私の「仕事」は夫に内緒。専業主婦が下世話なゴシップにのめり込むワケ

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-10-12 06:00
投稿日:2024-10-12 06:00

【大崎の女・石塚 華34歳 #1】

 夫を仕事に、ふたりの息子を小学校に送り出してからが、自分の時間だ。

 長時間かけて丁寧に淹れたブルーマウンテンを味わいながら、私はレースカーテンの奥に広がる都会の景色を見下ろした。

 趣味の珈琲は学生時代にハマり、こだわりが高じて自宅焙煎するほど入れ込んでいる。今日も相変わらずのおいしさに心の底から酔いしれた。

 大崎駅から徒歩圏内のこの部屋は大手テレビ局に勤める夫・大輔の通勤に便利というだけの理由で、5年前に購入したいわゆるタワーマンション。

 中層階の部屋であるが、その高さは地に足がついているような、いないような…そんな不安定な自分の社会での立ち位置を表しているようで何気に気に入っている。

 ――「表向きは」優雅な専業主婦のワタシ。でも…。

華が「テレビ視聴」と「SNS検索」を見り返すわけ

 ある種の背徳感に浸りながら、口の中にひろがる深い苦みをじっくり堪能していると、ピンピロリンロン…ドラム型洗濯機の終了音が聞こえてきた。

 ランドリールームに駆け込み、浴室乾燥機に洗濯物を干したら、もう時刻は朝8時だ。

 私はあわててNHKの朝ドラにチャンネルを合わせた。

 朝ドラの後は、あさイチの「朝ドラ受け」を確認してから、ラヴィット!にチャンネルを変えて流し見する。知らないカードゲームのコーナーが始まったので再びNHKに戻した。

 あさイチでは、朝ドラで人気の男性俳優がゲストで登場している。

 トークの内容から、どうやら彼の役柄が近々退場する展開があることを察した。私は家事の手を止め、ノートパソコンを立ち上げた。

 開いたのはYahoo!のリアルタイム検索だ。俳優の名前で検索すると、案の定「死亡フラグ!」という投稿でXは溢れかえっていた。

 私は番組が終わるまで、画面横目に、Xの投稿をずっと眺めていた。

ミドリマチ
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作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

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