刮目!伊藤沙莉“静”の演技、「佐田優三 仲野太賀」表示も期待は泡沫に…

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-05-30 19:10
投稿日:2024-05-30 19:10

NHK朝ドラ「虎に翼」~第9週「男は度胸、女は愛嬌?」#44

 これまでの後悔と秘密をすべて打ち明けて、直言(岡部たかし)は安らかに亡くなった。

 寅子(伊藤沙莉)は何事もなかったように生活を続けようとする中、はる(石田ゆり子)は寅子にお金を渡す。花江(森田望智)もはるも悲しみを乗り越えるため、好きなことに使ったのだと言う。

 闇市をさまよい、優三(仲野太賀)と一緒に食べた焼き鳥を思い出す寅子。優三が自分にかけてくれた言葉がよみがえってくる。

【本日のツボ】

そして、物語は第1話冒頭へ――

 ※※以下、ネタバレあります※※

 裁縫が得意ではない寅子が優三のために作った<虎は千里を行き、千里を帰る>のお守り。あれを持った復員兵が現れました。しかも、後ろ姿だったものですから、もしや優三…と思ってしまいました。

 しかもオープニングで、「佐田優三 仲野太賀」のクレジットの後に(回想)がついていなかったので、ほんとうにそうかも、とかなり期待したのですが、残念ながら、帰ってきたのはお守りのみでした。

 復員を待つ収容所の病室で隣り同士だったという小笠原(細川岳)は、自分の病状が悪化した時、優三が手にお守りを持たせてくれた、というそのエピソードまで優三の優しさが溢れています。世の中がみんな優三みたいな人ばかりだったら、戦争が起こることはないでしょう。

 優三の死を知って以降、平静を装ってはいるものの、塞ぎ込んでいる様子の寅子。伊藤沙莉の“静”の演技がなんともいえず悲しみを誘います。

 母のはるは、そんな寅子の心の状態をわかっていて、「これは自分のためにだけにお使いなさい」と直言のカメラを売って工面したお金を渡します。「あなただけじゃない。花江さんも私も、どうしようもなくなった時、内緒で思いっきり贅沢しました」と。

思い出の河原で解放された心

 闇市の屋台でどぶろくと焼き鳥を注文する寅子。ところが思い出すのは「おいしいものは一緒に」と言っていた優三のこと。

 結局食べることなく、帰ろうとしたところ、店主が追いかけて来て「もったいないから持っておかえり」と新聞にくるんだ焼き鳥を渡します。

 そして、あの想い出の河原。寅子は焼き鳥を見つめながら、「分け合って食べるって言ったじゃない」「必ず帰って来るって言ったじゃない」。そう言いながら焼き鳥にかぶりつきます。

 焼き鳥が包まれていた新聞に書かれていたのが日本国憲法の条文でした。優三との会話を想い出しながら、思いっきり泣きじゃくる寅子。心が解放された瞬間でした。そのシーンを盛り上げた劇中歌『You are so amazing』。優三が出兵する別れの場面のあの曲が再び。一層悲しみを誘います。

