猛暑の夏…健康な高齢者でも熱中症予防を“家族ですべき”理由

東城ゆず ライター・エディター
更新日:2019-08-07 06:00
投稿日:2019-08-07 06:00
 介護士をしていた経験をもとにライターをしています。筆者はこれまで、認知症の症状や認知症を発症した時の具体的なケアについて執筆してきました。「でも『自分は大丈夫』と思っている高齢者も決して油断は禁物」と思っています。その一つが、熱中症です。

高齢者にこそ「熱中症に気をつけて」

 幼児や乳児に対しては、「親がついていないと」「大人の目がないと」という危機感を誰もが持つことができます。だから、地域で車が多く通るところでは、見ず知らずの子どもにも「危ないからね」と声をかけるでしょう。

 しかし、それと同じくらい筆者が日頃から呼びかけたいと思っているのが、高齢者への「熱中症に気をつけて」です。バスを待っているとき、玄関から出て何げなく話をした近所のおばあさん。子どもたちを見守ってくれている交通巡視員のおじいさん。とにかく筆者は、「熱中症に気をつけてください」とアナウンスします。

 近ごろの猛暑、もはや酷暑と言わざるを得ない状況だからこそ、いま一度アナウンスします。身近にいる高齢者にこそ「熱中症に気をつけて」と、声をかけていただきたいのです。

高齢者の熱中症はなぜ危険?

 高齢者の熱中症が危険と言われる理由について、お話ししましょう。

変温についていけない

 日本には四季があります。冬と夏では、気温差が30度以上違うことも。そんな変温についていけないのが、高齢者です。体内温度を自分で調整することが難しいのです。そのため、空調調整が大事になってくるのですが、電気代を気にしてみたり人工的な空気を嫌がったりと、うまく適応できていないのが理由に上がります。

 一昔前の扇風機で暑さをしのげる状況ではないのに、「クーラーは温度調整が難しい」とか「電気代が多くかかる」といった情報弱者であることも、熱中症を促進させます。

体力がない

 いくら健康であっても、高齢者ですから体力はありません。例えば若者なら10分で行ける距離のスーパーでも、高齢者の場合は30分もかかってしまうこともあります。「自分は歩けるし、まだまだ平気!」という感覚のまま、真夏にうっかり買い出しにいくと、知らず知らずに熱中症になっていることがあります。

 冬に30分かけてスーパーに行くことは、いい運動になるかもしれませんが、夏場は違います。そのことを自覚していない高齢者も少なくありません。

一人暮らしの人が多い世代

 同じように熱中症の注意喚起をされる子どもの場合、多くは身近に大人がいる環境で生活をしています。一方で、体の機能的には子どもと同じくらいのレベルで注意すべき高齢者は、配偶者の他界などで一人暮らしというケースも多くあります。

 そのため、「汗もかかずに意識が朦朧している」といった体調の変化や「外気が暑いのに寒いと訴え、暖房をつける」といった、熱中症の症状に気づくことが遅れます。そのため、重症化しやすい傾向にあるのです。

高齢者の熱中症はこうして起こる! 賢い対処方法

 高齢者の熱中症の原因は一見、思いつかないところにあったりします。そこで、高齢者の熱中症の原因にありがちなことと、その対処法を紹介しましょう。

空調調整を嫌がる

 一昔前の日本といえば、風通しが良い大きな掃き出し窓に“すだれ”をかけ、日差しのみを避けて風通しを良くしていたものです。クーラーのような文明の利器は、まだまだ高齢者からすると「使いこなせないイマドキなモノ」なのです。

 これまで通りの暑さ対策を「変えたくない」と頑固になる高齢者も多くいます。「クーラーをつけて寝ると体に悪い」と言われたのは、とっくに昔のこと。夜になっても気温が下がらない近年は「クーラーをつけて寝ないと死活問題」ということを知らないのです。空調は扇風機ではなく、クーラーを使用しましょう。

皮膚が薄いので寒がり

 高齢者になるほど、人の皮膚は薄くなる傾向があります。さらに血の巡りも悪くなるため「寒さ」を感じやすくなります。筆者が関わった高齢者も、真夏なのに「寒い」といってフリースを着ている人までいました。本人が「寒い」と訴えたとしても、同じ温度の中で生活をしているわけですから、熱中症になってしまいます。本人が「寒いから」と訴えても、適切な服装で過ごすことを求めましょう。

本人が好む水分摂取の促しを

 嚥下(えんげ)能力の低下で、水分を取ると激しくムセてしまうことがあります。これは高齢者でなくても苦しいものです。そのため、「水分を取りたくない」と思ってしまう高齢者が多くいます。しかし、熱中症対策に水分摂取はマストです。本人が好む水分摂取の方法にしたいものです。

 例えば、ムセてしまう人には「ゼリー」や、白身魚のフライに「野菜のあんかけ」をかけることを勧めてみましょう。「ところてん」などもいいですね。本人にとって馴染みがある気に入った方法で、水分を取ることを何がなんでも勧めましょう。イオンウォーターなども、率先して飲みたいアイテムです。

