更新日:2023-01-27 06:00
投稿日:2023-01-27 06:00
そして現実に…連絡先を聞かなかった理由
――続けてください。
「時刻はもう22時半を過ぎていました。こんな時はすぐに我に返りますね。ああ、夫が心配してる……って。
急いでシャワーを浴び、身支度を整えました。
Rさんも私の事情を察したようで……バスローブ姿でベッドに座っていましたが、財布から一万円を抜き取り、『これ、タクシー代。急いだほうがいいね』と渡してくれたんです。
一瞬、戸惑いましたが、『ありがとう』と受け取りました。
連絡先を訊こうか迷ったのですが、私のほうから言うのはためらわれました。
どちらも家庭がある身ですし、何よりも物欲しそうにしている女だと思われるのが嫌だった……。彼も今後のことに触れることはなく、私はホテルの部屋を出ようとしたんです。
別れ際に、思わず涙
――今日はありがとう。久しぶりに会えて嬉しかった。
私は精いっぱいの笑顔を向けました。
――僕もだよ。僕の名前をFBで検索するとアクセスできるから。
――……え、ええ。
私がうなずくと、Rさんにギュッと抱きしめられました。
――気を付けて帰るんだよ。
――うん……。
そう答える私の頬に涙が伝い落ちました。
夫の待っている幸せな家庭に帰るというのに、どうしようもなく悲しく、別れがつらくなって……」
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