 そして、第1話の冒頭へと繋がります。悲しみを乗り越えた寅子のその先が始まります。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「あんぱん」八木(妻夫木聡)のプロポーズにキュン! 蘭子(河合優実)のモデルがあの作家なら…無事を祈る
 2年がかりで完成したテレビアニメ「それいけ!アンパンマン」が放送され、のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)をはじめ、それぞ...
桧山珠美 2025-09-27 12:28 エンタメ
スキャンダル無縁!鈴木亮平が初期に演じた「クセ強キャラ」 4選。もっと評価されるべき“異彩を放った”役も
 現在公開中の『劇場版 TOKYO MER ~走る緊急救命室~ 南海ミッション』ではチーフドクターの喜多見幸太役を演じて...
zash 2025-09-25 11:45 エンタメ
「あんぱん」アンパンマンマーチの歌詞に込めた思い。千尋(中沢元紀)や寛先生(竹野内豊)の写真にホロリ…
 ある日、アンパンマンをテレビアニメ化したいとテレビプロデューサーの武山(前原滉)が訪ねてくる。だが嵩(北村匠海)は、ア...
桧山珠美 2025-09-25 15:44 エンタメ
【芸能クイズ】「畑芽育」を正しく読める? 他にもいる、実は“常用漢字外”の読み方をする芸能人は誰?
 テレビやネットでふと耳にした、あのひとこと。記憶の片隅に残る発言の背景には、ちょっとした物語があるのかも?  ネ...
「あんぱん」石橋蓮司の“なりきりアンパンマン”が見れるとは! 登美子(松嶋菜々子)は毒親返上か
 のぶ(今田美桜)が撮ったミュージカルの写真を見ていた嵩(北村匠海)は、こっそり来ていた登美子(松嶋菜々子)が写った写真...
桧山珠美 2025-09-22 16:22 エンタメ
「あんぱん」嵩とヤムさんの再会にグッときた。でも顔をよく見たら…気になった“余計な”こと
 客席はたくさんの子どもたちで埋まり、その様子をカメラに収めるのぶ(今田美桜)。ミュージカルが終了すると、会場は大きな拍...
桧山珠美 2025-09-20 11:47 エンタメ
「あんぱん」のぶの“お手柄”総決算の回。ヤムさん(阿部サダヲ)と蘭子(河合優実)の繋がりは“前世”からの縁なのか?
 のぶ(今田美桜)は草吉(阿部サダヲ)にあんぱんを焼いてほしいと頭を下げるが、断られてしまう。蘭子(河合優実)からこのま...
桧山珠美 2025-09-18 17:16 エンタメ
加藤清史郎の“奇跡の成長”を「放送局占拠」で見た。寺田心ら子役出身者がイケメンになっている件
 加藤清史郎くんのイケメンぶりには目を見張るものがあります。現在、櫻井翔主演「放送局占拠」(日本テレビ)に出演しています...
『あんぱん』担当編集者の“セリフ”にモヤッ…。そしてメイコはまた歌うのだろうか
 ようやく世に出た絵本『あんぱんまん』は売れないままだった。それでものぶ(今田美桜)は、子どもたちに読み聞かせを続ける。...
桧山珠美 2025-10-06 16:33 エンタメ
Snow Manの1人勝ちに歯止めをかけるか?timeleszとSixTONES、激化する“2番手争い”の行方
 嵐の活動休止以降、長らくSTARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所/以下SE社)は様々な指標でSno...
こじらぶ 2025-09-15 11:45 エンタメ
横浜流星が“レア動画”に降臨!でも…あれっ? 大河ドラマで「国民的俳優」となった代償か
 今年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』に主演し、興行収入120億円を突破して歴代実写邦画2位となった映画『国宝...
堺屋大地 2025-09-14 11:45 エンタメ
『あんぱん』津田健次郎に演技賞を差し上げたい。東海林の“最後”が完璧だった。ひとつだけ残念だったこと
 東海林(津田健次郎)の訪問からほどなくして、琴子(鳴海唯)から手紙が届く。そこには東海林が上京した本当の理由が書かれて...
桧山珠美 2025-09-13 11:30 エンタメ
『有吉の壁』ブーム期待も…人気キャラの“展開”に冷めた視線。番組の過剰な介入で萎えるファンの複雑心理
 日本テレビ・水曜7時からの人気番組『有吉の壁』(日本テレビ系)。なんとこの10月でレギュラー放送開始から5年半を越える...
『あんぱん』お色気や国民的アニメの時代、のぶの行為に子供は喜べるのだろうか
 のぶ(今田美桜)は八木(妻夫木聡)の会社で子どもたちに『あんぱんまん』の読み聞かせをすることに。だが、子どもたちは興味...
桧山珠美 2025-09-13 11:30 エンタメ
『あんぱん』あれっ、今“あんぱんまん”って言った? 開始2分で誕生。嵩の創作の苦悩が見たい
 嵩(北村匠海)は再び“おじさんあんぱんまん”の絵を描き始め、物語はほぼ完成する。原画を見つめながら、嵩の話に耳を傾ける...
桧山珠美 2025-09-13 11:35 エンタメ
【芸能クイズ】伊東市長で話題の東洋大学、フワちゃんは卒業済み。では同大学出身“ではない”有名人は?
 テレビやネットでふと耳にした、あのひとこと。記憶の片隅に残る発言の背景には、ちょっとした物語があるのかも?  ネ...