予知できない?「富士山噴火」の可能性を専門家に聞いてみた

コクハク編集部
更新日:2023-03-31 06:00
投稿日:2023-03-31 06:00

 近年、南海トラフの巨大地震や首都圏直下地震など大地震のリスクが指摘されるが、忘れてはいけないのが富士山の大噴火だ。

 3月29日、神奈川、山梨、静岡の3県は関係機関を交えて「富士山火山防災対策協議会」を開催し、「富士山火山避難基本計画」を公表。同計画によると噴火後、市街地での溶岩流からの避難は、従来の車から渋滞するリスクを考えて「原則徒歩」に変更。5合目から上にいる登山者には、噴火の予兆があった段階で、下山が指示されることなどが決まった。

「富士山火山避難基本計画」は、2021年の「富士山ハザードマップ」改定を踏まえて作成された。ハザードマップには富士山が噴火した場合、火口から流れ出た高温のマグマが地表をゆっくり流れる「溶岩流」が3時間以内に到達する区域の住民数は11万6000人に上る。大規模噴火による「降灰」も山麓で50cm以上、首都圏は2cm以上、積もる可能性もある。

 なかなかのインパクトだ……。今回の改定はどこまで信頼できるのか。「完全解説 日本の火山噴火」の著書もある武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏(地震学)が言う。

予兆はあっても予知はできない

「内容は最新の知見が盛り込まれています。ただし、火山灰や岩石が高温の火山ガスとともに時速100kmほどのスピードで流れる『火砕流』が到達するエリアは避難する時間がないため、改定では噴火前に避難することになりました。

 そもそも噴火は、予兆はあっても予知はできません。予兆が出てから噴火まで何日も時間を要したり、噴火しないこともある。予知ができないので、策定通りに住民を誘導できるかは課題でしょう」

関連性が疑われる「深部低周波地震」

 現在の技術では明確な「予知」はできないが、「予兆」とされる自然の異変をキャッチすることはできる。そのひとつが、地下のマグマとの関連で起きるとされる「深部低周波地震」だ。

 気象庁の「富士山の火山観測データ」によれば、昨年の140回に対し、一昨年の21年は88回。深部低周波地震は1.5倍程度、増えていたという。このデータは何を意味するのか。気象庁火山監視課担当者に聞くと……。

「データのある1995年以降で、最多だったのは2000年11月。1カ月だけで211回、次に多かったのが01年5月の同じく163回でした。その後は昨年まで年間数十回を数える程度を推移しています。極端に多かった2000年11月前後から、深部低周波地震に注目していますが、現在まで月でいえば数回、数十回あるかどうか。目立った地震活動は見られません。直ちに大噴火が起こるリスクは低いとみています」

「宝永大噴火」から300年が経過

 だが、直近の1707年「宝永大噴火」から300年も経っている。

 富士山の3大噴火の記録は、宝永大噴火のほか、800年から802年にかけて続いた「延暦大噴火」、864年の「貞観大噴火」がある。貞観大噴火では山頂から溶岩が北西に流れ、溶岩流によってできた場所が現在の「青木ヶ原樹海」になっている。

大地震との相互関係は

「宝永大噴火は宝永地震(現在の南海トラフの巨大地震)発生の49日後に起きています。直前の大地震がマグマだまりを刺激したのが引き金だと考えられ、爆発が大きく、東京にも火山灰が飛んできたことが分かっています。平安時代(9世紀から11世紀)は規模が小さい噴火も含めて毎年のように山頂が噴火していました。すでに300年も噴火していないのは異常事態。もっとも、過去の記録からも、噴火の予兆となる地震は数日前に活発になります。直前にしか分からないので、常に警戒が必要です」(前出の島村英紀氏)

 前出の気象庁火山監視課の担当者も、「噴火の直前に地震が突然増える可能性はある」と話していた。

 巨大地震と同様、いつ起こってもおかしくはない。

コクハク編集部
記事一覧
コクハクの記事を日々更新するアラサー&アラフォー男女。XInstagram のフォローよろしくお願いします!

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


【調香師監修】頭のにおいは“武器”!愛され頭皮になるヘアケア&香り術
 男性から女性への愛情行為のひとつに「頭皮のにおいを嗅ぐ」しぐさがあります。カレが貴女の頭のにおいを嗅いできたら、それは...
まさに鈴カステラ! 爪とぎ中に立派な“たまたま”がポロリ♡
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「秋波を送る」は、もはや美人だけの特権ではない。
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
令和なのに「婦人会=奴隷」な件! 田舎あるあるに見る窮屈な人間関係
 田舎は人と人の繋がりが濃く、助け合ったり情報を共有し合ったりできるメリットがあります。しかし、その濃さや交友関係の狭さ...
【銀座】カラオケ館が仕掛ける“ノマド喫茶”誕生!無料豚汁の具がデカい
 人気のスタバやドトールはいつも満席でカフェ難民になることもしばしばな銀座・有楽町エリア。そんな都内喫茶激戦区で、カラオ...
【独自】すいかばか'24~究極のレシピを求めて#1 「寿風土ファーム」代表・小林栄一さんのある決意
 4月の始め、白州は少し遅めの春。冬を越した畑は、春の七草ホトケノザで一面紫の絨毯のようだった。  久しぶりに会っ...
インスタは安定のウザイ投稿祭りだよ!「可愛いよ」待ちがごく痛々しい
 知人・友人の生活を垣間見ることができる、インスタ。友人の近況を知れたり、幸せのお裾分けをしてもらったりと良いところがあ...
【拡散禁止】リモートワークのサボり方を全力で考えた。25分→5分の法則
 リモートワークの醍醐味といえば何ですか? そうです、サボりですね! リモートワークのときは周りの目もないので、やらなけ...
祖父がぽつり「年上女が好きだけど誰も生きてねえ」後期高齢者のLINEには切なさがつきもの
 最近では、後期高齢者でもスマホを操り、LINEを使いこなす人も多くいます。でも、おじいちゃんやおばあちゃんから送られて...
買って正解!不正解?「ニトリ」99円バスグッズが机周りで優秀だった件
 ニトリから生まれたインテリア雑貨のお店『デコホーム』で購入したバスグッズを紹介します♪  デコホームの魅力はなん...
長崎県の池島に上陸! お土産に夢中な“たまたま”をこっそり激写
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
親の介護が必要に【専門家監修】一人で悩まない!知っておきたい公的制度
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
任期中に【18万円】の最低保証!シンママ生活応援プロジェクト
 ただいま、『コクハクリーダーズ』2期生を、絶賛募集中!  今回は「シングルマザー応援企画」。シングルマザーであれ...
2024-05-15 11:40 ライフスタイル
花の値段も上がる一方だが、買いに来る女は必ずしもお金持ちとは限らない
 連日連夜「これも値上がりかぁ」と悶々としております。大好きなお菓子や菓子パンのサイズや個数が減っているのを確認するたび...
在宅ワークの暇つぶしも恋バナに限る。独女、久しぶりの胸アツ実況中継
 コロナ禍で、一気に在宅ワークをする人が増えましたよね。でも会社にいる時とは違い、雑談や電話などの雑務も減るため、在宅ワ...
【常勝無敗】ビールしか勝たん!飲み会好きな40女の太らないルール3本柱
 嬉しいことに最近飲みのお誘いが増えております。コロナ禍のあの日々はいったい何だったんだ…というくらい。とはいえ、気にな...