四肢を切断された“取り立て屋”
タイトルの“DARUMA”は、四肢がない人という意味。5年前に子分が起こしたトラブルのケジメをつけるために、両肘と両膝を切断された元ヤクザの勝浦を、遠藤憲一さんが見事に演じきっています。勝浦はハンデのあるカラダで債務者の家に乗り込み、嫌がらせをして回収する捨て身の取り立て稼業で、生計を立てています。
衝撃シーンの連続
最初に向かったのは、武田梨奈さんが演じる高校生が住む自宅。両親が抱えた借金返済のため勝浦は訪問しますが、ターゲットは武田さん演じる高校生に。勝浦はまだウブな高校生の股ぐらに、「この子、ちょうだいよ」と、匍匐(ほふく)前進で近寄ります。
この衝撃的な映像が話題になった本作ですが、その後もエグい……! 四肢のない男が借金の取り立てをするという設定で覚悟はしていましたが、個人的には全シーン、「お食事中の鑑賞はお控えください」と呼びかけたいほどです。
遠藤さんの演技力がこの作品を輝かせるか否かが決定打ですが、武田さんと勝浦のシモの世話までする坂本を演じた三浦誠己さんのお芝居もピカイチ。
汚れ役に徹した武田梨奈
武田さんは琉球少林流空手道月心会に所属する、黒帯二段の持ち主で運動神経抜群ですが、本作ではアクションを封印。親の借金返済のため、卑猥な言葉を吐く風俗嬢になる“汚れ役”に徹しています。しかも勤務するのは、変態的な性癖を満たす風俗店。
つい何日か前まで普通の生活を送っていた女性が飛び込み、狂っていくさまを観ていると切なくなります。ちなみに、ラストシーンでは重要なカギを握る人物なので、詳しくは本作のご鑑賞を。
考えさせられる三浦誠己の介護シーン
三浦さんが演じる坂本が、木村祐一さん演じる古澤の命令とはいえ勝浦の介護を担う姿も見どころの1つ。筆者は深く考えさせられて自身に問いました。「パートナーや親が要介護状態になったら、ここまで丁寧に面倒を見きれるのか」と。ボーッと流し見するのではなく、坂本の抱える哀愁をご自身の状況と照らし合わせて観ると、別の角度から感慨深い作品になるかもしれません。
ほかにも、お金のためなら手段を選ばない闇金業者を木下ほうかさん、取り立てに追いつめられる債務者に寺島進さんが演じるなど、実力派俳優ぞろいの本作。作中では債務者への取り立て方法があまりにも恐ろしく、目を覆いたくなるシーンがいくつもあります。
借金、ダメ。ゼッタイ。
筆者は借金事情に明るくないため、「これほど非道な取り立てが実在するのか!?」と疑問を持ち調べてみたところ。現在でも返済を滞ると、債務者の子どもが通う幼稚園や学校に何度も電話をかける、職場や実家へ押しかける、恋人の実家へ行くなどの闇金業者も珍しくないそうです。借金によって人生が崩壊したケースも散見されました。SNSを使うことでクリーンなイメージを装い、「貸しますよ」と近づいてくる業者もいるのだとか。借金、怖い……。「借金をしてはいけない、絶対に保証人にもなってはダメ」と教育してくれた、両親に感謝しつつ本作を観終えました。
人間関係やお金、介護への価値観まで問われ、心をえぐられる作品です。昨年に続き、今年も長くなりそうなGWのおうち時間のお供にいかがでしょうか。
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