どうして? DVも性犯罪も…女性の「加害者」が増えている

内藤みか 作家
更新日:2019-12-26 06:00
投稿日:2019-12-26 06:00
 DVというと多くの人が「夫から妻への暴行」を想像すると思いますが、実態は変化しつつあります。男性からの被害相談がどんどん増えているのです。被害が増えているのはDVだけではありません、女性が痴漢や性犯罪の加害者になる事例も出ているのです。

DV被害相談が急増中

 警視庁発表の「配偶者からの暴力事案の概況」(2019年)によると、女性からのDV相談が7,471件(82.6パーセント)で、男性からは1,571件(17.4パーセント)。被害相談のおよそ6人に1人もが男性であるという驚くべき現状がここにあるのです。しかもこの件数は年々増加傾向にあるのです。

 平成26年には181件と全体のわずか4.4%だった男性からの相談件数が4年で約4倍にもに増えたことは注目すべきことだと思います。凶暴な女性が増えたのかと考える人もいるでしょうけれど、近年、DVは身体的暴力だけでなく「言葉の暴力」「経済的圧迫」「性的強要」も適用されるようになっています。なので必ずしも女性からの殴る蹴るがあったわけではないでしょう。

深刻な身体以外の暴力

 肉体的な暴力は、誰の目にも命の危険があることが見て取れるものですが、他の暴力についてはわかりやすいものではなく、また、肉体的暴力とその他の暴力が複合して起きることも少なくないため、DVの事態は複雑化しているとも言えます。言葉の暴力は、相手がひどい言葉を何度も投げるなど、相手の体ではなく心を傷つけます。

 経済的圧迫は、相手の給料を全額取り上げ、お小遣いとして少ししか与えないなどのことを言います。性的強要は、その気がない相手に対して、無理やり性交に及ぶなどのことです。こうした行為も度が過ぎると暴力として認められるのです。

暴力をふるう女性もいる

 実際男性側から聞くのは「ダメ人間と言われる」などの言葉の暴力と「お金を取り上げられる」という経済的圧迫が多いのです。とはいえ「彼女に殴られた」という男性もいるので、肉体的暴力を振るう女性もいます。また、女性の側からも「彼から殴られたので自分も殴り返してしまった」という相談を受けたことがあります。総じて言えるのは、DVをふるうのは男性だけではないということです。

 そして女性からのDV件数が増加しているのと同様に、性犯罪でも女性の加害者が報道されるのを目にするようになっています。女性に痴漢されたと言う男性も存在しますし、内閣府による「男女間における暴力に関する調査」(2018年)によると、無理矢理性交させられた体験を持つ女性が7.8%で、男性が1.5%。実は男性も性暴力の被害者である事実が浮き彫りになりつつあるのです。

 男性の被害が目立つのは執拗なつきまとい行為(ストーカーなど)です。女性の10.9%に対し男性は4.5%が被害を受けたことがあり、半数近くにまで及んでいます。確かに報道でも女性ストーカーが逮捕される事例は時々見かけます。男性芸能人の自宅に押し入る事件が何度か報道されています。彼は自分の恋人だと勘違いする女性ファンの暴走に男性タレントが恐怖する時代になっていることも無視できません。

なぜ女性からの暴力が増えている?

 なぜ女性からのDVなどが増えているのか、その理由はひとくちでは言えないでしょう。けれど、男女同権社会となり、女性も男性並みに働くようになったことで、仕事でのストレスも男性並みに背負うようになったことが一因ではないかと私は思っています。また、10代以下の異性に対し、性的行為を強要するという事件も、男性から女性に対しては以前より起きていたことでした。

 DVについては依存性や共依存性などと関連している場合があり、「もう殴りません」と誓うだけではおさまらない場合もあるのです。日本にも加害者のための更生プログラムがありますが、カウンセリングなどが何ヶ月に及ぶ場合もあり、一朝一夕で解決できるようなことではなさそうです。

 DVや性犯罪は決して男性から女性へのものではなくなってきています。犯罪の性差がなくなりつつあるという現象は、DVだけにとどまらないことであるため、今後も気に留めておきたいところです。

内藤みか
記事一覧
作家
著書80冊以上。大学時代に作家デビューし、一貫して年下男性との恋愛小説を書き綴る。ケータイ小説でも話題に。近年は電子媒体を中心に活動。著書に「あなたに抱かれたいだけなのに」など。イケメン評論家として、ホストや出張ホストなどにも詳しい。
XInstagram

