唯川恵さんに聞く 不倫・略奪・腐れ縁…恋愛の「後悔しない落とし前」

コクハク編集部
更新日:2024-01-12 06:00
投稿日:2024-01-12 06:00

 女優・広末涼子が鳥羽周作シェフとの年内結婚に向け、意思を固めたという報道に世間はふたたび反応し、賛否こもごもの議論が渦を巻いた。2023年6月に発覚したダブル不倫騒動から半年、恋多き女の落とし前のつけ方なのか。

 これまで数々の恋愛ストーリーを世に送り出し、昨年10月には自身初の新書「男と女ー恋愛の落とし前ー」(新潮社)を刊行した直木賞作家・唯川恵さん(68)が考える「オトナの恋愛の落とし前」とは――。

  ◇  ◇  ◇

不倫への興味の“正体”は怖いもの見たさ

 ヒロスエに限らず、芸能界をはじめとする著名人の不倫は好奇の目にさらされる。なぜこうも大衆は他人の不倫ネタに群がるのだろうか。

「怖いもの見たさってあるんじゃないかしら。私も気になって記事を読んでしまうし、そのたびに有名人は叩かれてお気の毒だなって……。

 でも所詮は、よそ様の不倫。家庭が壊されてしまったり、被害が生じていなければ、『あ、そうなのね』と高みの見物を決め込めばいいと思いますね。

 ただし、野次馬根性で勝手にウオッチしている立場で、糾弾するのは筋が違うし、とやかく口を挟むものでもない。『不倫はだめだ』と正義を振りかざしたい気持ちもわからなくはないですが、オトナであれば道ならぬ恋に悩み苦しんだことはあるはず。

 たとえその経験がなかったとしても、未来の話は誰にもわからない。不倫の当事者になる可能性がゼロではないからこそ、怖いもの見たさが心の中に渦巻き、不倫への興味がかきたてられるのかもしれませんね」

12人の女性の“修羅場の恋愛体験”に迫る

 1984年に「海色の午後」でコバルト・ノベル大賞を受賞し、作家デビューした唯川さん。恋にのめり込めないOLと、恋愛にしか興味のないその女友達の対照的な生き方を描いた「肩ごしの恋人」で直木賞を受賞して以降も、数々の恋愛小説を世に送り出してきた。

 そんなラブストーリーの名手が自身初の新書では、36歳から74歳までの計12人の女性の“修羅場の恋愛体験”に耳を傾けた。

 フィクションの小説とノンフィクションの新書――確かに表現する手法は違うのだが、そこを明確にするのは、ナンセンスかもしれない。

 事実を損なわない程度に適宜改編することで小説とドキュメンタリーの垣根を超えた本作は、既存の定義にはあてはまらない新しいスタイルで様々な恋愛模様を描き出した。

「主人公に並走し、主人公を肯定するように書き進める小説とは異なり、真正面から向き合った感じで刺激的だった」と執筆当時を振り返る。

恋愛小説を書くには、恋愛にのめり込めるぐらいの情熱が必要

 そして「ずっと恋愛小説を書いてきたのですが、年を重ねるにつれ、しんどく感じることも増え、しばらく恋愛小説とは距離を置いてきた」と告白する。

 たしか、恋愛をテーマとした物語を紡ぐことに行き詰まりを覚えるようになったと、何かのインタビュー記事で読んだことがある。

「恋愛小説を書くには、実際に恋愛にのめり込めるぐらいの情熱がないとダメ。説得力のある作品を書けません。それなのに自分の中では、恋愛に対する情熱が少しずつ薄れていった。そんな状態で色恋沙汰の物語を書くのは読者の方にも失礼です。

 このまま徐々に恋愛ものからフェードアウトしていくのかなと感じていた時に、担当編集から今回の企画を提案され、実際に取材をお受けいただいた皆さんから話を伺うと、もう気になって気になって仕方がない(苦笑)。

 気がつけば『じゃあ、言わせてもらうけど』などと辛辣な言葉も投げかけたりして……新鮮でした。

 でもそれと同時に、こうも思ったんです。『あなたは他人に偉そうに意見できるような素晴らしい恋愛をしてきたの?』って。

 自答し始めるとてんで進まない。なので、ある時から、むしろ『偉そうに言おう』と決めたんです。『話を聞いているあなたは唯川恵だ』と自分自身に言い聞かせた。

 唯川恵という名前を背負ったら、唯川恵らしく書きたい気持ちが沸いてきたんです」

15年の不倫に終止符を打った女の落とし前

 唯川恵らしく――。その答えはひとりひとりの読者に委ねられるが、本書には、15年に及ぶ不倫に終止符を打った43歳女性が登場する。

 単純ではない恋の始まりや別れるまでの葛藤といったドロドロの不倫劇の顛末は著作に譲るとして、妻子持ちの彼と別れて関係を精算した43歳女性について、唯川さんはこう綴っている。

《今の彼女は彼と別れて落とし前をつけたと思っているかもしれないが、妻にしたらこれからが始まりなのである。》

 サレ妻から15年分の復讐をくらった場合、受けて立って応戦するか、素直に“罰”として受け入れるか。

 本当の意味での「落とし前」はついていないと余韻を含ませ、ぞわりとした読後感を誘う。

相手に屈せず、自分の意思で決断する

「彼女に限らず、話を聞いている側は落とし前をつけていないと感じても、ご本人はつけたと言い張るケースってあるんですよね。

 人は恋愛すると浮足立つ生き物であり、自分を見失い、烈しく心を動かされ、どうしようもない熱を帯びてしまう。そんな予測不能な状態を十分に味わったら、極めて冷静に振る舞うように努めるようになる。

