ヒロイン(浜辺美波)と難なく再会! 令和の朝ドラは視聴者を弄ばない

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2023-05-12 16:20
投稿日:2023-05-12 16:20

NHK朝ドラ「らんまん」~第6週「ドクダミ」#30

 縁あって十徳長屋に住むことになった万太郎(神木隆之介)と竹雄(志尊淳)。長屋の面々は、差配人の江口りん(安藤玉恵)、棒手振りの及川福治(池田鉄洋)、東大の落第生・堀井丈之助(山脇辰哉)、噺家の牛久亭九兵衛(住田隆)、小料理屋の女中・宇佐美ゆう(山谷花純)といった愉快な顔ぶれ。

 万太郎のトランクを盗んだ倉木(大東駿介)と、その妻・えい(成海璃子)もいる。

 住まいが決まった2人は、引っ越しの挨拶のお菓子を買いに、万太郎が一目ぼれした娘がいるかもしれない和菓子屋「白梅堂」へ。店先に彼女がいることを妄想しつつ、中に入るとそこには無骨な職人(池内万作)が……。

【本日のツボ】

「わし、あなたに嘘をついてしもて。初めて会うたとき、蛙じゃと言うちょりましたけど、実はわしは蛙じゃのうて人間ですろ」(万太郎)

 娘に会えず、店先で「こんなに大きな町やき、会うがは奇跡かのう」とがっかり、道端のたんぽぽに話しかける万太郎の隣りに突如現れた寿恵子(浜辺美波)。

「また話してるんですか」と声を掛けられ、驚く万太郎。真剣な面持ちで何を言い出すのやら、と思ったら、「蛙じゃのうて人間です」でした。

 そして、改めて自己紹介をして、寿恵子の名前を聞き出すことにも成功。草花のことしか興味がないので奥手かと心配していたのですが、その必要はありませんでした。寿恵子が店におらず、万太郎たちが帰ってすぐに現れた時、このパターンで当分すれ違うのか、と嫌な予感がしましたが、そうはならずに安心しました。

1991年(平成3年)放送の朝ドラ「君の名は」は…

「君の名は」(アニメではありません)の真知子と春樹などどれだけすれ違ったことか。それに比べて、万太郎と寿恵子はあっけないくらいに再会が叶いました。視聴者の感情をいたずらに弄(もてあそ)ばない。それが令和の朝ドラなのです。

 曲亭馬琴「南総里見八犬伝」を読んでいた寿恵子が「尊い!」と言ったのには耳を疑いましたが、それもよし。今風に言えば、草花おたくの万太郎と、「南総里見八犬伝」おたくの寿恵子は似た者同士、万太郎にとってはまさに奇跡の出会いだったといえるのではないかと。

 それにしても、前日の放送回で「峰屋は若の財布じゃない」とあれほど竹雄に叩き込まれたのに、引っ越しのご挨拶の和菓子でまた散財とは! 竹雄も若に甘過ぎです。和菓子だけに。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

