「じゃあ1時間後にね」の言葉で猛ダッシュ
すると、英明さんは思いがけないことを言ってきたんです。
――今から帰ると、1時間後には家に着くね。僕も行っていいかい?
――えっ?
――ちょっと話があって……。急ぐんだ。だめかな。
――も、もちろん大丈夫。じゃあ1時間後にね。
にこやかに言って通話を切ったのち、私は一目散に六本木駅に向かって駆け出しました。
(英明さんが来る前に、シャワーを浴びて、全てを流しておかないと……)
そんな思いがよぎりました。いえ、もう彼は私の不貞を見抜ていたのかもしれません。
人混みをかき分け、駅の階段を大急ぎで駆けおりました。ハイヒールを履いていたことを今日ほど恨めしく思った日はなかったでしょうか。
電車に乗っても、地下鉄のガラスに映る自分が汚らわしくて、許せなくて……。40分後、やっと自宅に着いてから、すぐに洋服を洗濯用のネットに入れて洗濯機を回しました。
本来ならクリーニングに出すはずのワンピースですが、そんなこと構っていられません。
両耳のピアスがない!
そしてバスルームに行き、頭からシャワーを浴びたんです。
(すべてを洗い流さなきゃ。洋服も、汚れた自分も……)
ボディソープを泡立て、肌が擦り切れるほど洗いました。ヴァギナも、指を入れて愛液を掻きださんばかりにこすりましたね。
敬一に抱かれた痕跡を消し去りたかったのもありますが、汚らわしい部分を自らの手で罰したい気持ちもありました。
(バカ、バカ……弓香のバカ!)
私を宝物だと言ってくれる英明さんにとって、これ以上の裏切りはないと自分を罵倒しました。
シャワーを済ませ、髪や体を拭いていた時、鏡の自分を見て驚きました。両耳のピアスがなくなっていたんです。
英明さんから贈られた大切なピアスなのに……と思いながらも、すぐに部屋着のワンピースに着替え、ドライヤーで髪を乾かしました。薄くメイクをし終わるのと同時に、部屋のチャイムが鳴ったんです」
婚約者が家に
――大変なこと続きですね。続けてください。
「鏡の前で笑顔を作り、玄関の扉を開けると、英明さんが心配そうに立っていたんです。
――英明さん、いらっしゃい。
――弓香、さっき様子が変だったけど、本当に大丈夫?
――え、ええ……何もないけれど、そんなにおかしかった?
私は動揺を隠すように、彼を招き入れました。ソファーに促し、カモミールティーを用意したんです。リラックス効果のあるカモミールティーはリンゴに似た甘い芳香を放ちます。
少しでも男の気配を消す手助けになってほしいと、祈るような気持ちもあったんです。
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