シェイバーで剃った陰毛はどこへ行くのか?

新井見枝香 元書店員・エッセイスト・踊り子
更新日:2023-04-29 19:03
投稿日:2023-04-26 06:00

閉店後にニョッ?

 まだコロナが流行る前のこと、明日発売の雑誌を閉店後の店内に並べていると、横にいた上司の口元が「変なおじさん」みたいに変色していてギョッとしたことがある。

 出勤前に剃った髭が徐々に伸びてきた、と頭では解(わか)るのだが、何らかのタイミング、たとえば閉店時間を迎えた途端、突然ニョッと生え揃ったかのように見えたのだ。

陰毛もつるつるから毛抜きで掴めるまでに

 たった一日剃らないだけでも、髭の濃い男性は人相が大きく変わるが、それは私の陰毛も同じである。

 ストリップの公演は基本的に1日4回で、1回目が正午だとしたら、4回目の出番は夜の8時を過ぎる。朝つるつるのパイパンでも、最終回の前にハッと見れば、毛抜きで掴めるほど伸びている。

男性用髭剃りで陰毛処理をしていたが…

 肌に優しかろうと、男性用髭剃りで陰毛を剃っていたが、出番前に慌てて剃って出血したことを機に、思い切って「陰毛専用の電動シェイバー」を購入した。

 ロコミで評価が高かったものを取り寄せたが、髭剃りよりだいぶヘッドが小さい。パイパンを想定したものではなく、あくまでもパンツからはみ出る毛を整えるためのものなのだろう。

 私の用途では、歯全体を歯間ブラシで磨いているようで、非常に時間がかかる。しかも肌を傷付けないための優しい設計で、一度当てるだけでは剃り切れず、何度もコシコシとなでる必要があった。

 ただ、仕上がりは剃刀の比ではない。濡らしたり、石鹸の泡を付けたりする必要もないので、部屋でじっくり、曇らない鏡に映して剃ることができる。しかしそうすると、気になって仕方がないことがあった。

 剃った毛は一体どこへ行ったのだろう?

毛を溜め込む場所は「ない」

 一昔前、図書カードはQRコードを読み取るのではなく、テレホンカードのように小さい穴が空く仕様だった。その胡麻より小さな丸は、どこへ行くのか。ある日その丸が、図書カードリーダーの脇から大量にこぼれ落ちていて、小さな引き出しを引くと、色とりどりのつぶつぶで満タンになっていた。

 ここから適宜、粒を回収しなければならなかったのだ。しかしシェイバーはどこを探しても、毛を溜め込む場所がない。つまり陰毛はしれっと床にまき散らされている。自分の部屋ならまだしも、楽屋で使うのはマナー違反だろう。

 そこで私は、最終回の出番前に、楽屋の風呂場でシェイバーを使うことにした。

新井さんは楽屋の風呂場でしているの?

 ストリップでは時折、ショーとしてオナニーをすることがあり、楽屋にバイブレーターやピンクローターが転がっていても、ああ小道具か、と誰も驚かない。

 しかし、それはステージの上でだけ使うものだ。長いこと風呂場に籠ってブーブー音を鳴らし、出てきたと思えば、股間が赤く腫れている。頭を逆さにして股間をのぞき込んでいたため、顔面は血が上って紅潮。これでは、あらぬ疑いをかけられる。

 ストリップ歴3年ともなれば、銭湯でパイパンを晒すことなど屁でもないが、楽屋の風呂場でオナニーをしていると思われるのは死ぬほど耐え難いのである。(してません!!)

新井見枝香
記事一覧
元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

XInstagram

ビューティー 新着一覧


対策は万全に!「水虫」に感染しやすい人の特徴って? 気温15度以上は要注意【医療従事者監修】
 夏になると、水虫になる人が増えるといわれています。「自分は大丈夫」と思っていても、プールや温泉などで知らない間に感染し...
物価高の今こそ「節約美容」を! プチプラでも満足度“1万円越え”のアイテム3つ【美容家厳選】
 長引く物価高の影響で、日々の美容にもこれまで以上に「コスパ」や「お得感」を求める声が高まっています。  節約しつつも...
性交痛がつらい…それって更年期のせいかも。医療関係者が教える“40代の悩み”対策は?
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
性交痛がつらい…それって更年期のせいかも。医療関係者が教える“40代の悩み”対策は?
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
ツヤ肌メイクの“やりがち”NG3選。なんか脂っぽい…の原因はこれ! 成功するコツは?
 ツヤ肌メイクの、ちょうどいいツヤ感って意外と難しい…。やりすぎるとただのテカリに見えたり、毛穴が目立ったり。控えめすぎ...
日焼け対策、怠ってない? アウトドアガチ勢が実践すべき“美肌”を死守する3大ケア
 春と夏はポカポカと気持ちいい外の空気を吸いながら、アウトドアスポーツをしたくなる季節です。でも、「日焼けが気になる」と...
UV対策してる? 美容家が選ぶ春のおすすめ5選。大人の垢ぬけ顔にはこのチークが優勝!
 コクハク編集部では時短美容家の並木まきさん厳選アイテムを多く紹介してきました。  今回は、その中から選りすぐりのアイ...
毛穴にいい?「あの洗顔法」の真相を医師が解説。向いてる肌質もあるけれど…【美容のウソ・ホント】
 SNSやYouTubeにさまざまな情報が溢れている昨今。美容について発信するアカウントも多く存在し、なかには同じテーマ...
救急箱の中身、チェックしてる? 「いざ」の時に役立つ“常備薬”の選び方【薬剤師が解説】
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
乳液なしは「老け顔」を加速する!? 40代は“プチこってり”がキーワード。美容家の厳選アイテム3つ
 40代も半ばを過ぎると、気になるのが顔の“老いた雰囲気”。過去の自分と比べてギャップにがっかりなんてことも。  今の...
「寝ながら運動」で美ボディになれるってマジか! 激しいダイエットなしで痩せるコツ【インストラクター監修】
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
40代のツヤメイクは暑苦しさNG!2000円以下で買える「夏までヘビロテできる」優秀アイテム3選
 今年は春から日差しの強い日も多く、初夏のような陽気も増えています。というわけで、そろそろメイクも衣替え!  春から夏...
モテる以前にマナーだよ!「みっともない」認定されてしまう男性の特徴6つ
 ルッキズムに厳しい昨今、男性のルックスにだって難癖付けることはできません。でも…悲しいかな、どうしても「生理的に受け付...
「五月病」になるのは5月だけじゃない!イライラ、不眠、意欲減退…なりやすい人の特徴や放置のリスク
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
プチプラと侮るなかれ! 40代後半美容家がガチで使って惚れた神アイテム3点【2025春・スキンケア編】
 優秀アイテムがたくさんあるプチプラコスメ。ですが、40代以上の世代には「ちょっと物足りない…」アイテムもチラホラ。 ...
一晩に何度起きたら頻尿ですか?【医療従事者解説】頻尿のセルフチェック&トイレによる寝不足改善法
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...