関連キーワード

ラブ 新着一覧


「俺もいいトシのおじさんですから」燃える恋愛より穏やかな関係を求める52歳男性の達観
「冷酷と激情のあいだvol.241〜女性編〜」では、カツノリさん(52歳・仮名)との交際を検討している瞳さん(47歳・仮...
並木まき 2025-04-12 06:00 ラブ
「寂しいアラフィフ女認定は嫌!」自分のブランディングに翻弄される47歳女性の見栄
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2025-04-12 06:00 ラブ
「色白のお肌がいっそう映えますね」呉服屋・イケメン若旦那は熱海の旅館でマクラ営業? #2
 静香さん(35歳・茶道講師/既婚子供アリ)は、祖母、母と3代にわたり、都内の邸宅で茶道教室を開いている女性だ。彼女は懇...
蒼井凜花 2025-04-11 06:00 ラブ
年親を安心させたい。でも、30代で付き合った不倫相手が忘れられません(44歳女性、IT勤務)
 都内のIT企業で働く44歳女性です。年収は1000万円弱で、経済的には自立していますし、年齢的にも子供も望んでいません...
植草美幸 2025-04-11 06:00 ラブ
どんな“優良物件”も劣化させちゃう悲しきモンスター! 男をダメにする女の5つの特徴
「男を見る目がない」「ろくな男がいない」と嘆いている女性の中には、男をダメにする女が含まれているのも事実。あなたもそんな...
恋バナ調査隊 2025-04-11 06:00 ラブ
アラフォー妻が実践するセックスレス解消の秘技。夫と再び燃え上がった3つのステップ
「ダンナがしてくれなくて…」とセックスレスに嘆く女性は少なくありません。  近頃は女性用風俗や恋人レンタルに癒やしを求...
内藤みか 2025-04-10 06:00 ラブ
「気になる人」と「好きになる人」の違いとは? 自分の恋愛感情を6つの判断軸で考えてみよう
「気になる男性がいるけど、恋愛感情として好きになっているかはわからない…」と自分の気持ちに疑問を抱いている女性、必見。今...
恋バナ調査隊 2025-04-10 06:00 ラブ
「浮気してね?」男性の怪しい言動5選。意外でも深掘りしてみる価値あり
 今回は、男性の浮気を見破ったきっかけについて女性に話をうかがいました。中には意外な言動から見抜いた女性も! ちょっとで...
恋バナ調査隊 2025-04-09 06:00 ラブ
お花見デートの失敗談5選。飲みすぎ→リバースで大ヒンシュク! 桜とともに恋が散った…
 お花見デートのシーズン到来! 「気になる彼と約束してる」なんて女性もいるのではないでしょうか?  そこで今回は、お花...
恋バナ調査隊 2025-04-08 06:00 ラブ
マッチングアプリの意外な成功談4選。まさかの恋愛成就、“加工詐欺”は悪い話とは限らない?
 今回は、マッチングアプリでの意外な成功談を紹介します。マッチングアプリには下心しかないヤリモク男が溢れている印象ですが...
恋バナ調査隊 2025-04-08 06:00 ラブ
彼が萎える彼女の言動7選。遅刻、スマホチェック以外にクチャラー、口ヒゲもドン引きの対象に…
 彼にドン引きされた経験はありませんか? 今回は男性が「マジで萎えるからやめて」とドン引きする彼女の行動をご紹介します...
恋バナ調査隊 2025-04-07 06:00 ラブ
既読スルーをくらって連絡が途絶えた…ラリーが続くやり取りとは? 思わず返したくなるLINEテク3選
 気になる男性からのLINEが途絶えると、「脈なしなのかな?」「また送ったら迷惑かな…」と考えてしまうでしょう。  そ...
恋バナ調査隊 2025-04-07 06:00 ラブ
家事をしない夫への“プチ仕返し”3選。気が済んだら、上手に心を入れ替えさせるコツ3つで改善を
 今の時代は、夫婦共働き世帯が多いですよね。それなのに家事をしない夫に、イライラがつのって爆発寸前の妻たちも大勢います。...
恋バナ調査隊 2025-04-06 06:00 ラブ
「俺のこと好き?」LINEのダメな返し方3選。“真の正解のヒント”は彼との前後の会話にあり
 好きな彼から「俺のこと好き?」とLINEがきたら、あなたはどう返すでしょうか?  3人の男性に「これは嫌だな」「ちょ...
恋バナ調査隊 2025-04-06 06:00 ラブ
「腐れ縁でも寂しくなる」社会に強い不満を持つ55歳男性の別れの予感
「冷酷と激情のあいだvol.240〜女性編〜」では法律婚を選択せず交際10年を迎えた、一回り上の恋人・ハルトシさん(55...
並木まき 2025-04-05 06:00 ラブ
老害予備軍それとも男の更年期? ひと回り上の恋人の豹変ぶりに慄く43歳女性
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2025-04-05 06:00 ラブ