妻・寿恵子(浜辺美波)の頼もしさマシマシ! NHKの光る演出

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2023-08-02 15:40
投稿日:2023-08-02 15:35

NHK朝ドラ「らんまん」~第18週「ヒメスミレ」#88

 博物館を訪れた万太郎(神木隆之介)。野田(田辺誠一)と野中(いとうせいこう)に田邊(要潤)を怒らせてしまった経緯を話し、とりなして貰えないかと相談する。

 が、大学で『植物図鑑』を刊行するなら、国費を使って進めることになり、大学の人間ではない万太郎が出入りするのは厳しいのでは、と言われる。

 さらに、博物館で研究を続けさせては貰えないか、と願うも、「大学と博物館は協力関係にある」と断られてしまう。が、「君の才能を評価する人はほかにもいる」と万太郎を応援。ロシアのマキシモビッチ博士のもとへ行ってはどうかと背中を押す。

 失意の万太郎のもとにマキシモビッチ博士から手紙が届く。そこには「このムジナモの植物画で槙野万太郎の名は世界中の植物学者たちに轟くだろう」と万太郎を絶賛する言葉が。

 万太郎は意を決し、寿恵子(浜辺美波)に「寿恵ちゃん、申し訳ない。ワシ、ロシアに行きたい」と頭を下げる。

【本日のツボ】

「ロシア? ……いいんじゃないですか。本当に大冒険だ」(寿恵子の台詞)

 ※※以下、ネタバレあります※※

 博物館で「マキシモビッチ博士の元に行け」と勧められた万太郎、「妻が身重で、幼い娘もおりますき」とその場を去ったのには正直驚きました。

 今までの万太郎なら、植物最優先で、人のことなどお構いなし、でしたから。さすがに家族を持ち、大黒柱としての自覚が芽生えてきたのかと思いきや、マキシモビッチからの手紙を読み、「博士の元で研究したい」と寿恵子に頼みます。

 少しは変わったかと思っていましたが、やっぱり万太郎は万太郎でした。

 そして、寿恵子もやっぱり寿恵子。頼もしさマシマシです。無謀な万太郎の願いも、即、OK。言葉も通じない、知り合いもいない異国について行こうというのですから。

 園子のことを気にする万太郎に、「ロシアにも子どもはいます。当たり前に暮らしてる。だったら長屋くらいありますよ。そんなことより、あなたを認めてくれる人がいる、それがなにより嬉しい」と。

夫婦の思いはひとつ!

 そういえば、「ロシア?」と「いいんじゃないですか?」のあいだ、少しだけ間がありました。

 その間に弦を弾く琵琶の音が聞こえました。寿恵子の脳裏に子どもの頃からの愛読書「南総里見八犬伝」が浮かんだのではないでしょうか。

 そして、自分を納得させるように、「本当に大冒険だ」と寿恵子。一瞬にしてそのことをわからせる演出、お見事です。

 万太郎のプロポーズを受け入れる際、「あなたは草花の道をひたすら突き進んでいく、全速力で。そんなあなたと並んで走るなんて大冒険です。あなたとなら毎日、今日を生きるだけでひたすら大冒険なんです」と言っていた寿恵子ですが、ここまでの大冒険になるとは思ってもみなかったのでは。

