子どもの“おねしょ”原因と対策…小阪有花が専門医と対談<上>

小阪有花 子どもの心スペシャリスト
更新日:2019-08-05 15:31
投稿日:2019-07-18 06:00
順天堂大学医学部附属浦安病院小児科の西﨑直人准教授と(C)コクハク
順天堂大学医学部附属浦安病院小児科の西﨑直人准教授と (C)コクハク

 子どもの心スペシャリストの私が先日、おねしょにまつわる記事「5歳過ぎてもオムツがとれない…意外な“おねしょの原因”とは」を執筆したところ、多くの反響がありました。実は日本の5〜15歳の子供のうち、約80万人が夜尿症で悩んでいるという統計があり、喘息と同じぐらいの患者がいるというのです。

 しかし、排泄の悩みは話しづらいという事情や、その実態が知られていないことなどから、その治療法や、生活の見直し方法などは意外と知られていないのが実情です。今回、夜尿症を専門とする、順天堂大学医学部附属浦安病院小児科の西﨑直人准教授と医療の現場、保育の現場からみた「おねしょ」を語りました。

そもそも、おねしょ…「夜尿症」って?

順天堂大学医学部附属浦安病院小児科の西﨑直人准教授(C)コクハク
順天堂大学医学部附属浦安病院小児科の西﨑直人准教授 (C)コクハク

小阪有花(以下、小阪) 「まず、西﨑先生に、おねしょ……「夜尿症」というものはどういうものか、どのぐらいの方が悩んでいるのかということについて聞かせてください」

西﨑直人准教授(以下、西﨑) 「5歳以降も月に1回以上、3カ月間以上つづくおねしょのことを『夜尿症』と呼びます。これは病院での保険診療での診療対象です。しかしながら全国に約80万人くらいの患者さんがいるにもかかわらず、未治療の子ども達が約9割にものぼります。夜尿症があると、どういう影響があるかといいますと、まず子ども達の『自尊心』が低下します。また保護者さん……特に、一緒にいる時間の長いお母さんの精神的ストレスも大きくなります。夜尿症は自然に治っていきますが、尿量を減らすお薬とアラーム療法など、根拠のある治療法で、より早期に対応可能です。また『いい姿勢でおしっこをする』ということを勝手にできる子と、教えなければできない子がいます。『きちんとオシッコをする』ための指導は、我々の中では『第二のトイレトレーニング』と呼んでいます。まず2〜3歳の頃にオムツを外す練習が最初の、いわゆる一般に言われているトイレトレーニングですが、そのあとの時期に『おしっこをちゃんとすること』を教えてあげることが肝心で、病院でもそのような指導を行います」

小阪 「姿勢といえば、今回の対談は、先日の私の記事に、西﨑先生がメールをくださったことがきっかけだったんですよね」

西﨑 「そうなんです。一読者としてメールをしました。生活するなかでの姿勢と夜尿症の関係について、とても興味深く記事を拝読しました。おしっこやうんちをするときの姿勢ってすごく大事なんです。男の子でも、座っておしっこをするのは排尿トレーニングの一環なんですね。姿勢とおねしょの関連についての記事で、なるほどと感じたのはそこでした。重いランドセルを日々背負ったり、スマホでの長時間のゲームなど、姿勢が悪くなると、排尿時の姿勢にも影響を及ぼすのかもしれないですね」

小阪有花(以下、小阪)「姿勢以外にも保育の現場で気になることがあります。保育園は集団行動をしているので、おしっこタイムは設けられていますが、次々と時間内に子供達をトイレに行かせなければならないという事情があるんです。『終わったらすぐにパンツ履いてね』みたいに声をかけていましたが、おねしょの観点から見れば、このように急かすことはよくないのでしょうか?」

