「握手」の演出に伏線?寅子と花岡は友情の証、優三のそれとは真逆だった

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-05-14 16:00
投稿日:2024-05-14 16:00

NHK朝ドラ「虎に翼」~第7週「女の心は猫の目?」#32

 寅子(伊藤沙莉)の1年先を行く花岡(岩田剛典)は司法修習後の試験に合格。どうしても早く伝えたいと寅子に電話をしてきたのだった。

 みんなでお祝いをしようと提案した寅子に花岡はあるリクエストをする。それを聞いて、花江(森田望智)とはる(石田ゆり子)は大喜び。華やかなワンピース姿でお祝いの食事に行った寅子は、花岡から故郷である佐賀に赴任することになったと告げられる。

【本日のツボ】

寅子と花岡、友情の握手

 ※※以下、ネタバレあります※※

 寅子の部屋の前でなにやら聞き耳を立てているはるさん。「2人がいいっておっしゃったの?」と、寅子から花岡とのやりとりを聞いた花江は興奮状態。

「やだ~どうするの? 何着ていくの?」と気持ちがはやる花江とは対照的に、「仕事のあとだからいつもと同じ」と通常営業の寅子。花江に「ね、どうする? もしプロポーズされちゃったら」と言われても、「ない、ない」と。

「じゃあせめて口紅くらいしていったら」とアドバイスする花江に「だから仕事あるんだって」と。

 そうはいっても、お手製ワンピースを新調し、おめかしする寅子。「清楚なワンピース」というデザインを選んだところに、花岡への淡い恋心を感じます。

 せっかくのおニューですが、雲野(塚地武雅)も、岩井(趙珉和)も気づかず。ところが、花岡は一目見てすぐに「その服、とてもよく似合っているよ」と。「そんなふうに気づいてくれるのは一握りの男」という花江の言葉を思い出し、「出た、一握りの男」と心の声。

「私たちの道はまだ始まったばかり。というか私なんてまだ始まってもいない。やめていった仲間のためにも、私も早くたくさん研鑽を積んで立派な弁護士になりたいわ」

 意気揚々に語る寅子を見つめ、視線を落とす花岡。佐賀への赴任について話すも、ついに最後まで、寅子への想いを告げることはありませんでした。

「ありがとうな、猪爪」

 別れ際、噴水の前での無言の時間。ドキドキしました。岩ちゃん、なんともいえないいい芝居をします。

「じゃあ気をつけて。お互いがんばりましょうね」。寅子が差し出した手をしばし見つめて、握手。「ありがとうな、猪爪」。友情の握手を交わします。

 昨日(#31)の、優三(仲野太賀)の時とはまた違う、せつない握手でした。「またね! 体に気をつけてね!」声を掛ける寅子の方を振り向きもせず、そのまま手をあげて立ち去る花岡。なんともカッコ良きでした。

