更年期は洗濯物が増える!「汗とともに去りたい」と心がチクチクしたら…

小林久乃 コラムニスト・編集者
更新日:2024-10-23 06:00
投稿日:2024-10-23 06:00
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老化現象についてありのままに綴ります。第2話は「汗とともに去りたい」。

「外、雨降っていました?」

 今年の夏も頭からずっと汗をかいて、首筋にずっと汗が流れていた。

 特に激しい運動をしているわけでもなく、冷房の効いた室内で掃除をしているだけなのに、私の汗は止まらない。「滝汗」とはよく言ったもので、まさに首筋はナイアガラの滝。更年期とは人によって症状は全く違うが、私の場合、一番困っているのが夏場の大量の汗。婦人科医の診断によると「のぼせ」らしい。

 30代から低容量ピルを服用しているので、夏になると少し汗量が増える体感は経験済み。ピルは偽妊娠状態になり、排卵と生理を抑制する効果がある。妊婦さんがよく「暑い」と漏らしている状態と同じだ。10年以上服用を続けていると、普段より少しだけ多い汗にも慣れてきていた。

 ただ45歳以降「更年期かもしれない」と気づいた頃の汗の量は尋常ではなかった。ここ数年の酷暑に伴って、私の汗も大増量だ。

 まず汗をかいているのは、頭部と上半身だけ。ホットフラッシュのようにいきなり熱くなるというわけでもなく、気温と共に上昇していく。上半身が熱湯でゆでられていく、サッポロ一番のようだ。髪の毛はいつでもウエットスタイル状態で、油断をすると、私のボブヘアの毛先からは汗が雫のように垂れている。


【こちらもどうぞ】更年期、それはある日突然に…45歳女の体が『倦怠感で満タン』になった

涙と汗が流れる私、甲子園球児か

 今夏のある日。自宅で週に一回の掃除をしていたところ、髪の毛がびしょびしょになっていた。私は屋外で庭の手入れをしていたわけでもない、冷房完備の部屋で掃除をしただけなのに。

 Tシャツの首まわりが汗でにじみ、赤く火照った顔の自分の姿を鏡で見た瞬間、泣きそうになってしまった。老け具合に落胆したわけではない。たぶん、汗と暑さに疲れていたのだと思う。あとは更年期の影響による、若干のメンヘラ勃発だろうか。

 泣いていても仕方がない。家事は誰も代わってくれないし、やるしかない。そう思った瞬間、開き直って、吸水専用のタオルを頭に巻いた。気分は漁師だ。出てくる汗は気合いで止まるものではないし、それなら氾濫を強制的に食い止めるしかない。その日から自宅で汗が気になる時は、人目があるわけでもないと、威勢良く頭にタオルを巻くようにした。

 宅配便の配達を受け取る時に、セールスドライバーさんが私のタオル姿を見て「あ…」「すみません!」と言われたことがある。見てはいけないものを見たような雰囲気だった。そりゃ真っ昼間に頭にタオルを巻いている人も、そんなにいないだろう。ただ、入浴後という色っぽい事情ではなく、汗をかいているだけ。

 ちなみにタオルを取ると、予想通り、タオルは盛大に濡れている。そのままでいるのも不潔だと、シャワーを浴びて汗を流す。

「更年期は洗濯物が増えるなあ…」

 一時期はそう考えてモヤッとしたけれど、単細胞の利点を活かしてこう考えた。私には今、育ち盛り、食べ盛りの息子がいると思えばいい。彼らはやれ部活だ、それ着替えだと洗濯物の量が多いと聞く。

 もしこれを読んでいる方が同じ状況でお子さんがいるのなら、横浜流星に似た超・イケメンの息子がもう1人増えて、その子の洗濯物を洗っているんだと想像してみて欲しい。何事もモノは考えようなのです。

「暑くて…死ぬ…」

 コロナ禍でマスクもしながら、夏に近所を歩いている時に私はこんなふうに、道端でひとりごちていたらしい。のぼせモンスターと化した私とすれ違った友人が「あんたとすれ違ったけど、独り言を言っているし、目が怖いしで、声かけらんなかった」と、LINEで教えてくれた。なんてこった。

 さらに恥ずかしかったのは、夏、歯医者へ出かけた時のこと。夕方で少しは暑さもおさまっているだろうと、片道40分を歩いて向かった。これが計算ミスで、暑さはおさまることを知らず、夕方も30度を超えていた。歯医者に到着した頃は、髪の毛は汗びっしょり。そんな私を見て、歯科医が開口一番にこう言った。

