「スケジュール管理ができない人」は一体何だというのか。運だけで生きてきた私に浮上した、ある疑惑

新井見枝香 元書店員・エッセイスト・踊り子
更新日:2025-11-30 11:45
投稿日:2025-11-30 11:45

「ADHD」疑惑に対する、複雑な感情

 仕事や人間関係に支障をきたすほどスケジュール管理ができない人は、注意欠如多動症の「ADHD」である可能性が高いらしい。詳しくは知らないが、確か授業中にじっとしていられず立ち上がってどこかへ行ってしまう子供が多動症というのではなかったか。

 ストリップの職場では、「私タドーなんでぇ」と、楽屋をたった数時間で3年引きこもったようなゴミ屋敷にする人に会ったことがあるが、私が? あの落ち着きがなくてだらしない人間と一緒? 冗談じゃない!

 しかし、そのADHDに特化したSNSアカウントを遡ると、出るわ出るわの思い当たる節。うっかりミスや忘れ物が多く、集中力が続かず、計画性もない。

 知れば知るほど、そうでなければいいと思う気持ちとは裏腹に、そうであって欲しいという気持ちが生まれた。私がダメなのではなく、ADHDだからダメなのだとしたら、自分に言い訳が立つ。私の失態が情状酌量されるかもしれない。

 ひとまず病院に行って、診断してもらうことにした。ADHD、診断、病院…こんな検索をすれば、またスマホはいそいそとあれこれ勧めてくると思うと小癪だが、こんな悩みを相談できる人は身近におらず、致し方ない。

スケジュール管理できない人間が、そんなに待てるわけがない

 しかし病院の口コミを読み始めると、うんざりした。グルメサイトによくある、《隣の席の人の咀嚼音が不快だったので星一つ》くらいクソな情報がゴロゴロしているのだ。それならもう、いちばん広告が目立つ病院にしよう。広告費にお金を使えるということは、儲かっているはずだ。

 立派なホームページを開くと、さすが金持ち病院、オンライン予約のシステムが稼働している。だが、必要事項を入力していざ予約をしようとすると、カレンダーのボタンが全て×になっていた。不具合だろうか。

 やけくそにカレンダをどんどんスクロールしてくと、ようやく〇が見つかったのはもう、来年の日付だった。つまり予約は2か月半先までびっしり埋まっていたのである。

 スケジュールを上手く管理できない人間に、2か月半も先の予約をさせるのか。その日に遅刻せず病院にたどり着けるならもう、ADHD診断をするまでもないだろう。物事をじっと待つことが苦手なADHDが、そんなに待てるはずもない。

 そしてカッとなりやすいのもADHD…という忌々しい投稿を思い出し、壁にスマホを投げようとした手をそっと降ろした。私は試されているのだろうか。

新井見枝香
記事一覧
元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

XInstagram

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


金欠なのにウニイクラ丼を求めた40女の末路 2023.1.7(土)
 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。  っていうかね、新年早々ね、やばいんですよ。 ...
今年は自信をつけたい!残念な目標を上手な目標に変えるテク
 新しい年がスタートしました。早速ですがみなさん、今年の目標を決めましたか? まだなら、自信がつくような上手な目標を立て...
夜も更けてそろそろ眠くなってきた 2023.1.6(金)
 終わらせたい仕事があって、帰宅時間が遅くなった夜。冷えた空気の中、コートの襟を立てて帰り路を急ぐ。夜も更けてそろそろ眠...
【2022年アツかった記事】イオンのど真ん中にフェムテック専門店!「性」商品はタブーなんかじゃない
(2022年8月に公開したものを一部変更し、再掲した記事となります)   ※  ※  ※  このところ、フェ...
【2022年アツかった記事】なるほど納得!「若さ」についてイヤミを言う人の残念な正体
【愛のスナック どろんぱ】 (2022年3月に公開したものを一部変更し、再掲した記事となります)  ※  ※  ...
お腹も“たまたま”も出し惜しみなし! 解放感を満喫にゃん♡
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
デート中にやらかした…赤っ恥「トイレ失敗談」を告白します
 人間は、きっと誰でも人には言えない恥ずかしい「やらかし失敗談」を持っているはず。今回は数あるシチュエーションの中でも、...
花屋がお宅訪問で実感!「お金持ちになるための12の約束事」
 あけましておめでとうございます。  2022年が良い年だった方もそうでなかった方にも、2023年という新しい年が...
作家・重松清さんの愛情、時々イジリまじりのメッセージ
「日めくりコクハク」でおなじみ、写真家・Koji Takano(髙野宏治)さんの個展「めくりゆく日々」が1月7日~15日...
2023-01-04 06:00 ライフスタイル
この「動きたい」気持ちに素直になりたい 2023.1.4(水)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
「今の仕事、辞めます!」女性が退職を決める8つのきっかけ
 仕事をしていれば誰だって、一度や二度は「辞めたい」と思ったことがあるでしょう。一時の感情で収まればいいけれど、中には辞...
【2022年アツかった記事】何コレー! 天然オブジェの“最高峰”「旅人の木」は見たら即買い!?
【笑う花には福来たる】 (2022年10月に公開したものを一部変更し、再掲した記事となります)   ※  ※  ...
何を感じ、どう動くかは自分次第 2023.1.3(火)
 2023年、自分もこうありたい。  銀座6丁目の交詢ビルにあるバーニーズニューヨーク銀座本店前、心躍るウィンドウ...
凍り付く空気の向こうに… 2023.1.2(月)
 雪化粧の富士山が見えた!!  空に向かって緩やかにそびえたつ、このシンメトリーな形に心が洗われる気がするのは日本...
【2022年アツかった記事】ステージ衣装用の真っ赤なランジェリーで“魔法”にかかった
【「イキてく強さ」】 (2022年11月に公開したものを一部変更し、再掲した記事となります)   ※  ※  ※...
【2022年アツかった記事】“にゃんたま”御開帳はうれしいけど…スプレー行為にご用心
【きょうのωにゃんたま】 (2022年2月に公開したものを一部変更し、再掲した記事となります)  ※  ※  ※...