#3 大切なのはいかに互いの性を理解し肯定しようとするか

うかみ綾乃 小説家
更新日:2019-08-26 12:18
投稿日:2019-06-14 06:00

私がいちばん嬉しかった言葉は…

 その後、付き合う人には、前回書いたジョギング云々の例を出すなど、自分の気持ちを伝える努力をしはじめました。

「あなたへの愛情はある。セックス嫌いの自分に悩んでもいない。私が辛いのは、あなたを傷つけることであり、自分に嘘をつくことなんだ。どうしてもあなたがしたいときは、私が光熱費感覚で半額を出すから、ほかの女性としてほしい。それはしたくないと言うのなら、私も歩み寄るが、確実な約束はできない。本当に嫌なときに嘘をついて脚を開くことは、心を刮げる行為なんだ」

 伝えた相手の中には、そのときは理解しようと努力してくれるものの、後々、無理が出る人もいます。

 または「いままでいいセックスを知らないだけだよ」「俺がおまえにセックスの良さを教えてやる」という方向にいってしまい、付き合うに至らずに終わった人もいます。

 私がいちばん嬉しかったのは、次の言葉でした。

「俺には《したくない》っていう気持ちがさっぱりわからない。だからしたいときは、したいって言う。おまえもしたくないときは、したくないって言って。絶対に言って。その場凌ぎで俺を、女に嘘をつかせる男にするな」

 言葉って出してみるもんだなと思いました。

 私の本音に対して、否定するのでも折れるのでもなく、正直な気持ちを伝えられたことが、なによりも嬉しく感じました。

自分の正直な気持ちを伝え合って

 他人のわからないものを、まずはわからないものとして納得して受け止める。

 そんな余裕を、ふだんの人間関係では持てる人でも、こと性の分野では情緒が強く働き、プライドやコンプレックスを刺激されてしまいます。そして自己完結によって孤独な納得を得てしまう。

 けれどセックスレスが問題になる背景にはたいてい、コミュニケーション不足の問題が大きく横たわっています。

 他人は、こちらが想像できない悩みを抱えています。同時にこちらには出せない考えを提示してくれもします。もちろんいくら向き合っても噛み合わず、付き合うべきでない人もいますが、それらはまず対話しなければわかりません。

 大切なのは、欲望の釣り合わない、それでも好きな他者と、いかに互いの性を理解し、肯定しようとするか。

 私自身はいまは現役から遠ざかりつつある自分を楽に感じていますが、もう少し楽に生きる道もあったのではとの反省があります。

 セックスをしたい人も、したくない人も、回り道をして疲れる前に、自分の正直な気持ちを伝え合っていただきたいと思っています。

うかみ綾乃
記事一覧
小説家
2011年「窓ごしの欲情」(宝島社文庫)で日本官能文庫大賞新人賞受賞。’12年「蝮の舌」(悦文庫)で第二回団鬼六賞大賞受賞。コラムニスト、映画の原作&脚本家としても活躍中。近著に「蜜味の指」(幻冬舎アウトロー文庫)。2020年から原作映画『モンブランの女』(『モンブランを買う男』AubeBooks)が全国で公開中。
ブログ http://ukamiayano.blog.fc2.com/

