さくらももこさんのエッセイに学んだ 本当の「時は金なり」

孔井嘉乃 作詞作曲家・ライター
更新日:2019-08-06 06:00
投稿日:2019-08-06 06:00
「時は金なり」という言葉、年を取れば取るほど心に沁みるのはなぜでしょう。私がこの意味を意識したのは、さくらももこさんのエッセイ「たいのおかしら」を読んだ時。(って、エッセイの中では、全く「時は金なり」について触れてはいないのですが……)。ふと、紹介したくなりました。

そもそも「時は金なり(Time is Money)」の本当の意味は?

「時は金なり(Time is Money)」とは、100ドル札紙幣の肖像にもなっているアメリカ建国の父、ベンジャミン・フランクリンの言葉。「Time is Money」を直訳すると、「時間はお金そのもの」という意味になりますが、間違った解釈で捉えている方が多いようです。

 まずは、本当の意味を見てみましょう。

「時は金なり」とは

「時は金なり」を日本の辞書で引くと、“時間は貴重で有効なものであるから、浪費してはいけない”とあります。

 でも、この言葉を遺したベンジャミン・フランクリンの意図は、実は少し違うそう。彼のいう「Time is Money」とは「機会損失」。つまり、“利益を得られるはずだったのに、機会を逃したことで得ることができなかった”という考え方。

似ているようで似ていない「時は金なり」と「Time is Money」

 たとえば、1日中寝て過ごした時。

 日本の「時は金なり」の考え方では、1日を無駄に過ごしてしまった「時間の浪費」という捉え方になります。

 でも、「Time is Money」の考え方だと、何かにアプローチをして1日を過ごしたら何らかの利益を得ることができたかもしれないのに、それをしなかった「機会の損失」という捉え方になるのです。似ているようで似ていないことが分かりますね。

「落ちている1円玉理論」と「時は金なり」

 話が飛びます。さくらももこさんの傑作エッセイ「たいのおかしら」(1993年刊行)にある「落ちている1円玉理論」の話。この理論が私の中で、本当の意味での「時は金なり」を意識するヒントになりました。

「落ちている1円玉理論」とは

「落ちている1円玉理論」とは、“落ちている1円玉を拾おうとするエネルギーは、1円玉以上かかる”と言う、さくらさんの夫の理論。

 落ちている!と発見して脳に信号が送られるだけで、すでに1円玉の半分くらいのエネルギーを使う。わざわざ膝を曲げて腰を丸めて拾ったら、そのエネルギーは1円玉ではまかないきれない、というもの。

【1円玉を拾った時に得られるものと失うもの】

・得られるもの=1円玉
・失うもの=脳や体にかかるエネルギー(換算すると3円分くらいらしい)

 つまり、1円玉を拾うと、マイナス2円の損失になる。どうやったって赤字になるから、拾わない方が良い、という考えですね。

 ちなみに、さらに上を行くさくらさんは、「夫がこの理論を説明している行為にはどのくらいのエネルギーがかかっているのか、身振り手振り解説するエネルギーの方がよっぽど赤字だろう」と、エッセイの中で書き綴っていました。

でも、1円玉を拾った方が良い場合もある

 でも、1円玉を拾った方が良い場合もあると思うんです。極端ですが、財布の中にあと1円あれば何かが買えるとしたら拾った方が有益ですし、小さな子どもに「物を拾ったら、交番に届ける」ということを教える機会を作れるのかもしれません。

 要は、得るものと失うものは、人の価値観によって変わるのです。

得られるものと失うものを考える視点を持つ「時は金なり」

 私は、この「落ちている1円玉理論」をアレンジして、かなり活用しています。

 たとえば、もう寝る時間なのに息子から「もう1冊絵本読んで」と言われた時。「ダメ」と電気を消した場合、その後にやってくるのは、2〜3分では済まないギャン泣き時間……。

【絵本を読んだ時に得られるものと失うもの】

・得られるもの=時間、体力温存、息子の笑顔、寝かしつけ後の仕事で得られる報酬
・失うもの=ストレス、体力、時間

 得られるもの、失うものを考えると「たかが2〜3分だったら読んだ方が良い」という結論をすぐに導き出せます。つまり、得られるものと失うものを考える視点があると、自分の状況や肉体的・精神的余裕を考慮して「どっちが有益か」と、いつでも冷静に行動することができるんです。

 これは、本当の意味での「時は金なり」に繋がるのでは?と思うのですが、いかがでしょうか。

時間を有益にできるかどうかは自分次第!

「落ちている1円玉理論」の視点を持った今、1時間の電車移動時間、夫と子どもがお風呂に入っている20分間、信号待ちの30秒などのすき間時間を、いかに有益な時間に変えられるか、と常に考えてしまう時間貧乏性の私。

 この性分をできればやめたいけれど、でも、何かを得た時の快感に勝るものはありません。ぼーっとしていればあっという間に過ぎる「時間」には、無限の可能性があります。時間を有益に使えるかどうかは、自分次第!

