「低気圧と月と更年期」が連動? 天気頭痛とは無縁で、おばさんに仕上がったけれど…

小林久乃 コラムニスト・編集者
更新日:2024-10-30 06:00
投稿日:2024-10-30 06:00
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老化現象についてありのままに綴ります。第3話は「低気圧と月と更年期?」。

低気圧がやって来たって!?

 45歳で更年期障害による開幕のファンファーレが鳴った頃。同時期に「低気圧」「新月」「満月」の3ワードがチラつくようになった。えも言われぬだるさに悩むようになってから、インターネットで更年期について調べるのが日課だったせいかもしれない。

 そこでは(更年期の)同志たちが、やたらと天気に関する情報を発していた。よく出ているワードは「梅雨」「台風」「雨」「低気圧」だ。

 …はて? 生きてきて気圧によって健康状態が左右されたことはない。「気象病」と診断されたこともない。ちなみに頭痛もほぼないまま、おばさんに仕上がった。そんなデリケートな体でもあるまいと、気象と自分は切り離していたけれど、そうもいかなくなった気配がする。

 とある日。雑誌の撮影現場がモデルもスタッフも全員、女性だった。10年前なら撮影中に「どこの店がおいしい」「最近買ったコスメはこれが良かった」と色気のある会話が弾んでいたけれど、最近は違う。

 私も年齢の上昇と共に、雑誌もスタッフも対象年齢が上がっている。近頃は「どこの病院の健康診断がいい」「この漢方薬は効く」「親の介護に困っていて」と、現実味を帯びた話題ばかりが、撮影中に飛び交う。これもこれで楽しいが。

【こちらもどうぞ】「漢方の基本」プレ更年期世代の素朴な疑問10【専門家監修】

40越えたら毎日不調

「あ〜、ごめん。久乃ちゃん、頭痛薬持っている?」

 カメラマンさんが、ライターだった私に尋ねてきた。急いでスタジオのスタッフを呼び、救急箱を借りて、鎮痛剤を差し出した。

「大丈夫ですか? 頭痛って風邪かな…」

「いや、いつものことでさ」

「いつも? 頭痛持ちなんですね」

「特に今日、低気圧が来ているでしょう? もう頭痛もだるさもひどくって」

 低気圧が来ている? え、どこに? スタジオに? 私が黙っていると、40代後半だというスタイリストさんがすかさず会話に入ってきた。

「あ〜、私も分かりますよ。しんどいですよね。あとさー、めっちゃ眠くなる!」

 カメラマンさんは、同志発見! とばかりに

「でしょ? これどうにかならないかなあ。年取ってから顕著にひどい気がする」

 「え? 年取ると気圧に振り回されるんですか? 男だけじゃなく?」

 カメラマン「(笑)。人によるけどねえ。40〜50代になったら、毎日不調だよ」

 そう話していた。これが低気圧を気になり始めたきっかけだったことを覚えている。

月の満ち欠けの登場なり

 40代半ば、遅咲きデビューだと言われそうだけど、急激に低気圧情報に対して、敏感になり始めた。そしてとある日、低気圧による(?)だるさに襲われる。更年期デビューを飾っただるさ(第1話参照)ほどではない、ライトなだるさだ。

 それだけではなく、眠い。異常に眠い。二日酔いでもないのに、急に眠い。この状態が1〜2時間続いた。横になったら一貫の終わりだと、デスクに突っ伏してなんとかやり過ごす。

 途中、なんとなく某美容家のSNSを見ていると、こんなことも書かれていた。

「今日は低気圧もひどいけど、新月ですよね〜。あ〜、この時期はしんどい! 皆さんもお気をつけて」

 え? 低気圧だけでなく、月の満ち欠けも中年に体に関わってくるの? 確かに月と陣痛は関係性があると聞くけれど、出産経験がないので、さっぱり分からず。私は次から次へと飛び出してくる新情報のせいか、だるさが増した。そして「これは錯覚だ。初恋に浮かれる中二病が、少しだけ気象病になって現れた…」と収めようとしたが、そうもいかないようだ。

 2023年5月にツムラが合計800名の男女に行ったアンケートによると、梅雨時期に不調を感じると30〜40代の女性の60%が回答している。梅雨と台風の時期は湿度も高くなるし、気象病持ちにとっては辛い時期。症状の多くは頭痛、だるさ、肩こり、関節痛などが挙げられている。年代、ドンズバじゃないか、私。

 さらに某婦人科のコラムを読んでいると、「低気圧になると更年期障害の症状が悪化する傾向があります」とも記述されていた。はああ。

 読んでいると、懊悩(おうのう)としてきた。商売柄なのか調べることが得意で、大好きである。ただこのまま続けても長期決戦になるぞと、スマホをテーブルの上に置いて、しばらくリサーチと距離を置こうと決めた(まあ、長くは続かなかったけど)。

