身近な人の変化に気づいて 認知症の兆候が疑われる3つのこと

東城ゆず ライター・エディター
更新日:2019-08-14 06:00
投稿日:2019-08-14 06:00

 身近な人の変化に「認知症かも……」と疑いたくなることはありませんか? 認知症が社会的な話題となり、「もしかして」と思うことはあるかもしれません。

 しかし、実際に素人が判断するには、難しい一面もあります。なぜなら、20代のころと比べて体力が下がったと30代が感じるように、加齢による衰えというものが存在するからです。年相応の“もの忘れ”であるにも関わらず、「認知症かもしれないから病院に行こう」なんて誘えないものですよね。

 今回は、身近な人に「もしかして?」と思ったときにチェックすべきことと、その賢い対処法について紹介しましょう。

認知症の人の代表的な兆候とは 

 認知症の人の特徴がわからないことには、初期の認知症の兆候に気づくことも難しくなってしまいます。そこで介護士である筆者が、認知症の初期の人にありがちな兆候について、まとめてみました。

感情の起伏が激しくなった

 認知症というと、物忘ればかりが進行していくように思いますよね。それに伴い、感情の起伏も激しくなります。突然、配偶者の死を思い出して、人目をはばかることなく大泣きし始めたり、「私は死んでもいいんでしょ?」という悲観的な言葉を述べたりします。

 周囲が慰めても耳を貸さず、ただ自分の感情に従うようなところがあります。「昨日までは笑顔だったのに、今日は機嫌が悪い」というようなことにも、注意が必要です。

 感情のムラがこれまでなかったのにも関わらず、急に感情を吐露するようになったら、その様子をメモに記すと受診の時に役立ちます。

もの忘れが頻繁になった

 多くの人が、認知症は“もの忘れが激しくなること”だと認識していると思います。間違いではないのですが、人は誰だって平等に歳をとり、加齢するにつれて衰える機能もあります。記憶力もその一つです。「冷蔵庫を開けようとして、何を取り出そうか思い出せないことが母に頻繁に見られます」という相談をもらったこともありますが、それだけで認知症とは決めつけられないものです。

 ただし、「ガスコンロの火をつけたまま忘れてしまう」「曜日の感覚がない」といったことには注意が必要です。火の管理は最悪の場合、命を落とすことにもなります。だからこそ周囲の人はその取り扱いに慎重になりますよね。

 忘れてはいけないレベルが高いもの。例えば曜日や受診日、服薬の予定など。そのような大事なことを忘れるようになったら、確実に日常生活に支障を来します。この場合は、“もの忘れ”と済まさずに、認知症の疑いを視野に入れて受診する必要があるでしょう。

外に出たがらなくなった

 最近の夏は、すごく暑いですよね。冬も急に豪雪になったりと、寒暖差が激しいものです。このような気候の変化による「外に出たくない」は、認知症でなくても思うことです。

 認知症の兆候だと思われるものには、「受診日なのに、外に出ない」とか「約束があるのに、家にいたがる」といったことがあげられます。約束があったり、寒暖差があれど少しの時間であれば通常は外出をかたくなに拒否することはしないと思います。しかし、認知症の人は異常なまでに、外に出ることを渋るのです。

 理由としては、外でなんらかの恥をかいてしまった経験や、道に迷うことを恐れていたり。急に外出をしたがらなくなった時は、「近ごろ不便に思う」「外出の際に不安が出てきた」という意味も含んでいることがあります。

認知症の兆候に気づいた時の賢い対処法2つ

 そこで「もしかして?」と思った時に本人を立腹させずにできる、賢い対処方法をお伝えしましょう。

検査目的で病院に行く

 急に「病院に行こう」と誘い出すより「最近、暑いよねぇ」など、誰もが共感を得る内容から、「体調を崩す人が多いみたいだよ〜!」と投げかけてみます。多くの人が「そうなんだねぇ」と、世間話のような感覚でここまで聞きます。

 そこで「私の友達も体調を崩したみたい。やっぱり早めに検査するべきだったよね」とリードし、「念のため、細かい検査を今度しに行こうよ」と受診の誘いに繋げます。さらに「受診の帰り道に、美味しいランチでも食べて帰ってこようか」など、乗り気になる何かを提示してあげると、”イベント感覚で受診”を勧めることができます。

 頭ごなしに「最近、様子おかしいよ。病院に行こうよ」というと、「自分は大丈夫」と意固地になってしまうこともあるのが高齢者の特徴です。自分の老いを認めたくないことは、老若男女を問いません。そこで、「行ってみようかな」と思える受診への誘い言葉が肝心になります。

地域包括支援センターへ一緒に行く

 もともと「病院が嫌い」という高齢者も多くいます。昔は薬もそれほどいいものがなく、「飲めば副作用に苦しんだ」という体験の中で、「病院が嫌いになった」と話してくれた高齢者がいました。そのような高齢者に「病院へ行こう」といっても、聞き入れてくれないことがほとんどです。さらに、誘い出す人の年齢が若いほど話を聞かない頑固な一面もあります。

 このような時は、その高齢者と同じような世代の人がそれとなく病院を勧めてくれることで、受診がうまくいくことがあります。それと、専門家という肩書きをもつ人の話を熱心に聞くのも、高齢者の特徴です。