 ロシアに向かって、夫婦の思いはひとつ! めでたしめでたしで終わるかと思いきや、ラストの「ヒメスミレ」が萎れていたのが気になります。

 禍福は糾える縄の如しを地でいくこのドラマ、ハラハラドキドキが止まりません。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「アンパンマン」から山ちゃん降臨! あの挨拶が聞けたのは“子どもの日”のサプライズですか?
 東京高等芸術学校に入学した嵩(北村匠海)は、受験の際に出会った健太郎(高橋文哉)と再会する。担任の座間(山寺宏一)から...
桧山珠美 2025-05-05 12:06 エンタメ
「あんぱん」一瞬のヤムおんちゃんに嵩は気づいたか? 寛の名言が“友蔵の俳句”並みに楽しみな件
 東京高等芸術学校合格発表の日。嵩(北村匠海)は結果を見る勇気が出ず、ひとり座っていた。そこに寛(竹野内豊)が現れる。嵩...
桧山珠美 2025-05-03 16:00 エンタメ
田中圭の不倫疑惑にちょっと待った!「令和の価値観」で永野芽郁との騒動を見てみると…
「週刊文春」のスクープで永野芽郁との不倫疑惑が報じられた妻子持ちの田中圭。  恋愛コラムニストであり、恋愛カウンセ...
堺屋大地 2025-05-07 12:45 エンタメ
永野芽郁が「清純派」って誰が言った? 批判するのはお門違いなワケ。江頭2:50への“涙”も大正解!
 日曜劇場『キャスター』(TBS系)で共演中の韓国人俳優であるキム・ムジュンを自宅に連れ込みお泊りし、なんとその翌日に妻...
堺屋大地 2025-05-02 06:00 エンタメ
「あんぱん」蘭子と豪の秘めたる恋に“過去の名作”を思い出す。河合優実は百恵ちゃんによく似ている
 縁談の返事をしに出掛けた蘭子(河合優実)を連れ戻したのぶ(今田美桜)に、蘭子は本心を明かす。季節は巡って秋になり、うさ...
桧山珠美 2025-05-01 19:16 エンタメ
なにわ男子・道枝駿佑は“肉食女子”から守られたのか?「キャスター」男性俳優陣が気になるよ
 芸能界広しといえども清純派と呼べるのは芦田愛菜だけ。長年、そう訴えてきましたが、今回の一件が図らずともそれを証明したの...
共亜事件は「虎に翼」のオマージュか。あんぱん、ブギウギの3人が同時代を生きている
 昭和11年、家族や嵩(北村匠海)に見送られ、のぶ(今田美桜)は女子師範学校の寮に入る。軍国主義の担任・黒井雪子(瀧内公...
桧山珠美 2025-04-28 18:40 エンタメ
「あんぱん」最後まで毒親だった登美子(松嶋菜々子)。去っていく彼女に問うてみたいこと
 受験したのぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の明暗が分かれる。静まり返った柳井家で、寛(竹野内豊)たちに頭を下げる嵩。そこ...
桧山珠美 2025-04-26 12:50 エンタメ
春ドラマの評判を調査!『最後から二番目の恋』は令和の鬼渡?『あんぱん』『対岸の家事』の感想は
 2025年4月期も話題のドラマが続々スタート! 多すぎてどれを見るのか迷ってしまう…。そんな人のために忖度なしでドラマ...
「あんぱん」千尋(中沢元紀)は本当に良い子…史実どおりの展開なのか。しょくぱんまんのようなイケメンだ
 けんかした嵩(北村匠海)と千尋(中沢元紀)に、寛(竹野内豊)は改めて後継ぎはいらないと告げる。そして、何をしながら生き...
桧山珠美 2025-04-23 17:51 エンタメ
こうでなくちゃ! 志尊淳の正解を「恋は闇」で見た。いい人よりも“妖しい姿”に妄想が駆り立てられる
 新ドラマ「恋は闇」(日本テレビ系)の志尊淳が良きです。  前クールの「日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった...
「あんぱん」なんて贅沢!今が旬、河合優実の“目で語る”表現力と色気に驚く。俳優・ソニンのEE JUMP感を消した演技も見事
 なりたい夢を見つけたのぶ(今田美桜)は、女子師範学校合格に向けて猛勉強をし始めるが、成績が思わしくなく頭を抱える。同じ...
桧山珠美 2025-04-21 14:23 エンタメ
怪演・市原隼人に「ヤバい超大物」2人が熱烈ラブコール。迫真すぎる“ガンギマリ”の演技がモテる理由か
 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)にて、盲目の大富豪にしてゾクッとする異様な雰囲気を放つ鳥山検校を怪演...
堺屋大地 2025-04-21 06:00 エンタメ
ラランド・サーヤは「名誉男性」なのか? お笑い界の“女すぎる”という悪口に思うこと
 ラランド・サーヤが参加するバンド「礼賛」が大阪で行ったライブで、痴漢行為が発生。被害女性がSNSで被害を訴えたことで発...
帽子田 2025-04-20 06:00 エンタメ
「あんぱん」松嶋菜々子の“毒”さえチャーミングにする厄介な美しさ。ドキンちゃんにも見えてしまった
 8年間音沙汰のなかった登美子(松嶋菜々子)が突然帰ってくる。登美子に対してわだかまりが残ってはいるものの、自分の漫画を...
桧山珠美 2025-04-19 06:00 エンタメ