更新日:2024-04-05 11:48
投稿日:2024-03-29 06:00
なかったことにしようとしたけれど…
――続けてください。
「僕がカフェで立ちすくんでいると、
――ここじゃマズいわ。2人きりになれるところに行きません?
杏奈さんが出口に促してきました。
――えっ。
――だって…。離婚したとはいえ、ジンさんの奥さまとは、今でもママ友なんですよ。
――確かにそうですが…今日の件はなかったことにして、それぞれ帰りませんか?
僕は至極まっとうな提案をしました。でも、彼女は違った。
――ジンさん、私が既婚者サイトに登録していること…内緒にしてほしいんです。
――もちろん。僕もそのつもりです。
その瞬間、彼女の表情に少しだけ安堵が滲みました。
――とりあえず2人きりになれる場所に行きましょう。いろいろ話したいこともありますし。
――え…? ええ、いいですが。
銀座のシティホテルへ
結局、僕らは銀座のシティホテルの一室に部屋を取りました。
セミダブルのベッドとデスク、ソファーセットと液晶テレビがある、シンプルながらもシックなインテリアです。
部屋に着くなり、杏奈さんはソファーに座り、ベージュのジャケットを脱いだんです。否応なく白のブラウスの胸の膨らみに目が行って、慌てて逸らしました。
――あの…咲子は元気でしょうか? 妻が全く娘と会わせてくれず、6年も会わずじまいで…。
僕も恐るおそるソファーに並んで腰かけると、彼女の甘い香水の匂いが濃く香り、ドキッとしましたね。そんな胸中を知ってか知らずか、
――咲子ちゃんは元気ですよ。6年も会ってないなんて…つらいですね。
離婚の理由は奥さまから聞いています。お仕事が忙しくて、すれ違いが続いたと…。
――ええ、そうなんです。仕事優先で家庭を顧みなかった僕の責任です。ただ、月に一度の面会も弁護士を通して断られてしまって…。
僕がうなだれると、彼女はスマホを差し出してきました。
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