アサリは火を入れ過ぎない
菜の花は春の訪れを告げる代表的な食材です。食べるのはつぼみが付いているときだけで、茎、葉と一緒にゆでて、シャコシャコとした歯ごたえと独特のほろ苦さを味わいます。それだけでも十分に今を楽しめますが、酒で風味をつけたアサリを添えるのだから、春らしさはさらにアップ。飲んべえには、うれしい季節です。
「アサリは火を入れ過ぎると硬くなるので、時間をかけるとダメ。沸騰した日本酒の中に入れたら、すぐに火を止めます。あとはしばらくそのままにしておき、余熱で火を通していく。それだけで十分です」
だしと醤油の割合は、5対1ぐらい。からしの分量はお好みで。ササッと作ってグビッと飲むのに、計量カップやスプーンを使うのは面倒ですから……。
菜の花は、だしをたっぷりとまとってうま味が増しています。そこにプリップリのアサリの身が磯の香りまで運んでくるのです。使う食材は2つだけなのに、味わいは思いのほか豊か。からしがピリリと彩りを加えるのも面白いですね。シンプルでありながらぜいたくなのが、江戸の味なのです。
【材料】
・菜の花
・アサリ(むき身)
・だし
・日本酒
・醤油
・からし
(それぞれ適量)
【レシピ】
1. 塩少々を加えた熱湯で菜の花をゆで、色が鮮やかになったら冷水に取り、水気を切って一口大に切る。
2. 鍋に日本酒を入れて火にかけ、沸騰したらアサリを入れ、すぐに火を止める。
3. ボウルにだし、醤油、からしを入れて菜の花を加えて混ぜ、2のアサリを添える。
今日のダンツマ達人…岡田幸造さん
▽おかだ・こうぞう
1959年、東京都生まれ。慶応義塾大卒。新橋の料亭「松山」で修業したのち、86年から2代目の父・千代造と一緒に厨房に入る。祖父・庄次が築いた江戸の味を守りながら、挑戦も続けている。
▽はちまきおかだ
1916(大正5)年に京橋区尾張町(現・銀座5丁目)で開業。昨年10月、創業101年を迎えた。水上瀧太郎、久保田万太郎、川口松太郎、吉田健一、山口瞳ら多くの文人に愛されてきた銀座の老舗。戦争や都市計画のあおりで、1968(昭和43)年に現在の地に移転した。中央区銀座3―7―21。
(日刊ゲンダイ2018年4月12日付記事を再編集)
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