西﨑 「実は哺乳類で、体重3キログラム以上ある生き物は、ゾウでもライオンでもウマでもそうなのですが、完全排尿するまでに約21秒かかることが研究から明らかになっています。人間も本来はきっちりそれぐらいかけておしっこするのが理想です。落ち着きのない幼児期の男の子なんかは、テレビを見ている間はおしっこを我慢して、CMになると走ってトイレに行き、立ったまま急いでオシッコをして急いで戻ったりすることって、ありますよね。まだ出きっていないのに、パンツを履いてしまったり。ですが、トイレに座って筋肉を緩んでいる状態で膀胱からオシッコが全部出るように、時間をかけてゆっくり出し切ることが、おねしょの治療にとっては非常に重要です」

小阪 「小さい子供のクラスを担当していた時に、お子さんのパンツにおしっこがついているときがあったんです。間に合わなくてちょっと出てしまったのかな、と思っていたんですが、もしかしたら最後に出そびれてついちゃったやつの可能性もありますね。保育の現場や親御さんとかが『あと10秒数えたら行こうか』と声をかける、その一言で、自然におしっこの残りもなくなりますね」

西﨑 「子供はまだ成長の途中なので、膀胱も大人ほど大きくないし、尿意のコントロールも上手ではありません。尿意があっても、目の前のゲームやテレビなどに心を奪われてしまうと、優先順位をつけられなくなることがあります。また大人が尿意のレベルをなんとなく把握できるのに比べて、子供は尿意を突然感じると急激に強くなる。なので周囲からの声かけが必要ですね。定時排尿といって、決まった時間に排尿に促すと、だんだん『尿意』というものがわかってくるようになります。小学生のお子さんであれば5分休みの間とか、保育園であれば休憩の間などに排尿を促し定期的におしっこをすることも効果的です」

おねしょの原因は「便秘」にも

対談する小阪有花(C)コクハク
対談する小阪有花 (C)コクハク

西﨑 「おねしょの原因を調べると、別の病気も併存していた、とわかることがあります。発達障害を見つけるきっかけにもなります。尿意があるのにそれを認識しない子や、わざと尿意を無視する子、羞恥心がない子など、発達面で注意が必要です。そうしたお子さんたちは、鈍磨な部分と鋭敏な部分を相反して持っているので、パンツが濡れていても気にしなかったり、好きなことに集中しすぎて、おしっこが出ているのに後回しにしたりする場合があります。」

小阪 「受診することが病気を見つけるチャンスにもなるんですね」

西﨑 「おしっこの検査をして悪い病気を除外することもできます。おねしょが問題となればゆっくり始動する。発達に問題があれば、専門医の先生への道筋を作れます。生まれてからずっと続いているおねしょは1次性と呼びますが、おねしょが急に始まったりするとか、半年以上なかったおねしょが始まったりする2次性の夜尿症のときには、脳腫瘍や糖尿病などが原因の場合もあります。女の子の昼夜を問わないおもらしは要注意で、膣の部分と尿道がつながっている腎尿路の奇形があり得るんです。早めに見つけて治療につなげることが大事です。また、便秘がおねしょの原因になっていることがあります。実はうんちはすごい大事なんです。便秘が治れば3割治るといわれています」

小阪 「保育園で便秘の子がすごく増えています。うんちが3日出なくて、出す時にお尻が痛いと泣いている子もいました」

西﨑 「それはだめです。うんちにもいろいろありますが、うさぎのうんちのようなコロコロしたものではなく、バナナウンチが理想です。昼間はお水を飲み、運動をするように心がけた方がよいですね。最初、おねしょでいらした方に便秘の治療を2週間したら治ったこともあります」

小阪 「便秘がおねしょと関係しているということに驚いたのですが、なぜ便秘だとおねしょに影響があるんですか?」

西﨑 「体を輪切りにして見てみると前方に膀胱があり、その後ろに腸がありますが、その腸にうんちが溜まっていると膀胱が広がりにくいんですね。なので起きている時もおしっこが出切らない。また寝たときは下からうんちの詰まった腸に膀胱がツンツンと刺激されておしっこが出てしまう。排泄という意味では背骨からずっと下の方へ神経が分かれていますが、分かれ際の最後でうんち系、おしっこ系に分離します。うんちとおしっこは密接に関係しているんです」

