人間のオナゴのつらみ
【vol.42】
一夫多妻制を採っている宗教でも、教典には「汝がそれぞれを平等に愛することができるなら」という注釈がついたうえでの一夫多妻制です。
その注釈はしばしば無視されることも多いのですが、平等に愛するというのは、ひとりの妻にプレゼントを買うのであれば、同じ金額で同じ価値のものを与えるべき、というところから、セックスの回数まで平等であるべき、ということです。
このように、みんなを“いちばん”に扱うというのは、不可能だからこそ、実は逆説的に一夫多妻制を否定しているという説もあるくらいです。
金額の多寡で愛情を確認できるのであれば、浮気されていてもヘッチャラという人もいます。あるいは、妻という地位が守られれば。もしくは家族というチームとして機能していれば、他で好き勝手してても平気という人もいます。
前述の「みんな一番や、全員愛している」というピカソタイプもいれば、優先順位をつけてその序列の中で女性たちを安住させている形態もあります。ただし、それで女性たちが納得していれば、問題は起こらず平和です。しかし、です。
浮気男の甘言にハマり、気づいたら閉経
しかし多少なりとも愛があれば、独占欲と支配欲によって絶対にうまくいかないようにできているのが、人間のオナゴの辛いところです。
結婚も子供もいらないし、相手がどこで何をしていても平気、私たちは独立して、精神的にも自立している、ほかとは違うカップルなの、というのは、もう古今東西、男に丸め込まれた美人で才覚もあって賢い女性こそがハマる沼です。サルトルとボーヴォワールが良い例です。
わたし自身、手練手管男の甘言にハマり、気づいたら閉経という美人で賢く自立した女性をたくさん見てきました。60歳間近になり、やはり子供が欲しかったという上司や、残りの人生を一緒に過ごせるような、穏やかで私だけを愛してくれる、一対一の関係が気づけるパートナーを探すのが今年の目標である、と49歳の先輩がいいます。女性にはタイムリミットもあるので、信じられるのは言葉ではなく、行動だけです。
女とのLINE
初めて午前様で帰宅したひろしが、帰宅してすぐにわたしの体を求め始めたことで、安堵と愛情が爆発したわたしは、濁った目で、膜の張った脳みそで、アルコール漬けになっていた全身で、ひろしを受け入れ、奉仕しました。しかし、ただ、唯一、鋭敏な嗅覚がとらえたのは、フレッシュな石鹸の香りでした。
そのときは、鋭くとらえたその香りを、アルコールや悪魔たちに冒されたほかの機能が全否定したので、激しくピストンをされ、無我夢中で膣を締めて腰を振っている間に、どこか彼方に飛んでいきました。
朝4時ごろ、おもむろに目が覚めたわたしは、少しだけしゃきっとした頭で(どれだけ飲んでも二日酔いになったことがない)、昨夜のことはどう考えても見過ごせない気がして、ひろしの携帯を見てしまいました。
そうすると、新しい女のLINEが登録されており、そこには、
《大変! わたくしのバッグに現金が! もしかして、こちらに入れてくださいました? いただけないので、お返しします。》
と1時ごろに連絡が来ていました。
心臓が貫通したのかと思うほど、大きな音を立ててカラダ全体を震わしました。咄嗟に、
《そちらはタクシー代なので、とっておいてください》
そうするとすぐに既読になり、
《送っていただいたのに……! それに5万円も?》
全身が小刻みに震え始めます。わたしは震える指で、
《酔っていたのか記憶が曖昧で、オークラで食事をした後にどこに行きましたかね?》
と打ちました。
成りすましで核心に迫る、次回に続きます……。
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