タナケン「業界」発言に違和感 喜劇界でも演劇界でもないワードチョイス

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-02-27 15:05
投稿日:2024-02-27 15:05

NHK朝ドラ「ブギウギ」~第22週「あ~しんど♪」#103

 タナケン(生瀬勝久)が入院したと聞き、山下(近藤芳正)とスズ子(趣里)は、タナケンの見舞いに行くことにする。

 訪ねて来たスズ子に対して、タナケンは右足の古傷が悪化して立つのもつらいと言い、自分が客から忘れ去られてしまうのではないかと不安だと話し出す…。

 しばらくして、スズ子は、新曲の相談をしに羽鳥善一(草彅剛)を訪ねる。しかし、羽鳥はブギのモチーフもネタ切れになってしまったという。

【本日のツボ】

「席が空いたらほかの誰かが奪いに来る。これが業界の常だ」(タナケン)

 ※※以下、ネタバレあります※※

「タナケン足に激痛!公演中止!」タナケンの非常事態を知るのも、やっぱり「真相婦人」でした。

 タナケンとスズ子の関係性からすれば、雑誌に記事が掲載されるよりも前に、タナケンの緊急事態が耳に入ってくるのでは、と思うのですが…。

 それにしても「真相婦人」万能過ぎ&山下さん「真相婦人」好き過ぎ(笑)。

 山下さんとタナケンのお見舞いに行くスズ子。病室の前でタナケンがマネジャーに声を荒げているのを聞いてしまいます。

 そのことをスズ子に聞かれたと知り、「どうも不安でね。舞台から離れている間に僕は忘れ去られてしまうかもしれない」と本音を打ち明けます。

「まさかそんな…。みんな先生が元気に戻ってくるのを待ってるはずや」とスズ子が言えば、「そんな甘い世界じゃないよ。僕の代わりなんていくらでもいる。喜劇王なんて言われちゃいるが、席が空いたらほかの誰かが奪いに来る。これが業界の常だ」と。

スズ子を信頼しているからこそ

 あの孤高のタナケンがスズ子に本音を語るというのはそれだけ彼女を信頼しているからにほかなりません。

 お見舞いのフルーツがりんごとみかんの缶詰と、ちょっとショボいような気もしますが、そこはご愛敬としましょう。

 それよりも気になったのは、タナケンの「業界」発言です。当時のタナケンに「業界」などという概念があったのかどうか。その頃のことはよくわかりませんが「業界」よりも、「喜劇界」や「演劇界」のほうが自然な気がしました。

 なんとなく芸能界における「業界」という言葉に、胡散臭さも感じており、タナケンの口から出たことに違和感を覚えたのでした。

桧山珠美
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大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

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