「国宝」大ヒットの裏で映画界の惨状…テレビが製作にかかわるデメリット
【城下尊之 芸能界ぶっちゃけトーク】
先日、映画や配信ドラマなどを製作するプロデューサーとゆっくり話をする機会があった。
その際、「国宝」は例外として、最近は全体的に話題になったり、大きな売り上げになる映画が「非常に少なくなっている」現状について聞いてみた。すると、“ボヤキ”とも言えそうな言葉がプロデューサーの口から次々と出てきた。
一番問題になるのは製作費だそうだ。10年、20年前の半分くらいの予算になってしまったという。例えば、映画「あぶない刑事」クラスを製作すると、以前なら費用は最低3億円が必要だと聞いていたが、現在はその半分の1億5000万円でもかなり立派な作品予算なんだとか。そのプロデューサーが作ることのある小さな作品の場合は、2000万から3000万円だそうだ。
当然、ギャラの高いベテランや大物の俳優を使うのは難しい。いきおい、最近売れ始めたばかりの若手俳優を中心に据え、ギャラの総額を抑える。ひと昔前には敵役、脇役にも大物、例えば里見浩太朗や松方弘樹が登場してくることもあって作品に深みが出てきたものだが、そんなぜいたくができるケースは減ってしまっている。出演者を豪華にできるのは、ヒットが見込め、テレビ局が映画の「製作委員会」に入って後になってテレビ放映で回収できるもの。
ところが、テレビで放送するとなると、今度は制約が多過ぎるという別の問題が出てくる。現在のテレビドラマではヌードどころか、セミヌードシーンを出すことすらかなりのハードルになる。大昔のホームドラマ「時間ですよ」は森光子さん主演で人気だったが、銭湯が舞台だから毎週のように女湯のシーンがあって、女性客がバストトップを出してバックに映っているのが当たり前だった。
飲み屋で藤竜也がたばこを吸いながら酒を飲んでいるのも当たり前。しかし今は、刑事ドラマの追跡シーンもちゃんとシートベルトを装着してからスタートさせる状況だ。プロデューサーは「そんなの、おかしいでしょ。いっそ、そんなシーンはなしにすべきだ」と憤っていた。
一方、これと関係のない映画や配信はお金を出して納得して見てくれるお客さん相手だから、ある程度は緩いという。それでも昨今は、コンプライアンスに気をつけなければならず、暴力シーンは必要ギリギリにするそうだ。なにしろ、「女優がお尻をフリフリするシーンひとつでR-18指定されたこともある」とか。昨今は、テレビ局がバックアップする作品が多い。これではおもしろいモノを作る自由度がない。
(城下尊之/芸能ジャーナリスト)
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