 地域包括支援センターであれば、レクリエーションや高齢者の集いを紹介してくれます。自治体の管轄で比較的、近いところに存在するはずです。「友達作りに楽しいところがないか、聞いてみようよ」と誘い出し、地域包括支援センターに誘導します。

 そこで出会った同じ世代の高齢者が病院を勧めてくれることもあります。さらに、脳の活性化には外出や人との交流が必要不可欠です。筆者が思うには、専門家や自分が親しくない人の話ほど、高齢者は素直に受け入れる性質があると思っています。

 その点、家族の話を聞かない高齢者ほど、地域包括支援センターの人の話は比較的よく聞くというイメージがあるので、試してみる価値がありそうです。

認知症を受け入れることは本人にとっても辛いこと

 身近な人が「認知症かも」と心配で、病院や多くの介護サービスを勧めているのに対し、消極的な高齢者も多くいます。認知症の兆候を、自分自身でも自覚していることもあります。

 それなのに、「なぜ?」と思うかもしれませんが、誰だって「認知症だ」ということを認めるのは、怖くて辛いことなのです。生活を自力で送れている私たちだって「認知症ですね」と言われたら、きっと八つ当たりもしたくなりますし、信じたくないはずです。

 認知症の兆候が見られた時は、頭ごなしに「認知症なんじゃないの?」と明言することを控えましょう。高齢者であってもなくても、老いを体感することは避けたいものなのですから。

東城ゆず
記事一覧
ライター・エディター
1994年生まれ。11歳の頃からブログを運営。ライターやエディターとして、女性誌メディアや地元新聞のコラム枠まで幅広く活躍中。恋愛やママ友問題、介護士であった経験からリアルな介護問題まで幅広い知見がある。年子兄弟を連れ離婚の経験があり、現在は再婚に至る。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


【動物&飼い主ほっこり漫画】第108回「ぬくぬく温活ニャン」
【連載第108回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽの...
結婚、結婚うるさ~い! 帰省する気が失せる親のLINE3選。「子ども14人へのお年玉」に絶望…
 毎年帰省している人は、帰省しない人に対し「どうして帰らないの?」と疑問を抱くかもしれません。しかし、こんな背景がある場...
「この初老の女が私?」映像に映った“残酷な姿”に凍り付く。もう若くない…悟った女が辿りついた答え
 中堅出版社に勤める綾女は、管理職につくことを打診されて落ち込む。失意のうち向かった先は渋谷にある元恋人・崇が経営するバ...
「私、まだ終わってない」出世は現場からのリストラだ…50前、あがく女が縋った“男との復縁”という選択
 中堅出版社に勤める綾女。昇進の辞令があったものの、現場から離れる立場になったことに落ち込む。向かった先は渋谷にある元恋...
「年齢なんてただの数字!」45歳、気持ちはアラサー。変わり続ける渋谷で“迷走する女”が見た現実
 ひさしぶりに 来た渋谷は 少しだけ昔と 違ってみえる…。  なんて、思わず替え歌を口ずさんでしまうくらい、この街...
65歳童貞「高齢者は“中学生マインド”で生きろ!」僕が月10万円でもワイルドに暮らせるワケ
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(65)。多忙な現役時代を経て、56歳...
夜職の女が店外で“カスハラ”する謎。「お客様は神様」に物申したい!
 接客業をやっていると、嫌でも態度の悪いお客に当たるもの。  これ自体は仕方がないので、諦めているのですが、中には...
今すぐ帰りたい~!義実家へ帰省時の“珍”失敗談4つ。夫との“ラブ時間”を見られて赤面…
 結婚すると、長期休みや年末年始に夫の実家に帰省する人が多いですよね。そして、夫の実家への帰省中に、夫の家族から引かれる...
社内忘年会って実は悪くない!?  狙いはイケメン、夕飯タダ…女たちの“ナナメ上”な楽しみ方4つ
 年末の恒例行事「忘年会」。仕事納め前のリフレッシュや、同僚との親睦を深める場…という建前はあるものの、実際のところはみ...
“にゃんたま”ホストクラブへようこそ!魅惑のハチワレグレイに堕ちちゃいそう♡
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「男の子って可愛いの!」義母vs実母の“孫マウント合戦”の果て…35歳女性が見た滑稽な対抗心
 幸せなはずの結婚生活に影を落とす、姑との問題。令和の時代でも根強く残る嫁姑トラブルに直面したケースをご紹介します。
おばさんは美容医療より「医療」に夢中。肩こり、首こり、腰痛…不具合だらけの私が辿り着いた救済策
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
え、余ったお菓子を持ち帰り? 非常識すぎる「手土産」エピ6選。アレルギー食材は絶対アカンでしょ!
 友達とのパーティ、取引先への訪問時など意外と多い「手土産」が必要なシチュエーション。  そんなときあなたは、どん...
「謝りたい」ってどの口が! いじめっ子とまさかの再会、6人の攻防エピソード。反撃のチャンス到来!?
「謝りたい」ってどの口が! いじめっ子とまさかの再会、私のとった行動6つ。反撃のチャンス到来!?
30秒でピカピカ!? 噂の「洗面ボウルクリーナー」を試したら、あまりの結果に無言になった【ガチレビュー】
 話題のコスメや、広告でよく見かける化粧品や日用品。「webでよく見るあの商品、本当にイイの?」「買ってみたいけれど、口...
“にゃんたま”王者決定戦! プロレスの決め手はポロリ? 会場のボルテージも最高潮♪
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...