悪い男ほど魅力的に見える
――続けてください
「一軒目はイタリアン、二軒目はバーに行きました。あ、言い忘れましたが、会社は大手町にあり、食事やバーは銀座に行きました。最初は仕事や他愛のない話をしていましたが、二軒目のカウンタバーで恋愛の話になったんです。
私は生まれが北海道で『札幌に彼と呼べる男性はいるけれど、コロナ禍で会えないし、連絡もほとんど来ない。もう終わったようなものですよ……』と言ったら、横に座る彼が『じゃあ、僕がE美ちゃんを口説いてもいいかな』って、じっと見つめてきたんです。
メガネごしの目が大人の男の渋さを滲ませていて……もうノックアウトです。
本当にずるい(笑)
彼には3歳下の奥様と、小学生の息子さんがいるのに、私の恋心を見透かしたように甘い言葉で囁いてくるんですから、本当に悪い男(笑)
でも、悪い男ほど魅力的に見える――こう思うのは私だけじゃないはずですよね」
選択権は自分にあると思ったのに
――分かります(笑)
「そうなんです。仕事ができて頭も切れる悪い男って、惹かれますよね。それが他人の夫で、手に入らない存在なら、なおさら魅力を感じてしまって……。
それにこの段階では、私はまだ二十代で独身ですし『選択権は私にある。イヤだと思ったら、さっと手を引けばいい』と軽く考えていたんです。
でも、思い通りにはなりませんでした……。バーを出て、ほの暗いビルの階段で手を引かれ、彼に抱き寄せられました。ほのかな体臭と香水の匂いが漂ってきて、とてつもなくセクシーだと感じてしまって……。
同時に、彼を慕う気持ちが一気にあふれてきたんです。
そこからは猛スピードで『不倫という先の見えない谷底』に落ちる感覚です。
気づけば、私たちは唇を重ねていました。
先ほど呑んだお酒の味が吹き飛んでしまうほど緊張してしまって……。そしてタクシーを拾い、私のマンションに彼を招き入れたんです」
続きは次回。
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