「小林さん、こんにちは…あれ? 外は雨降っていました?」

 いや、降っていない。汗で濡れた私を見て、そう思ったらしい。ということは、今まで誰かにも、間違った天気を触れ込んでしまったかもしれない。畜生、汗め。

小林久乃
記事一覧
コラムニスト・編集者
出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にてデビュー。最新刊はドラマオタクの知識を活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディアの構成と編集、プロモーション業が主な仕事。正々堂々の独身。最新情報は公式HP

ライフスタイル 新着一覧


縁を切るべき友達の5つの特徴&上手に縁を切る方法とは?
 どんなにコミュニケーション能力が高い人でも、「苦手だな」「付き合いにくいな」と感じる人は、誰にだっているもの。仕事の付...
後ろ足で器用にポリポリ…一緒に“にゃんたま”も揺れちゃうの
 きょうは、首元がカユ~イにゃんたま君です。  首を掻くのに、うしろ脚を使うなんて…ニャイす!  一本だけ爪...
脱いだ作家を守るために…作品を山に埋めた編集者の話 #2
 自分の作品がヘアヌードブームに引っかかることも、世間はこんなにエロが好きで、女性のヌード=男性の下半身への奉仕物、と見...
脱いだ作家を守るために…作品を山に埋めた編集者の話 #1
 女が脱ぐ仕事をするのには、いまも昔も危険や煩わしいことが付きまといます。  私自身、音楽をやっていた頃に自分の作...
お葬式に黒いタイツはダメ?寒い日の防寒対策&喪服のマナー
 真冬にお葬式に参列することになった時、黒のストッキングでは足元が寒いことってありますよね。でも、暖かい格好で行こうと思...
配信者にとっては厄介!「察してもらいたい欲」がすぎるひと
 ライブ配信は、まさに魑魅魍魎(ちみもうりょう)がうごめく世界。今日も今日とて、多くのライバーやリスナーは、配信をめぐっ...
この匂いはあの子かにゃ?チェックに余念のない“にゃんたま”
 猫の嗅覚は、人間の嗅覚の数万倍から数十万倍鋭い、といわれています。  猫の鼻先は常に湿っていて、空気中に流れてい...
今年の実付きは最高!「千両」と共に迎える幸せなお正月
「今年の千両、実付きがいいよ!」  花市場でいつもお世話になっているセリ人のお兄様が電話の向こうで叫んでおります。...
旅行できない今こそ…年末年始におすすめグルメサービス2選
 政府の観光支援策「Go To トラベル」の全国一斉停止が決まり、年末年始の予定を変更した人も少なくないはずです。こんな...
静かな時間の終わりなき毛繕いに感じる“にゃんたま”の美学
 男には自分の世界があるらしいと知ったのは、小学校低学年の頃。  テレビでルパン三世のアニメのテーマ曲が流れていて...
人と仲良くなる6つのコツ&友達作りが上手な人の共通点♪
 社会人になってから、「人付き合いに苦労している」という人は多いはず。学生の頃には、無難にこなしていたはずの人付き合いが...
アンガーマネジメントのススメ~怒りを伝えて我慢にさよなら
 男女問題研究家の山崎世美子(せみこ)です。人間関係のほとんどのトラブルは“怒り”から始まるといっても過言ではありません...
急ぎ足の隙間からチラリ…赤ネコ君のぷっくり“にゃんたま”
 きょうは、急ぎ足で横切るにゃんたまω様。  茶トラの別名は「赤ネコ」。鮮やかな色をした毛並みに、立派なにゃんたま...
ハマる女子続出 WEB漫画「明日、私は誰かのカノジョ」って?
 近ごろは、紙のコミック雑誌だけでなく、電子コミック連載でのヒット作も増えてきました。その中でも紙と電子で累計40万部を...
自由奔放が長寿の秘訣? 森の妖精“フェアリーピコ”の育て方
 さかのぼること、数年前の年末のある日……。  花市場を徘徊していたワタクシは、市場関係者の鉢物担当のお兄様たちに...
お酒が飲めなくてツライ…下戸が飲まずに飲み会を楽しむ方法
 水商売に限らず、仕事をするようになると必ずぶち当たるのが「お酒は飲めた方がいいのか?」という問題。緊張がほぐれるお酒の...