エンタメ 新着一覧


地殻変動!下剋上球児、うちの弁護士…視聴率では見えないバズり作品は
 シリーズものを除いた主要民放プライム帯ドラマ全12作の全話平均視聴率が5.9%(ビデオリサーチ調べ・関東地区・世帯=以...
こじらぶ 2023-11-25 06:00 エンタメ
ゴンベエ(宇野祥平)の素性が明らかに…上方新喜劇ばりの人情劇がグー
 ツヤ(水川あさみ)が亡くなり、スズ子(趣里)は梅吉(柳葉敏郎)と今後のはな湯をどのようにしていくか相談する。  ...
桧山珠美 2023-11-24 16:11 エンタメ
母ツヤ(水川あさみ)笑顔の最期、「ナレ死」に救われた
 大阪に戻ってきたスズ子(趣里)は病床のツヤ(水川あさみ)と再会する。ツヤの病状のことを受け止めきれないスズ子は、梅吉(...
桧山珠美 2023-11-23 16:05 エンタメ
六郎役・黒崎煌代の将来性、母ツヤとやり取りに泣けて泣けて笑える
 六郎(黒崎煌代)の出征の日がせまり、六郎は頭を丸め恥ずかしそうにしている。相変わらず体調が悪いツヤ(水川あさみ)は専門...
桧山珠美 2023-11-21 17:30 エンタメ
「下剋上球児」で“令和のキムタク”になりそうなイケメン俳優は?
 2019年のドラマ、「3年A組-今から皆さんは、人質です」(日本テレビ系)を覚えていますか?  菅田将暉が教師役...
「らんまん」のデジャヴ? ヤバ藤化するダンサーの中山、秋山逃げて~
 内緒の話があると松永(新納慎也)から呼び出されたスズ子(趣里)は、梅丸のライバルである日宝に一緒に移籍しないかと誘われ...
桧山珠美 2023-11-14 16:15 エンタメ
木下優樹菜から迸るガチヤンキー魂!前言撤回、TV再登場するタチの悪さ
木下優樹菜様(元タレント・35歳)  やっぱりユッキーナ(木下優樹菜)様のヤンキー魂には惚れ惚れしてしまいます。 ...
堺屋大地 2023-11-14 06:00 エンタメ
市川染五郎は眉毛、堅あげポテト、ラ・マンチャの男なくしては語れない
 先日、歌舞伎で「ルパン三世」をやることが報じられました。題して、新作歌舞伎「流白浪燦星(ルパン三世)」。  ルパ...
上原多香子は不倫を繰り返す“恋愛単発ドラマ”の女王!続編不要体質の業
上原多香子様(女優、美容家・40歳)  元SPEEDの上原多香子様は、あまり役者業のイメージはないと思いますが、す...
堺屋大地 2023-11-14 16:23 エンタメ
スズ子覚醒!茨田りつ子(菊地凛子)と渋谷のり子の表情がオーバラップ
 歌うコツを掴んだスズ子(趣里)は、羽鳥善一(草彅剛)とのレッスンを続け、その歌声はぐんと熱を帯びてきていた。  ...
桧山珠美 2023-11-10 14:30 エンタメ
“おぼこ娘2人”の初々しい恋バナ! つよぽん演じる羽鳥は「まさに笑う鬼」
 スズ子(趣里)と羽鳥善一(草彅剛)の厳しいレッスンは相変わらず続いている。しかし、羽鳥はスズ子の歌に相変わらず満足しな...
桧山珠美 2023-11-09 15:46 エンタメ
BLACKPINKの再契約なるか?「7年目のジンクス」結末に4つのシナリオ
 世界的なK‐POPブームの昨今。「コクハク」読者の中にも、K-POPにハマっている方も多いのではないでしょうか? ...
2023-11-09 06:00 エンタメ
「マイホームヒーロー」を嗜む!なにわ男子高橋“俳優武者修業”に高好感度
 すっかり忘れていました。佐々木蔵之介(55)の存在を。最後の独身大物俳優などと言われ、過去には、小野真弓や丸山桂里奈な...
大和玲子(蒼井優)の戒名に「礼」と「優」、位牌の細部にまで抜かりなし
 スズ子(趣里)たちは、大和礼子(蒼井優)が出産後に病院で亡くなったと知らされる。スズ子はお別れの会で、大和が梅丸少女歌...
桧山珠美 2023-11-03 14:30 エンタメ
スズ子のナレ出世、股野のナレ求婚…感動のシーンを描いて欲しかった!
 昭和12年、スズ子(趣里)が香川から戻ってきて3年。梅丸少女歌劇団は、秋山(伊原六花)のタップダンスとスズ子の歌を二本...
桧山珠美 2023-11-01 15:37 エンタメ
SMILE-UP.(旧ジャニ)俳優部の演技&将来性、飛躍の片鱗見せたの誰?
 嵐の二宮和也(40)がSMILE-UP.(旧ジャニーズ)からの独立を発表しました。  中丸雄一、山田涼介、菊池風...