ってしまったという。
くだんのプロデューサーによると、普通の映画なら1日200万円のところ、「時代劇のロケはその倍以上に費用がかさむ」のだとか。祭りのシーンは出店や屋台がバックに映るものだが、今は予算上、奥行きが出せない。映り込むエキストラの衣装・カツラ代もバカにならず少数精鋭。「もう無理ですよ」と言うのだ。
いい時代劇を見たい私としては、真田広之の「SHOGUN 将軍」のように“アメリカ作品”に頼るしかないのかと頭を抱えてしまう。
(城下尊之/芸能ジャーナリスト)
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