なんとなく不調がいちばん厄介だ

 衝撃の低気圧との出会いを経てから『頭痛ーる』というアプリを手に入れた。これ、周囲の女性のスマホにはほとんど入っていたから驚いた。皆、生理や更年期障害と同じで、表立って口にはしないけれど、不調を抱えていたのか。

『頭痛ーる』を見ながら、自分の体調をチェックしていると、確かに「低気圧爆弾マーク」が出ると、体調がすぐれない。とはいえ、全て当てはまるわけではなく、台風、梅雨、低気圧、新月、満月の時期に推しのライブへ行って、テンションをぶち上げていたので、どうにも怪しい。酒を飲んでいたら「あ、低気圧だった?」と終わることもある。確固たる症状やエビデンスもなく、“なんとなく”不調。これで終わる。

 ちなみに婦人科で聞くと気象病には決定的な特効薬があるわけではなく、規則正しい生活を求める、漢方薬を飲む程度の対応しかないという。気休めか。規則正しい生活は独身、40代、フリーランスにとって最大の敵だ。

 そんなこんなで、気象と更年期に関しては決定的な正解は求めないことにした。時には「ちょっと低気圧で具合が悪くて」と、原稿締め切りの延長を求める材料にしようかと思ったが、こんなエッセイを書いたらもう無理だ。

■参考資料
https://www.tsumura.co.jp/brand/kampo-communication/kampo-blog/017.html
https://mtdcl.com

小林久乃
記事一覧
コラムニスト・編集者
出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にてデビュー。最新刊はドラマオタクの知識を活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディアの構成と編集、プロモーション業が主な仕事。正々堂々の独身。最新情報は公式HP

ライフスタイル 新着一覧


40代、人生変えたい!10年後が想像できた気になってませんか
 若い頃は、何をするにも希望や夢を抱いていたものです。が、年齢を重ねるごとに現実を知り 、人生に諦めを感じはじめていつの...
渦中のロイホ「パンケーキ」を“公式推奨”で食べてきた結果は
 ファミリーレストランチェーン「ロイヤルホスト」のパンケーキがにわかに注目を集めています。きっかけは人気バラエティー「ジ...
鼻チューまで! 甘えん坊“たまたま”のストレートな愛情表現
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「ナンキンハゼ」知ってる? 白い実×♡の葉で“ずるかわいい”
 本格的な寒さを迎え、楽しいイベントが目白押しで心が躍る気分でございます。加えて、通勤途中、車窓から眺める公園や道路脇に...
おばあちゃんになっても恋したい? 2022.11.30(水)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
値上げの冬に負けない!一人暮らしの「防寒術」侮るべからず
 冬の一人暮らしって、家族と過ごすよりも寒く感じますよね……。とはいえ、値上がりする電気代に困っている人も多いはず。今回...
“たまたま”のごはん場へGO!みんなで仲良くたくさん食べてね
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
観葉植物がすぐ枯れる!購入前に知りたい5つの原因と選び方
 部屋の中に観葉植物があると、それだけで素敵な雰囲気に変わりますよね。しかし、観葉植物を枯らしてしまった経験があると、欲...
この季節特有? 浮足立つ気持ちは何だろう 2022.11.27(日)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
最期のLINEは「大好きだよ」忘れられない女友達の感動の言葉
 あなたにとって女友達とはどのような存在でしょうか? もしかしたらその友達は、あなたを救う女神様かもしれません。  今...
誰かに紹介する?したくない?付き合う人の選び方は単純明快
 親や先輩から「付き合う人は選んだほうがいいよ」と言われた経験はありませんか?  お恥ずかしいのですが、私は30歳に...
汚部屋ではないけれど…「片づけられない女」を卒業したい!
 自分の部屋を見回したとき「ぐちゃぐちゃしてる」「誰にも見られたくない」と感じる人は、もしかすると「片付けられない女」か...
「授乳するの気持ち悪い」と落ち込んだ日 2022.11.25(金)
 皆さん、授乳にどんなイメージを持っていますか。母と子が触れ合う大切な時間? 母親が自らの栄養を子に分け与える神聖な行為...
ノーパン生活の実態! 解放感と掃除面倒を天秤にかけたら…
 芸能人でも、ノーパン生活を公言している人は多いですよね。気が楽そうな気はしますが、やはり防犯面では心配なことも……。果...
日向ぼっこで免疫力アップ! 自慢の“たまたま”もフワフワに
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...