治療を頑張ったお祝いに久しぶりのデート
――おつらいですね。差し支えない程度にその後をお聞かせください。
「2022年の5月に乳房の除去手術、2023年の年明けに卵巣除去の手術を受け、抗がん剤やホルモン治療を受け、6月にはひと通りの治療を終えました。
ホルモン治療は今後5年間は続けなければなりませんが、つらかった闘病生活が終わり、私の心はいくぶんか落ち着いていたんです。
豊さんとは細々とLINEで繋がっていましたが、8月には、
――香織、治療を頑張ったお祝いをしよう。
思いがけないLINEが来たんです。
――嬉しい。オシャレして行くね。
――どこに行こうか。食べたいものはある?
――薬の関係でグレープフルーツが食べられないけれど、最初のデートで行った創作和食の店はどう?
私は、彼と親密になった時のデート場所をあえて提案したんです。夏の暑い日でしたが、ウィッグをつけて、新しいワンピースを着て…。
ただ、明らかに体力は落ちていました。20分も歩くと体が怠く、食事もあまりおいしく食べられない。乾杯はしましたが、お酒もほとんど飲めずじまいでした。
彼とのハグに夢心地になったけれど
私の疲労を感じ取ったのか、食事を終えると、
――香織、今日は帰ろうか。あまり体を疲れさせちゃいけないし…。
――ごめんなさい。よかったら、私の家でコーヒーでも飲まない?
そう誘ったんです。そのころは夫はほとんど家に帰らず別居状態でしたし、息子も社会人となって一人暮らしをしています。
――じゃあ、少しだけなら…。
自宅に招いて、久しぶりに抱きしめ合い、キスをしたんです。えぐれた乳房に虚しさを感じながらも、彼のたくましい腕に抱きしめられ、夢心地でした。
ただ、これからも豊さんと付き合っていくにあたり、どうしても避けられないことがあった…そう、乳房を失った私の体です。
私は、『どんな姿になっても香織が好きだ』という言葉を期待し、勇気を出して告げたんです。
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