小阪 「便秘で、うんちが出ない、って気にしている親御さんがいた場合、小児科に診てもらうタイミングは、どれぐらいの頻度のうんちが目安ですか?」

西﨑 「想定が保育園、幼稚園生だとすると、毎日出なかったり、それに加えて食が細い、お腹を痛がるというようなことがあれば、受診のタイミングだと思います。うんちも、する習慣を教えてあげないと、いきむときにお尻が痛くなることでトイレ自体が嫌になりさらに排泄から遠ざかってしまいます。子供用の下剤がありますが、これを使うことで、出せるようになるんです。排泄って気持ちがいいですよね。それを教えないと、固いうんちが痛いから嫌だ、と悪循環に陥ります。うんちとおしっこの仕方を教えることはとても大事です」

小阪 「保育園でも、すごくトイレにおしっこに行く子がいました。同時に便秘で、出せなくて。ずっとトイレの中で泣いているんです。私も離れるのが申し訳なくてずっと一緒にいましたが、でも保育園では集団行動が基準ですし、私が一人、お子さんにかかりきりになることで、他の子供たちに目が行き届かなくなる。でも、どう考えても一人で頑張らせるなんて酷だよなぁと思っていて、それは悩みでしたね」

西﨑 「うんちを緩くする薬をちょっと飲むと出ます。足を踏ん張らせてうんちをさせることも大事。頻尿はうんちによる膀胱への刺激である場合もあり得ます。便秘がなくても昼間にトイレが近い場合は、心因性といって起きている時だけ意識が高くて強迫観念がある。それはストレスを排除してあげることで治ります。便秘があって頻尿、おねしょがある場合は便秘を直すことが優先です。病院に来る来ないは、各家庭の考えにもよりますが、そういう可能性があることを広めたいと強く思っています。排泄は子供達にとってとても大事な習慣にもかかわらず、おねしょの理由の一つに便秘の存在や、正しいおしっこの仕方を知らないといった背景があります。でも、子供って学校や園で、特に男のお子さんが個室のトイレに入ると『ウンコマン』などとバカにされることもあるし、それで個室には入れないということもあるんですよね。なので、ご家庭で夜トイレに行かせたり、おしっこが溜まって来ることを覚えさせるために昼間に水を飲ませたりすることが、スムーズな排泄に効果的です。子供はだんだんわかってきます」

小阪 「具体的にはどのようにすればよいですか?」

西﨑 「休み時間をとって、トイレに誘導して行かせて、そこで機械的にじゃなくてその子に合わせた時間をとってあげる。最低でも20秒、排尿に時間をかけてください。子供にとっては長いんですが、排尿に時間をかけるタイミングを1日にいくつかとることが重要ですね。皆でトイレタイムを作るのもよいでしょう。『行かない』というお子さんは、もう尿意がどういうものか、わかっています。言えない子は溜まっているのに感じていない子。行かせてみて、おしっこが出たのを見せてあげる。出ると、あの時のモヤモヤが尿意なんだなとわかっていきます。オムツをつけている時期の排尿は『反射的排尿』といい、溜まったら出るもので、尿意を感じたり考えたりはしてない状態です。トイレトレーニングが2〜3歳から始まるのは、トイレに座らせることで排尿を習慣づけることができる頃合いなんですね」

<下>につづきます。

(インタビュー・構成 高橋ユキ)

▽西﨑直人
順天堂大学医学部附属浦安病院 小児科 准教授。
小児腎臓泌尿器、新生児を専門とする医師。

日本夜尿症学会 常任理事
日本小児科学会 専門医・認定指導医
日本周産期・新生児医学会 周産期(新生児)専門医・代表指導医
日本腎臓学会 腎臓専門医

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