『姑息(こそく)』本来の意味は“ずるい”ではなく、一時しのぎ

コクハク編集部
更新日:2024-01-20 19:15
投稿日:2023-12-10 06:00
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地名などをピックアップ。
 毎日頑張るあなたがちょっぴり得した気分になれますように……。

【今回の女ことば】姑息

「小池は“人気者”の吉村に先を越されては注目度が下がるとでも思ったのか、慌てて昼食会をセットし、メディアに撮らせた姑息な様子がうかがえる」(日刊ゲンダイ/8月30日号)

「府民・市民にきちんと説明しなければならない」と迫り、「今回の増額を最後」とすると要求したのだ。吉村は万博協会の副会長なのに、姑息な猿芝居」(日刊ゲンダイ/11月6日号)

「9月の内閣改造ではライバル候補を閣内に留め置くなど、再選に向けた万全の人事に心を砕いたが、その姑息と慢心に足をすくわれたとも言える」(日刊ゲンダイ/11月13日号)

  ◇  ◇  ◇

 夕刊紙「日刊ゲンダイ」では『姑息』という言葉がなかなかの頻度で登場します。

もともとは、ずるい、卑怯の意味ではなかった

「姑」は常用漢字でも人名用漢字でもないため、記者ハンドブック(第13版)では「姑息」は「間に合わせ、一時しのぎ、姑息(こそくのルビ付き)」になっています。そして、注釈として《ずるい、卑怯の意味で使わない》とありましたが、2022年発売の最新版では注釈がなくなりました。

 その背景には注釈はなくしてヨシとする意識が漂っているからかもしれません。というのも、平成22年度の「国語に関する世論調査」(文化庁)では、「姑息な手段」という例文を挙げて意味を尋ねたところ、本来の意味である『一時しのぎ』を選んだ人が15%、70%以上が『卑怯な』と回答。世間一般では正々堂々としていないさまを指すことばとして浸透しているんですよね。

「姑」はしばらくの意

「広辞苑」(第7版)によると、「姑」はしばらくの意。

①一時のまにあわせ。その場のがれ。
②俗に、卑怯なさま。姑息な奴。

「用例でわかる 故事ことわざ辞典」(初版)も、①があり「注釈:本来はしばらく休むの意」、用例として「姑息な対策を講じる」とあります。

「文化庁国語課の勘違いしやすい日本語」(文化庁国語課著)によると、「姑息なやり方ばかりで、あいつは卑怯な奴だ」という言い方は、重要なことに正面から取り組もうとせずに「一時の間に合わせ」で済ませる=「卑怯」とみられるので、不自然ではないとしています。

こそく、コソコソ

 また「姑息」という言葉の響きが、裏で「コソコソ」とずるいこと、卑怯なことをしている様子を連想させているのでは、と指摘。そして、人生にはさまざまなトラブルがあるが「姑息」な手段ではなく、正々堂々、正面から問題に向き合うようにしたいものと結んでいます。

 どこぞの首長のように「姑息な奴」ばかりが得をしているようにみえる世の中ですが、何事にも誠実でありたいものです。

(日刊現代校閲/タダ美)

コクハク編集部
記事一覧
コクハクの記事を日々更新するアラサー&アラフォー男女。XInstagram のフォローよろしくお願いします!

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


今しか聞けない子供の可愛い言い訳8選。胸がキュンキュンしてまうやろー
 子育てをしていると子供の言い訳を微笑ましく感じる瞬間があります。今回は、定番セリフやほっこり系、しんみりするものなど、...
買って失敗!ダイソー詰め替え容器の“天国と地獄”。オイルやシャントリ、小分けするのにベストな商品は?
 髪の毛用にボディマッサージ用に何かとオイルが手放せない乾燥肌の40代編集部員です。2、3種類をオイルを用途や気分に合わ...
忘年会キャンセル界隈に立ちはだかる壁。飲み会回避に使える理由6選
 12月も中旬に差し掛かり、もう年末も目の前。冬休みを目前にワクワクしている人も多いと思いますが、ちょっと待って。社会人...
今さら聞けないホテル&旅館でのNG行動5つ。テレビをつけたまま外出はありorなし?
 年末年始、家族や友人と旅行に出かける人もいるでしょう。でも意外に知られていないNG行動をしてしまい、旅館やホテルから嫌...
道路の真ん中が特等席! 宮城県・田代島の自由気まま“たまたま”に憧れる
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
赤いガーベラ1本400円買える? “赤除外”で楽しむクリスマスフラワーを花屋店主が提案
 お歳暮とクリスマスと正月…お花の市場もごった煮のおかしな状態になっています。年中行事に敏感な花業界に身を置くワタクシで...
世間話に役立つ! 40代が知っておくべき2024年流行語大賞ワード5選
 2024年の新語・流行語大賞が12月2日、発表されました。皆さんはもうチェックしましたか? なかには「聞いたことがない...
更年期障害と付き合うおばさんの心得。私は「ツヤ髪」で自信を取り戻す
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
紀州のドン・ファン元妻のLINEグループ「恋して昇天ナンマイダ」の元ネタはこれか? BL好き疑惑が浮上中
 12月12日、「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助さん(当時77)への殺人罪に問われた元妻、須藤早貴被告(28)の判決公...
2024-12-17 06:00 ライフスタイル
中山美穂さんは「入浴中の不慮の事故」で…40代から気を付けたい“お風呂のヒヤリハット”
 中山美穂さんのニュースが話題になっていますが、お風呂でのヒヤリハットは、案外見過ごしがち。特に40代を過ぎた人は、しっ...
むくみ、冷え対策にも…貴女に合う年末年始を楽しむデトックスアロマは?【フェロモンジャッジ調香師が解説】
 年末はイベントや食事会の機会が増える楽しい時期ですね。お酒や食事を思いきり楽しむ反面、気がつけば体重が増え、体のむくみ...
静謐な深い山の中
 何か深いことを考えようと思ったけれど  かすかな川の音を聴くだけで  ただ心が安らぐのだね
セクシーな男の余裕が尊い! 不意にポロリした“たまたま”にドキドキ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
【動物&飼い主ほっこり漫画】第87回「こたつチャージ」
【連載第87回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
【女ことば】「眉目秀麗」は誰に当てはまる“褒め”四字熟語?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
「38歳です」→マチアプ男「あーwww結構いってる」って感じ悪っ! 縁切り不可避LINE3選
 自分のLINEを読んで相手がどう捉えるか、どんな気持ちになるかまで考えられない人や、わざとトゲのある言い方をしたがる人...