 そんな心の揺れ動きも含めて、オトナの恋愛の醍醐味なんです。

 落とし前のあとに続く言葉は、つける、つけたい、つけるしかない……なんでもいい。ただし、相手に屈せず、自分の意思で決断すること。そうでないと相手を嫌いになる以前に自分自身を嫌いになりかねません。

 自分を嫌いにならずに、自分自身で決断をするっていうのが、オトナの女性の恋愛の落とし前であってほしいですね」

 インタビューの終わり、唯川さんは「人は覚悟を決めると楽になるから不思議よね」と微笑んだ。それはだれもが辿り着こうとして辿り着けない境地である。

(取材・文=小川泰加/コクハク編集部)

コクハク編集部
記事一覧
コクハクの記事を日々更新するアラサー&アラフォー男女。XInstagram のフォローよろしくお願いします!

ラブ 新着一覧


夏に不倫が増えるのなあぜなあぜ? 5つのエピソードから読み解く
 夏の青い空や、広い青い海を眺めていると、開放的な気分になりますよね。そのせいか「思い切り楽しんじゃえ〜!」と不倫する人...
恋バナ調査隊 2023-08-02 06:00 ラブ
結婚を決意させるには?彼は結婚したい気持ちに気付いてる説
 今のパートナーや、次に付き合う恋人と結婚したいと思ってる方に聞きたいのですが、男性って結婚の話になると逃げ足が早くない...
若林杏樹 2023-08-02 06:00 ラブ
「夫婦の秘密」はあっても良い? 実はみんな色々隠してる!
 皆さん、パートナーに打ち明けていない隠し事ってありますか?  私はめちゃめちゃあります(笑)。  そもそもこの...
豆木メイ 2023-08-01 08:56 ラブ
貴女の度数は? オスを引き寄せる「フェロモンジャッジ」に挑戦!
 素敵な女性はいい香りがする――。  そう感じるのは、肌から放たれるフェロモンの効果。フェロモンが高まると色気だけ...
太田奈月 2023-08-01 06:00 ラブ
「知り合いから始まる恋」を実らせたい!気になる彼と付き合う方法5つ
 密かに恋心を寄せる相手が、ただの知り合い程度の関係だった場合、どうアプローチしていいかわからず悩んでしまいますよね。友...
恋バナ調査隊 2023-07-31 06:00 ラブ
素直になれず損ばかり…「好き避け」する女性たちの実態&3つの対処法
 あなたは自分の中に芽生えた「好き」という感情に素直でいられますか? 中には、気持ちとは裏腹に好きな彼を避けてしまう……...
恋バナ調査隊 2023-07-30 06:00 ラブ
私は見た!彼氏の周りの“嫌な女”たち…泣き寝入りせず戦おう
 彼氏の周りにいる女友達に、嫉妬したり不安になったりすることもありますよね。でも「心が狭いと思われたら嫌だな………」と、...
恋バナ調査隊 2023-07-30 06:00 ラブ
「結婚は人生の罰ゲームですよね?」妻を抱きたくない新婚夫の離婚願望
「冷酷と激情のあいだvol.153〜女性編〜」では、新婚4カ月にして完全な夫婦レスに陥っていることに焦りを抱く妻・優香さ...
並木まき 2023-07-29 06:00 ラブ
夫のレス宣言を甘く見ていた? 新婚4カ月で“夜ナシ”に愕然とする33歳女
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2023-07-29 06:00 ラブ
せっかく結婚したんだもの!「夫婦一緒に楽しめる趣味」5選
 夫婦のカタチは十人十色。夫婦の時間を取れている場合もあれば、なかなか一緒に過ごす時間を取れないカップルもいるでしょう。...
恋バナ調査隊 2023-07-29 06:00 ラブ
彼氏にイライラどうしてくれる!? 上手な気持ちの伝え方とNGな対処法
 彼氏のことが大好きでも、イライラするときってあるものです。でも、対処の仕方や気持ちの伝え方を間違えると別れに繋がる場合...
恋バナ調査隊 2023-07-28 06:00 ラブ
“理想の15cm差”より長続きする? 身長近いカップルはメリットいっぱい
 恋愛では、「男性のほうが背が15cmくらい高いのが理想的」と感じる人は多いですよね。そのためか「彼と身長近いから、彼が...
恋バナ調査隊 2023-07-28 06:00 ラブ
社内恋愛の代償ってやつ?元彼がいる職場で「気まずい」を克服する方法
 社内恋愛中は会社に行くのもウキウキで、仕事のモチベもアップ♡ しかし、別れた途端その環境は気まずいものに一変します。 ...
恋バナ調査隊 2023-07-27 06:00 ラブ
ものには限度が…「キャンプ命」過ぎない!? アウトドア好きな夫あるある
 近年、人気が高まっているアウトドア。特に男性でソロキャンプや登山にハマる人は多いですよね。でも、中にはアウトドア好きな...
恋バナ調査隊 2023-07-27 06:00 ラブ
男心をギュッと掴む! いつも一緒にいたくなる女性の特徴
 付き合い始めは彼とどこに行くのも一緒だったのに、半年経つとウザがられ、だんだん時間を使ってくれなくなった経験はありませ...
若林杏樹 2023-07-26 06:00 ラブ
離婚した方がいいよ…周囲が見ているヤバい夫婦の4つの特徴
 夫婦といえども我慢の限界を迎えることがあります。たとえ子どもへの影響が気がかりで離婚に踏み切れないケースでも、離婚した...
恋バナ調査隊 2023-07-26 06:00 ラブ