本題。病院の門を叩くが…私は誰? ここはどこ?
そしてようやく、本題である。すぐに予約が取れるという条件で適当に選んだ病院の医師に泣き縋ると、まずはテストを受けてみましょうと勧められ、再度日を改めて訪れることになった。
受付に診察券を出すと、テストは特別室で行うらしく、いったん外に出てから隣のビルの3階のドアを叩くが、その仰々しさに不安が過る。テストって何をやらされるんだ?
「これから受けていただくのはどんなテストかご存じですか?」テストは専門の担当医が行うため、初対面となる白衣の女性に問われたが、私は初っ端から何も答えられなかった。
私は何のテストを受けに来たのですか? ……私は誰?ここはどこ?そんなんだから私、病院にいるの?
頭がぐるぐるしたまま医師と向かい合い、テストが開始される。2枚のカードの絵を見て間違い探しをしたり、模様のついたサイコロで見本と同じ形を作ったりするテストは、明らかに私の知能を測っていた。
バカにしているのかと思うほど簡単な問題もあれば、脳天から煙が出そうなほど難解な問題もある。エアコンをきかせた小部屋は暑く、ひどく乾燥しているのに水の一杯も出ず、問題文は先生が手元のテキストを棒読みするだけで眠気に襲われ、しまいには腹が立ってきた。
解き方はわかるのに、解答できない
《みかん156個をAとBの袋に個数の比が6:7になるように分けます。Aの袋には何個入れればよいでしょか。》
よくある算数の問題だ。そんなもの、小学校のテストで何度も解いたわ。ええと、合わせて何個だっけ? いや解き方はわかるのだが、問題を忘れてしまった。しかし小学校のテストと違うのは、問題用紙がないところだ。「みかん365個でしたっけね?」「………。」先生はロボットのように押し黙っている。
だったら出題もロボットでいいじゃないか。猫型ロボットならまだ可愛げがあるニャ。算数が解らないのではなく数字を忘れることで解答できない問題が続き、やがて目の前の医師を憎み始めた頃、正しいみかんの数は結局思い出されることなく、2時間に及ぶテストが終了した。
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