せめて俺が手向けたい…あるホームレスに捧げる友情の花束

斑目茂美 開運花師
更新日:2021-04-21 06:43
投稿日:2021-04-21 06:00

あるホームレスの死

 ワタクシがお休みをいただいた、次の日の朝。

 すっかりリフレッシュして出勤したワタクシ。「おはようございま〜す」とご挨拶をするや否や、「来た!」と店の奥でワタクシの出勤を待ち構えていたのは、当時の店主妻、通称「ミッちゃん」でございます。

 ミッちゃんは洗いかけのマグカップと泡のついたスポンジを持ったまま、「ちょっと! 昨日すごい方が花を買いにきたのよ!」と、昨日お花を買いにいらしたお客様のお話を始めたのでございます。

ワタクシ  「どういうことですか?」

ミッちゃん 「ホームレスのオッちゃんが花を買いにきたの。それで話を聞いたらさぁ……」

 そう言うと「ミッちゃん」は、その日起こったことの報告を始めたのでございます。しかも、泡だらけのスポンジとマグカップを両手に持ったままで……。

ミッちゃん 「昨日、なんだか忙しくって、すっかりお店が散らかっちゃって。夕方片付けてたら、『すみません』って店の外から声がして。振り返ったら、パッと見てすぐに“ホームレス”ってわかるオッちゃんが立ってて、花をくださいっていうのよ……」

 マグカップと泡だらけのスポンジをブンブン振り回しながら話すミッちゃん。

ミッちゃん 「失礼だけど、お父さん、どうしてお花が必要なの?って聞いたらさぁ……」

 そこから、ミッちゃんは目にいっぱい涙を浮かべて話し始めたのでございます。

仲間の死を弔うため花を買いに…

 どうやら、そのホームレスのオッちゃんは、同じホームレス仲間Aさんとともに、我が花屋の近くに流れる川にかかった橋の下で暮らしていたとのこと。ところが、そのホームレス仲間Aさんが突然亡くなってしまい、その御遺体を警察が引き揚げていったそうです。

 出身地も本名も、今どこにいるかもわからないけれど、とりあえず警察に行ってみて、できることなら最期にもう一度彼に会って、きっと誰にも手向けてもらえない花を、せめて自分が手向けてやりたいと言っていた、とのことでございます。

ミッちゃん 「私は『お金なんかいらないよ』ってあげるつもりだったのよ。そしたら……」

 そこまで言うとミッちゃんは、握っていた泡だらけのスポンジから滴り落ちる泡のことなんて忘れて、涙をポロポロ流しながら続けます。

ミッちゃん  「オッちゃんがズボンのポケットの中からキレイに小さく折り畳んだ千円札を大事そうに広げて、『このお金でありったけのお花をください』って言うのよ。

『お金出しちゃっていいの?』って聞いたら、『いいんです。せめて俺がやってあげなきゃ』って。

 もうさ、全然タダでいいんだけど、それではオッちゃんの気持ちが死んじゃったお友達には伝わらないなって思って、『半分いただきますね』って500円いただいて、お花モリモリの花束を持たせたわよ。

 そしたらさ、オッちゃん何度も何度も『ありがとう』って言うの。そのままオッちゃんを見送って外に出たら、これまた何度も何度も振り返ってお辞儀するから、結局、見えなくなるまで見送ったわ」

 柿の種みたいにつぶらな瞳からポロポロ涙を流しながら話すミッちゃんの報告に、ワタクシもたまらず大号泣。

 朝っぱらからスタッフが大泣きしている怪しいお花屋さんに、何も知らないお客様がご来店したところで、そのお話は終わったのでございます。

斑目茂美
記事一覧
開運花師
半導体エンジニアを経て花業界に転身。イベント・ホテルなどの装飾も手がける生花店を営む傍ら、コンテストで優勝・入賞を重ね、雑誌・新聞等に作品を発表する。神奈川各所にて花教室を開催。障害者支援も花で実践。悩ましくも素敵なお客様を「花」で幸せへと導く道先案内人。ブサかわ猫店長「さぶ」ともに奮闘中。Facebookやってます。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


くねくねコロンは信頼の証♡ 無防備な“たまたま”をガン見しちゃおう
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
目的地は決めてない 見知らぬ町を深夜にふらつく解放感
 終電が終わって、深夜の踏切はしばしの休憩。また朝から大忙しだからね。  こちらは明日は予定もないから、見知らぬ町...
【難解女ことば】「婆」の部首はさんずいではない。正解は?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
母と夫がまさか…流行りの性格診断で腰抜かす『16Personalities』が怖い
 SNSのプロフィールに診断結果のアルファベットを入れたり、それぞれの性格をコンテンツにまとめたりと、若者を中心に流行し...
2024-07-06 06:00 ライフスタイル
玄関でモワ~ン、子供の足が臭い! 家庭で簡単にできる3つのニオイ対策
 子供が成長するにつれて気になってくるのが「子供の足の臭い」です。特にスポーツをやっている子供や、汗をかきやすい夏などは...
40女と20代男子、親子並みの年齢差だけど…! ホンネの残念LINE3選
 40女と20代男子とでは、親子並みの年齢差があります。だからこそ、LINEの送り方には注意したほうがよいかもしれません...
えっ、そんな理由で? スナック「出禁客」がやらかすアウトな共通点
 みなさん、行きつけの飲食店で「出禁」の人って実際に見たことありますか?  スナックなんかだと多そうだし、そうい...
神秘的な尊さの“たまたま”…会えなくなるその日まで雄姿を記録しよう
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ストレス発散で爆買い! それでも後悔しない3大成功例と3大失敗例
 女性のストレス発散方法といえば? そうですね、ショッピングです。気のむくままに爆買いをするとなぜか爽快な気分になります...
2024-07-04 06:00 ライフスタイル
ガーデナーの必見「服部牧場」ルポ ペレニアルガーデンってなんですか?
 神奈川の片田舎が立地の猫店長「さぶ」率いる我がお花屋にも夏がやってきました。店先には鮮やかな夏の花が、屋外にはガーデニ...
3大加工アプリ有料版比較!K-POPアイドル“名指しフィルター”の実力は…
 SNSで写真を投稿するのが当たり前になった今、プリクラ並みに盛れる加工アプリも続々と登場しています。無料でも十分ハイレ...
無重力空間みたい! クネクネころんな“たまたま”君をパチリ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
夕暮れ時に浮かび上がる曲線美
 夕暮れ時に浮かび上がる曲線美――。  それに気づく人はあまりいないようだ。  あなたはどうですか?
【難解女ことば】「御御御付」はなんて読む? ヒントは日本食
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
毎月誰かに「誕生日おめでとう」義家族グループLINEは面倒くさいの極み
 結婚した夫の母親から、ある日突然「家族のLINEグループを作ったんだけど、入ってくれるわよね?」と言われたら、あなたは...
梅雨に負けるな! ラブリー「たまたま7選」で元気チャージ♡
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 6月にご紹介したもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまた...