キラキラネーム全盛期世代が陥る「名付け疲れ」
一方、別の母親・聡美さん(43)は逆の後悔をしている。
息子に「太一」と名付けたが、当時は「地味すぎる」「古い」と言われたそうだ。
「でも今は“落ち着いてていい名前だね”って褒められるんですよ。皮肉なもので、流行を追わなかったほうが結果的に“普通で得する”時代になっちゃった」
キラキラネーム全盛期を経験した親世代が、今“名付け疲れ”を感じている。
最近の出生届ランキングでは、響きや漢字が落ち着いた名前が再び上位に戻ってきた。
「湊」「芽衣」「葵」「結菜」──読めて、書けて、呼びやすい名前。
“オンリーワン”ではなく、“ちょうどいい普通”を求める流れだ。
背景には、SNS時代の「名前の可視化」がある。
子どもが生まれた瞬間から、名前は検索可能な“個人情報”になった。
誰でも調べられ、簡単に晒され、ネタにされる。
そんな中で、“目立つ名前”はリスクでもあると感じる親が増えている。
親の無意識の欲望が子どもにハンデを
名付けは本来、愛情の象徴だ。
だが、2000年代の名付けブームでは、それが“親の自己表現”の一部になっていた。
「他と違う名前をつけたい」「SNSで褒められたい」──そんな無意識の欲望が、子どもに“背負うハンデ”を与えてしまった。
一方で、名前の多様性を否定するのも違う。
キラキラネームがあったからこそ、“読めない名前”に対する社会の許容度も少しずつ広がった。
“個性”という言葉を、名前だけでなく生き方で表現する時代に変わってきたのだ。
名付けに正解はない
麻衣さんは、娘の成人式のときに言ったという。
「名前のせいでつらい思いをさせたかもしれない。でも、“光璃”って名前は、どんな時も自分の光を持てるようにって願いを込めたの。そこだけは本当」
娘は少し笑って、「それなら許す」と返した。
時代が変われば、“キラキラ”も“シワシワ”も、また違う意味を持つ。
名付けに正解なんてない。
ただ、ひとつ言えるのは──“オンリーワン”を狙うより、“その子が生きやすい名前”を選ぶことこそが、いちばんの愛情なのかもしれない。
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