「時間」が人類に等しく与えられているからこそ、どのように生きるのかが問われているような、そんな気さえしてしまいますね。(考えすぎて、頭がこんがらがってきました)

 とにかく。1日寝て過ごしてもったいなかった、なんて悩むことが多い方は、ぜひゲーム感覚で「落ちている1円玉理論」を試してみてほしいです。得られるものの大きさに感動しますから。

孔井嘉乃
記事一覧
作詞作曲家・ライター
3歳からピアノを始め、現在は作詞作曲家&シンガーソングライターとして活動中。2014年からウェブライターとしての活動を開始。得意ジャンルは美容、恋愛、ライフスタイル。コスメコンシェルジュ、日本化粧品検定1級、ベビーマッサージ資格、乳児心理+児童心理資格取得。
2016年、ママユニット「mamakanon」を結成。活動5年目にして、YouTube再生回数1,200万回達成。2020年、フレンチシンガーバイオリニストソングライターとのDuo「ellipsis」を結成。両者の絶対音感を活かしてカバー演奏などを行う。
1児のママ。特技は早起き。ウィスキーが好き。

◇孔井嘉乃公式サイトmamakanon公式 YouTubeチャンネルellipsis公式 YouTubeチャンネル

ライフスタイル 新着一覧


工場での単純作業は悪くないが…恋愛経験ゼロの女に起きた“タグ付け事件”
 西荻窪の実家で母親の信美と2人で暮らし、工場でパート勤務をしているかおり。彼女は今の生活に特別な不満もなく、趣味のカフ...
私は子供部屋おばさん?彼氏ナシ・非正規でもシフォンケーキで満ちる日常
 工場内に終業のチャイムが鳴った。  機械の停止音とともに「お疲れさまでした」が飛び交う。  同じロゴの入っ...
蛙化現象わかったフリしてない?恋愛中でもどこか冷静な若者のリスク管理
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(63)。多忙な現役時代を経て、56歳...
うんざりするけども!目上の人の苦労話は“秒”で遮断するのはもったいない
「今の人は恵まれてる、昔はさ~」から始まる目上の人の苦労話、みなさんもうんざりするほど聞いてますよね。  その苦労話で...
台湾最高!くまのプーさん気分も味わえる「40女激オシ台湾産ビール」3種
 仕事の後のビールは、全てを忘れさせてくれる大切な存在。そんな1日の終わりに飲む1杯にはこだわりたいですよね。  そこ...
2024-03-07 18:25 ライフスタイル
戦うべき相手は過去の自分 時には昇ってきた階段を振り返る
 時には昇ってきた階段を振り返る。ずいぶんと上がった、と誇りに思うこともあるし、まだこんなところか…と凹むことも。 ...
親を嫌いになってもええやん? 40女が手放せた“無理と我慢”
 早いものでもう2月。新年をきっかけに、今年こそは! と決意を新たにした方も多いのではないでしょうか。  筆者もそのう...
コミュ力ゼロ、ママ友関係が苦痛でしかない…テッパン切り口&対処法
 子育てをはじめるともれなくついてくるのが、たくさんの人間関係。保育園や学校、ママ友との交流の機会が多いので、コミュ力の...
愛しいおんにゃの子に猛アピール♡“たまたま”君の恋の行方は
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
悔やまれる添い乳よ…子育てが落ち着いた40代ママが語る育児後悔エピ
 子育て期間中は、何が正解なのかわからないまま日々育児と向き合わなくてはなりません。しかも、子供によって成長の速さも性格...
世界的にフラワーバレンタインが来てる!愛の告白より感謝を伝える日に
 立春(2月4日)を迎え、暦の上では春。ですが、この記事を書いている最中にもテレビ画面には「本日関東地方は雪」ニュースが...
入籍お知らせで赤っ恥!させていただきますはダメ、巷でよく聞く変な敬語
 日本語って本当に難しいですよね! 中でも、日本人ですら間違えてしまうのが、敬語です。    案外、正解を知っている...
飛び立つのは怖いけど…いくつになっても思い切りって大事
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
“万年毛玉ジャージ”のママ友ん家がレベチ!良くも悪くもドン引きしたエピ
 人は見かけでは判断できません。特に、相手の本当の部分が垣間見えるのが「家の中」です。  いつも綺麗な人なのに家がすご...
朝寝坊にイチャイチャバレ…夫の実家に帰省した時の“珍”失敗談4つ
 結婚すると、長期休みや年末年始に夫の実家に帰省する人が多いですよね。そして、夫の実家への帰省中に、夫の家族から引かれる...
発達障害児の長男 児童精神科で勧められた「プレイセラピー」を受けたら
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...