塩分の控えすぎに要注意

 塩分の控えすぎには、注意が必要です。減塩商品なども多く出回っており、日本の健康意識の高さには驚くばかりですが、夏場は「塩分も大事」ということを覚えておきましょう。塩辛いものを食べれば、水を飲みたくなるので、熱中症対策にはいいのです。

 体の中の塩分が少なくなると、水分をより排出し塩分濃度を高めようとする働きが体内で起こります。水分と同じくらい塩分を取ることに、細心の注意を払いましょう。お味噌汁はいつもより濃く味付けをしても大丈夫です。日ごろから減塩生活を続けている人ほど、夏場の塩分の制限のしすぎには注意が必要ですよ。

高齢者の熱中症には周囲の呼びかけが肝心です

 夏場にエアコンが故障しても「クーラーが苦手だし」と修理をしない高齢者もいます。介護士が夏場に自宅へ訪問をすると、まず最初に空調が適切かどうかを確認します。

 日本には四季がありますし、常に気温差が激しい中で生活しています。昨日と今日で、気温差が10度ひらくこともあり、高齢者や子どもの身体に大きな負担をかけます。「生まれも育ちも日本だから」なんて油断ができないくらい、この気温差が年々過酷になっている気がします。

 身の回りの動きがスムーズにできなくなってくる高齢者は、環境を整えることさえ難しく感じることも。地域や家族が一体となって、電話一本でもいいので「熱中症の対策を」と注意喚起をしてほしいと思います。

東城ゆず
記事一覧
ライター・エディター
1994年生まれ。11歳の頃からブログを運営。ライターやエディターとして、女性誌メディアや地元新聞のコラム枠まで幅広く活躍中。恋愛やママ友問題、介護士であった経験からリアルな介護問題まで幅広い知見がある。年子兄弟を連れ離婚の経験があり、現在は再婚に至る。

ライフスタイル 新着一覧


グルメ激戦区「名古屋めし」を堪能する7つのポイント。アラフォー女ライターが心に誓ったことは…
 YouTubeやガイドブック、名古屋に住んでいる方などから情報を集め、グルメ計画を立てて名古屋へ行きました!  ...
休み明けに別人に…春休みに大変身した4つの経験談&心構え
「春休み中に大変身したい!」「この休みの期間に垢抜けたい!」と、春休みに美容へのモチベーションを上げている女性は多いので...
子供の恋愛事情にどこまで口を出す? 5つの家族から学ぶビミョーなさじ加減
 イマドキのオマセな子供の恋愛事情は、親として気になるもの。つい「なんであの人がいいの?」「そんな人はやめなさい」なんて...
黒模様の絶妙な配置よ♡ デザインかのようなパターン美を誇る“たまたま”
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
東京都も国もおばさんたちをガン無視か? 更年期割引、お願いいたします
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
「ごPDF化」「させていただきました」馬鹿丁寧なLINEで赤っ恥!うっかりやりがちな間違い敬語にご用心
 日本語は、本当に難しい言語ですよね。ひらがなやカタカナ、漢字が混ざっているだけでなく、丁寧語、謙譲語、尊敬語など状況に...
40代だけど友達がいないのはやばい? 気の合う仲間の作り方3つ・楽な関係をキープする方法3つ
 40代でふと気がつくと、友達が誰もいないことに気がつき、不安になる人は多いようです。とはいえ、友達を作れば自分がしんど...
【3COINS】5軒目のスリコでギリ獲得!悩める花粉症の民を救う神品3選
 3月も早いものでもう半ば。ポカポカ陽気な日も増えてきました。  そうなると、とたんに威力を増すのが、にっくきスギ花粉...
最近「卒業」したこと7選。SNS、婚活、親の言いなり…手放したら幸せが増したかも
 数十年人生を生きていれば、「これ、やめてよかったな」「あれを卒業してから人生が変わった」と感じるものが一つや二つありま...
乱発されすぎじゃない?『LDK高評価』うるおいアイテム3品をポチった40代女の不満・疑問・納得
 話題のコスメや、広告でよく見かける化粧品や日用品。「webでよく見るあの商品、本当にイイの?」「買ってみたいけれど、口...
天国のおばあちゃんがAV好きに? 米国で起こった笑えないタトゥー失敗の裁判トラブル
 アメリカといえば、タトゥー文化が根付いている国のひとつ。街を歩けば、腕や足、首、果ては顔にまでタトゥーを施している人を...
2025-03-11 06:00 ライフスタイル
ロマンチックおばさんですがなにか? 親の小言もスルーし、好きな服を着続けてきた51歳独女の決意
 パートナーなしの51歳独女ライター、mirae.(みれ)です。先日、SNSで話題になった「ロマンチックおばさん」。とあ...
尊すぎる! 親子“たまたま”に遭遇♡ パパを超える日は来るかな?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
東日本大震災津波伝承館にて~伝えて、記憶する。
 伝えてゆくということ、そして、記憶するということ。  東日本大震災から14年目となる、2025年3月11日、何を...
【動物&飼い主ほっこり漫画】第92回「町のちいさな動物病院にハルがキタ」
【連載第92回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
【女偏漢字探し】「燗」の中に隠れた漢字は?(難易度★★★★☆)
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...