関連キーワード

ラブ 新着一覧


「モラハラ男に引っ掛かったのが運の尽き」自信と笑顔を失った41歳独女
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2023-07-08 06:00 ラブ
「ゼニがあるのに何不満?」月6万円で彼女に世話をさせたい成金50代男
「冷酷と激情のあいだvol.150〜女性編〜」では、モラハラ自覚のない彼のモラハラに悩み、自分に自信を失ってしまった亜紀...
並木まき 2023-07-08 06:00 ラブ
草食も肉食も凌駕!人気急上昇「犬系男子」の特徴、幸せな恋ができそう
 男性のタイプといえば、草食系、肉食系などが思い浮かびますよね。中でも最近、人気上昇中なのが「犬系男子」です。今回は犬系...
恋バナ調査隊 2023-07-07 06:00 ラブ
「不倫夫の歯ブラシでトイレ掃除」恐ろしい!サレ妻たちの計画的な復讐法
 夫に不倫された女性をネット上では「サレ妻」と呼びます。一見、「サレ妻」という呼び方から、悲劇のヒロインのように可哀想な...
恋バナ調査隊 2023-07-07 06:00 ラブ
年下彼氏との食事でお金を出していい時・悪い時、最強ホットスポットは?
 近頃は年下の男性と恋愛する女性が多く、経済力の違いに戸惑うケースも増えています。  彼におごってあげるべきかどうか迷...
内藤みか 2023-07-06 06:00 ラブ
“過干渉オカン”になってない?カレに口出しせずに過ごす方法
 カレが大好きなのに、気になるところを見つけては、口出ししたりイライラしてしまう時ってありませんか。  例えば、友...
若林杏樹 2023-07-05 06:00 ラブ
男性のガラスの心を傷つけてる? 夫婦でも言ってはいけない3つのこと
 今回は、夫婦でも言ってはいけないこと3選を紹介します。夫婦になって一緒にいる時間が長くなればなるほど、お互いの悪いとこ...
恋バナ調査隊 2023-07-05 06:00 ラブ
【7月前半にベストなアロマは?】オスとココロに効くフェロモンジャッジ
 素敵な女性はいい香りがする――。  そう感じるのは、肌から放たれるフェロモンの効果。フェロモンが高まると色気だけ...
太田奈月 2023-07-04 06:00 ラブ
「離婚の相」が気になる! 夫と別れたい主婦が相性を占ってもらったら…
「5年後に離婚する主婦 まめ」のニックネームで「セックスレス」をテーマにSNSやメディアの発信をしています。  た...
豆木メイ 2023-07-04 11:28 ラブ
具合悪いからって“バイ菌”扱いする!? 夫を「敵認定」した5つの瞬間
「夫婦関係は、いつも良好」なんて夫婦はごく稀。どんなに仲良く見える夫婦だって、喧嘩をします。言動によっては「夫は敵」と感...
恋バナ調査隊 2023-07-04 06:00 ラブ
永遠のテーマ「お酒を飲む人と飲まない人の結婚」あり派vsなし派の主張
 結婚を考えると、相手とのさまざまな相性が気になりますが、中でも難しいのがお酒に関する相性。お酒好きな人からすれば、結婚...
恋バナ調査隊 2023-07-03 06:00 ラブ
夫に相談した私がバカだった? イライラしたくない人向けの対処法3つ
「男女は脳みその作りから違う」という話はよく言われますよね。特に実感するのが、夫に悩み事を相談した時。相談しているのに、...
恋バナ調査隊 2023-07-03 06:00 ラブ
DV気質、借金大王、束縛魔…ダメ男にいつも引っかかるタイプの特徴4つ
「いつもダメ男に引っかかっている気がする…」「男性を見る目がなくて恋愛するのが怖い」と思っていませんか? それはもしかし...
恋バナ調査隊 2023-07-02 06:00 ラブ
認知症の兆候なの…? 義父との性生活を赤裸々に話す義母、困惑する嫁
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2023-07-01 06:00 ラブ
「下ネタは嫁姑の潤滑油でしょ?」母の認知症疑惑を認めない能天気な息子
「冷酷と激情のあいだvol.149〜女性編〜」では、義母が義父との性生活にまつわる話題しか話さないことに頭を抱えている奈...
並木まき 2023-07-01 06:00 ラブ
セックスレスの地雷は必ずある! 男性のしたい気が失せる“5大”きっかけ
 男性が浮気する代表的な原因の1つはセックスレスですが、そもそも男性側の性欲が失せるきっかけはなんなのでしょうか? 「...
恋バナ調査隊 2023-06-30 06:00 ラブ