出産するのも中絶するのも女性。それなのに…

3月23日に開かれた『第1回 大人の性教育勉強会』(後援:コクハク)。NPO法人ピルコン理事長・染矢明日香さんから最先端の性教育について、#なんでないのプロジェクト代表・福田和子さんから海外の避妊事情について、筆者・神田つばきからは更年期障害について話をしました。
日本にはなんでもあると思っていたけれど
スウェーデンに1年間留学した福田さんが驚いたこと。それは日本にはない避妊法がたくさんあり、それらが安価だったり無料だったりすることでした。 “避妊インプラント”“避妊注射”“避妊シール”など、いずれも日本では聞いたこともありません。

スウェーデンだけが進んでいるのではありません。
支援の必要な国の女性に製薬会社がインプラントを半額提供した実績もありますし、現在、海外から働きに来ている女性の中には日本では避妊方法が少なくて困っている人も多いと聞きます。
単純にどの避妊法がいちばん良い、この避妊法は時代遅れだ、ということではなく、選択肢がたくさんあって手に入れやすい価格になれば、誰もが自分のライフスタイルに合った避妊法を選べます。
若い人だけの問題ではない“避妊の失敗”

私は30代でIUD(子宮内避妊用具)を入れました。避妊に失敗して人工妊娠中絶手術を受け、その病院で「もう失敗したくない」と相談したのです。でもこれ、よく考えたら順番が逆というか、逆だったら中絶手術はしないで済んだはず!
人工妊娠中絶手術は健康保険適用外です。基本的に入院しない日帰り手術ですが、検査代などをふくめると12万円~14万円ぐらいかかります。避妊に失敗することで、精神的にもつらい思いをしながら、まとまったお金が必要になるのです。
厚生労働省が平成30年10月に発表した『平成29年度衛生行政報告例の概況』をもとに、年代別の人工妊娠中絶実施率をグラフ化してみました。
避妊の失敗は10~20代の若い人だけの問題ではないことがわかります。私が望まない妊娠をした経緯も、産後からセックスレスになり、旅行にコンドームを持っていかなかったことが原因でした。
コンドームは性病の感染予防や、セックスの経験のない子が常備しておくのに向いているというメリットがあります。その一方で、“使ってもらえるかどうか”は男性の意志次第、という点が問題です。
出産するのも中絶するのも女性なのですから、女性主体の避妊方法が多くなってほしいと思います。
避妊にまつわる女性の負担を軽減するために

失敗したら中絶手術するしかないの?
避妊に失敗してしまった―そんなときの、次の月経が来るまでの不安な気持ちは女性にしかわからないものでしょう。このまま来なかったら中絶手術しかない……と恐怖に苦しむ人もいます。
そこで、アフターピル(緊急避妊薬)というホルモン避妊薬を飲むことで、受精卵の着床をふせぐ方法があります。手術より負担も小さいですが、
・避妊効果は80%前後
・吐き気など、多少の副作用の可能性
・行為から72時間以内に服用する
・医師の診断により処方する
・価格は10000円前後
などの注意すべき点があります。
アフターピルの効き目(避妊成功率)は時間とともに減少していきます。夜間や休日に必要が生じると、すぐに手に入らず手遅れになってしまうかも知れません。
福田さんによれば、「アフターピルは世界86か国で市販されていて、価格も数百円から数千円なのです」とのこと。福田さんと染矢さんはアフターピルが市販で買えるように(OTC化)、署名や院内勉強会などの活動をしています。
3月29日に厚生労働省は「緊急避妊薬のオンライン診療での処方」について検討会を開いたとのこと。この議論はまだまだこれからですが、肉体的にも精神的にもそして経済的にも、避妊にまつわる女性の負担が一日も早く軽減されてほしいものです。
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