「100均があれば十分」本当に望んだ生活なの?
静かな嘆きに、フォローの言葉が思い浮かばなかった。
容姿端麗なモデル男子や、年収2000万越えの商社マンや経営者からの求愛を蹴ってまで、彼女はこの色のない街での、庶民的な生活を求めていたのだろうか。
シャネルのコフレは、いまだ手つかずのまま。まさかこれを出産祝いにあげたことを、都会暮らしのマウントだと不快に思われたのだろうか。出産祝いは、子どものものよりママ向けの方が喜ばれると、ネットで書いてあったからそうしただけ。だとしたら悪いことをしてしまった。
「…でもね、結局ひきこもり生活だから、何もない方がいいのかも。生活のものは十分すぎるほど事足りる場所だよ。西松屋と100均さえあれば十分」
優梨愛の最近の趣味は、ハンドメイドで天然石を使用したアクセサリーを作ることだという。製作したピアスやペンダントを見せてくれた。
「いいでしょ。欲しいのがあったらどうぞ」
奈江にとっては、どれもイマイチだった。まるで子供の工作だ。消去法でローズクォーツがふんだんにあしらわれたブレスレットを手に取る。
「やっぱり? 奈江ちゃんは、絶対それ選ぶと思っていたよ」
「はは…」
自覚できるほどの乾いた笑いをする。無になった心で、
――ほんとに暇そう…。
目の前で、微笑む優梨愛。本当に彼女はそれで満足しているのだろうか。心が枯れないように、幸せだって思い込んで、無理やり笑っているんじゃなかろうか。
奈江はかつてのキラキラした優梨愛の笑顔を脳裏に思い浮かべる。
今はいいかもしれない。蓄積された不満が、いつか爆発する日がきっとくるかもしれない。最悪の予感がよぎった。
すると、奈江のスマホが短く揺れた。ビーチフラッグのごとく、すぐスマホを手に取る。
ヴァンクリは「大黒屋」に売ってしまった
『――別にいいよ、遅くなるけど』
送り主は西本。昨晩の夜に『明日会えない?』と連絡して、待ちに待った返信だった。
「彼氏?」
優梨愛の声で我に返る。
「う、うん」
「いつから? どんな人?」
「ナイショ。ちょっと前に知り合った、経営者の人だよ」
奈江は今すぐにでも返信したかったが、どこか気が引けてスマホを伏せた。
「さすが。そのヴァンクリも彼から?」
「まぁ…」
「やっぱり? 本当にかわいいね!」
優梨愛は奈江の胸元のネックレスに目を細めた。本当は自身で購入したものだ。ボーナスをはたいて、しかも、二次流通で。
「優梨愛も結婚前はこういうの、いろいろな人からもらっていたでしょう? 言い寄られていた人、いっぱいいたじゃない」
「全部大黒屋で売ったり、本人に返しちゃった。結婚式でお金使うし、もういらないから」
ふぅと、優梨愛が大きなため息をついたのを、奈江は見逃さなかった。
優梨愛はかねてから強い結婚願望があったと西本から聞いている。言い寄った男には、全員に「結婚前提」を求めていたとか。
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