「結婚は誤算」元カレの嘆き
――リッチか…確かにそうかもしれないけれど、会社でも家でも、肩身の狭い思いをしてるよ。
拓斗は、最初こそ『常務の娘が一目ぼれした男』として、手厚く迎えられたけれど、全てが常務の娘婿として、マスオさん状態だと言ってきたんです。
しかも、現在5歳になる息子を有名私立小学校に入るべく、2歳の時から強制的に『A会』という有名幼稚園の受験に向けての教育機関に入会されて…。
全て妻と義両親の考えで、『子供に最適な環境を作ってあげることが親の務め』という教えを譲らないと肩を落としたんです。
――僕が『子供はもっと伸び伸び育てたい』と言おうものなら、妻は甲高い声で『あなたは地方にいる公務員のご両親のもとで育ったからでしょう? 息子の可能性を潰さないで!』と僕をさげすむような発言をするし、とにかく受験に必死なんだ。義父も『孫には将来、我が保険会社の重役になってもらわないとな』って、勝手に息子の将来を決めつけている。僕の意見なんて聞いちゃくれない。
彼は目を伏せ、重いため息をついたんです。
――ごめん、会社でも『常務の入り婿の割には、使えない男だな』『商談もプレゼンもイマイチ』などと、陰口をたたく者もいるんだ。結婚は誤算だったよ。
そう、うなだれました。
彼の手が重なって…
――だから、私を思い出したの?
――ゴメン。
――ずいぶん身勝手な男ね。
――…すまないと思ってる。奈緒子と結婚していたら、こんなに肩身の狭い思いはしなかったはずだ。
――今さらそんなこと言われても…。
――奈緒子と一緒だった日々を失って、改めて思ったよ。僕には、心から安心させてくれる女が必要なんだって。
次の瞬間、テーブル上に置いた私の手に、彼の手が重なったんです。懐かしい温もりでした。数えきれないほどこの手に抱きしめられ、髪を撫でられ、女の秘部を掻き擦られて…。
戸惑いながらも手を握り返すと、それがOKと受け取ったんでしょうか。私たちは手に手を取って、カフェを出たんです」
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