 別れもあれば出会いもあり。よね(土居志央梨)が雲野法律事務所でともに働くことになったのは視聴者としては喜ばしいことです。

 花岡の話を聞いた時のよねの動揺、その表情を見た時の轟(戸塚純貴)の一瞬の変化。なにやらこちらの関係も気になります。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「僕じゃ駄目かな」あすなろ白書のキムタクを想起、優三渾身のプロポーズ
 寅子(伊藤沙莉)は、弁護士として社会的な信用を得るためにお見合いをさせて欲しいと直言(岡部たかし)とはる(石田ゆり子)...
桧山珠美 2024-05-20 15:02 エンタメ
事件はいつも「あの階段」で起こる! 岩ちゃん演じる花岡もう婚約
 晴れて弁護士になったが、女性であることを理由になかなか依頼をしてもらえない寅子(伊藤沙莉)。「女の幸せより大事なものか...
桧山珠美 2024-05-20 15:02 エンタメ
炎上芸人・粗品は松本人志にビビってない!キンプリへの暴言も計算済み?
 2018年にコンビとして『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)のチャンピオンとなり、2019年にピン芸人として『R-1ぐ...
堺屋大地 2024-05-15 06:00 エンタメ
あぶ刑事ヒットならドラマ化も?柴田恭兵の“枯れた老人”は世を忍ぶ仮の姿
 先月までNHK-BSで放送していた「舟を編む~私、辞書つくります~」はなかなか素敵なドラマでした。  三浦しをん...
映画『広末涼子』(仮)の鳥羽氏は中盤キャラ?スキャンダル史まだ続く説
 昨年6月、人気シェフ・鳥羽周作氏とのダブル不倫が報じられ、無期限の謹慎処分を受けていた広末涼子。その後、夫だったキャン...
堺屋大地 2024-05-11 06:00 エンタメ
花岡(岩ちゃん)、寅子に匂わせプロポーズ!?でも黄色いバラの花言葉は…
 とうとう合格した寅子(伊藤沙莉)、先輩の久保田(小林涼子)、中山(安藤輪子)。そして寅子と合格者が3人も出たことで、廃...
桧山珠美 2024-05-10 15:30 エンタメ
生田斗真“無痛おねだり”大炎上の後始末 羊水発言は“謹慎4カ月”だったが…
 俳優の生田斗真(39)が大炎上している。生田はインスタグラムのストーリーズで、ファンから質問に回答する企画で「今日で妊...
優三のいい人キャラさく裂!予告でヒヤリとした梅子の断崖絶壁シーンも〇
 涼子(桜井ユキ)と香淑(ハ・ヨンス)の思いを背負って、寅子(伊藤沙莉)たちは再び高等試験に挑むが、今度は梅子(平岩紙)...
桧山珠美 2024-05-09 16:30 エンタメ
『虎に翼』脚本家、アニメ界でなぜ高評価?朝ドラ人気の要因は公平な目線
 NHK連続テレビ小説『虎に翼』が好評だ。主人公は日本初の女性弁護士・三淵嘉子をモデルとした猪爪寅子。彼女が投げかける疑...
竹もとで勉強する寅子たちは今時のノマド?法律事務所の初仕事はお茶入れ
 昭和13年春、明律大学を卒業した寅子(伊藤沙莉)たち。寅子は雲野(塚地武雅)の法律事務所で働きながら高等試験合格を再び...
桧山珠美 2024-05-07 14:20 エンタメ
あさイチで光った令和の“料理男子”の新星、キスマイ横尾のライバル現る!?
 ゴールデンウィークといっても、どこかにお出掛けの予定になんの予定もなく、ただ漫然とテレビを見ていたら、神様から思わぬご...
直言ら16名全員無罪!憲法記念日に放送された寅子が語る「法」の解釈
 昭和11年12月。1年半に及んだ直言(岡部たかし)の「共亜事件」がいよいよ結審の日を迎えた。  寅子(伊藤沙莉)...
桧山珠美 2024-05-04 06:00 エンタメ
直言の判決いかに? 寅子の表情、優三腹くだり…テンポ絶妙な法廷シーン
 公判中に倒れた直言(岡部たかし)は、自分の無実を信じる寅子(伊藤沙莉)の気持ちに応え、取り調べで自白を強要されたことを...
桧山珠美 2024-05-02 17:13 エンタメ
『虎に翼』の週タイトルになぜ「?」はる記“主婦乃手帖”で一発逆転なるか
 直言(岡部たかし)は寝たきりでろくに食事も取ろうとしない。そんな様子をはる(石田ゆり子)は心配していた。  一方...
桧山珠美 2024-04-30 13:50 エンタメ
大谷結婚モロ被りの不穏も何のその!各世代イケメン網羅のキムタクドラマ
 木村拓哉(51)主演ドラマ「Believe-君にかける橋-」(木曜21時、テレビ朝日系)がスタートしました。待ちに待っ...
永瀬廉は大人の色気、髙橋海人はヘタレの真逆 確かに築くキンプリ2人体制
 昨年より、2人体制となったKing & Prince(以下、キンプリ)の永瀬廉(25)と髙橋海人(25)。4月期に始ま...
こじらぶ 2024-04-27 06:00 エンタメ