両乳房と卵巣を失った40代主婦、婚外恋愛の彼と関係が狂い始めて #1

蒼井凜花 官能作家・コラムニスト
更新日:2024-02-15 09:46
投稿日:2024-02-02 06:00

治療を頑張ったお祝いに久しぶりのデート

思い出の店だったけれど(写真:iStock)
思い出の店だったけれど (写真:iStock)

――おつらいですね。差し支えない程度にその後をお聞かせください。

「2022年の5月に乳房の除去手術、2023年の年明けに卵巣除去の手術を受け、抗がん剤やホルモン治療を受け、6月にはひと通りの治療を終えました。

 ホルモン治療は今後5年間は続けなければなりませんが、つらかった闘病生活が終わり、私の心はいくぶんか落ち着いていたんです。

 豊さんとは細々とLINEで繋がっていましたが、8月には、

――香織、治療を頑張ったお祝いをしよう。

 思いがけないLINEが来たんです。

――嬉しい。オシャレして行くね。

――どこに行こうか。食べたいものはある?

――薬の関係でグレープフルーツが食べられないけれど、最初のデートで行った創作和食の店はどう?

 私は、彼と親密になった時のデート場所をあえて提案したんです。夏の暑い日でしたが、ウィッグをつけて、新しいワンピースを着て…。

 ただ、明らかに体力は落ちていました。20分も歩くと体が怠く、食事もあまりおいしく食べられない。乾杯はしましたが、お酒もほとんど飲めずじまいでした。

彼とのハグに夢心地になったけれど

えぐれた乳房が虚しい(写真:iStock)
えぐれた乳房が虚しい (写真:iStock)

 私の疲労を感じ取ったのか、食事を終えると、

――香織、今日は帰ろうか。あまり体を疲れさせちゃいけないし…。

――ごめんなさい。よかったら、私の家でコーヒーでも飲まない?

 そう誘ったんです。そのころは夫はほとんど家に帰らず別居状態でしたし、息子も社会人となって一人暮らしをしています。

――じゃあ、少しだけなら…。

 自宅に招いて、久しぶりに抱きしめ合い、キスをしたんです。えぐれた乳房に虚しさを感じながらも、彼のたくましい腕に抱きしめられ、夢心地でした。

 ただ、これからも豊さんと付き合っていくにあたり、どうしても避けられないことがあった…そう、乳房を失った私の体です。

 私は、『どんな姿になっても香織が好きだ』という言葉を期待し、勇気を出して告げたんです。

蒼井凜花
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官能作家・コラムニスト
CA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持つ異色の官能作家。近著に「CA、モデル、六本木の高級クラブママを経た女流官能作家が教える、いつまでも魅力ある女性の秘密」(WAVE出版)、「女唇の伝言」(講談社文庫)。
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