草彅剛、ジェシーらは「演技が下手」なのか? 棒読み俳優がドラマで重宝される理由を解説

小政りょう ライター
更新日:2024-12-10 06:00
投稿日:2024-12-10 06:00

SixTONESジェシーの演技に賛否あるが…

 趣里さん主演『モンスター』(カンテレ/フジテレビ系)に出演するSixTONESのジェシーさんの演技が「棒読み」であると、さまざまなニュースサイトで取り上げられています。

 ですが毎週楽しんで視聴をしている筆者から見ると、確かに平坦なセリフ回しの印象はあるものの、言われなければさほど気になりません。むしろ、無感情さが作品に馴染んでいると思うほどです。

 ジェシーさん以外にも、草彅剛さん、東出昌大さん、西島秀俊さん、福士蒼汰さん…など、「セリフが棒読み」と言われている俳優は数多くいます。しかし、どの役者も映画・ドラマなどのオファーがひっきりなしです。

 世間では批判される彼らが、なぜそこまで求められているのでしょうか。

【関連記事】SMILE-UP.(旧ジャニ)俳優部の演技&将来性、飛躍の片鱗見せたの誰?

草彅剛、東出昌大らは「棒読み」なのに評価が高い

 棒読みだと意見がある俳優の中でも特筆すべき活躍をしているのは、草彅剛さんではないでしょうか。今年は朝の連続テレビ小説『ブギウギ』で主人公・福来スズ子の恩師である羽鳥善一を演じ、大変な高評価を受けました。

 草彅さんは2020年の映画『ミッドナイトスワン』でトランスジェンダーの役を演じ、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞しています。

 また、冒頭で名前を挙げた主な棒読みだとされる俳優の中には、西島秀俊さんが2021年の映画『ドライブ・マイ・カー』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞、東出昌大さんも今年、『Winny』で日本映画批評家大賞主演男優賞を受賞しました。

 プロの目からみたら棒読み=演技が下手というわけではないのです。セリフが棒のように聞こえても、作品の中に溶け込み、演じる人物をきちんと表現できていれば問題ありません。

 むしろ、作品によっては監督から抑揚のない演技、つまり棒演技を求められることだってあるのです。

大げさな感情表現を嫌う名監督たち

 映画『東京物語』などで知られる日本を代表する映画監督・小津安二郎氏の作品には、故・笠智衆さんをはじめとする朴訥で抑揚のないセリフを放つ役者が多く出演しています。

 よくお笑い芸人さんが「昭和の俳優」としてモノマネのネタにするのは、小津作品の俳優の棒読みを想起させるものが多く、誰もが平坦な口調の棒演技です。若い人の映画評でも「昭和の役者はなぜ棒読み?」などという疑問がちらほら見られるほど。

 しかし、それは小津弁や小津節などと呼ばれる、演出であることは映画ファンの間では広く知られるところです。小津監督は「人間は悲しい時に悲しい顔をするもんじゃない」と俳優が演技やセリフに感情を込めることを嫌い、演技らしさを排除した演技を要求していたといいます。

 そのことで、脚本に込めた物語や思いを余計な装飾なく表現でき、感情を排した演技の中にリアルさがにじみ出て、そのセリフが感情を込めるよりもダイレクトに受け手に伝わるのだといいます。

小政りょう
記事一覧
ライター
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


【2024年人気記事】伊藤健太郎は破局して正解! “小栗旬軍団”加入でバーター出演の機会にも恵まれる
 あけましておめでとうございます。2024年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
【2024年人気記事】悪評だらけの天才、平手友梨奈が遅刻やドタキャンを繰り返す本当の理由
 あけましておめでとうございます。2024年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
堺屋大地 2025-01-04 06:00 エンタメ
【2024年人気記事】松本人志はいまや「憧れの芸人」ではない。若手芸人が話す3つの理由
 あけましておめでとうございます。2024年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
帽子田 2025-01-02 06:00 エンタメ
【2024年人気記事】なぜ塚地武雅、藤井隆はドラマ出演が続く? 不人気芸人との決定的な違い
 2024年も「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記事を再掲載します。こちらの記事初...
【2024年人気記事】『新宿野戦病院』小池栄子の英語、海外はどう思う?「下手というより…」
 2024年も「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記事を再掲載します。こちらの記事初...
映画「聖☆おにいさん」全力でおバカを演じる松ケン&染谷将太たち。評価は真っ二つだけど…
「M-1グランプリ2024」の準優勝バッテリィズに元気をいただきました。エースでしたっけ。やはり“おバカ”は最強です。優...
ラウール、高橋文哉…2024年「国宝級に検索されたイケメン大賞」TOP5の最も検索された日は…?
 2024年もあとわずか。今回は今年1年を通じて活躍したイケメンが、いかに世間の人々の注目を集めたかを調べてみたいと思い...
こじらぶ 2024-12-28 06:00 エンタメ
【最新回のおむすびにモヤっと】「豚肉と玉ねぎのニンニク炒め」はサラダの後に作ったほうが…
 スナック「ひみこ」で、佳代(宮崎美子)と話す結(橋本環奈)。永吉(松平健)とただいるだけで幸せだと言う佳代の言葉を聞い...
桧山珠美 2024-12-27 19:30 エンタメ
「M-1」令和ロマンが主人公なら、エバースは裏主人公。泥臭い秀才コンビを応援したくなるのが人のサガだ
 今年も最高の盛り上がりを見せた「M-1グランプリ」(ABC・テレビ朝日系)。令和ロマンが史上初の2連覇を果たしたものの...
帽子田 2024-12-27 06:00 エンタメ
面白かった「秋ドラマ」を調査!『海に眠るダイヤモンド』を抜いた1位は?期待外れに“あの作品”がまた…
 続々とクライマックスを迎えている2024年秋ドラマ。今期は見ごたえたっぷりの作品が揃い、ドラマに夢中になっていた人も多...
【今日のおむすびにモヤっと】別人と化したナベベ(緒形直人)、ギャルに救われた話は見せ場になったはず
 翔也(佐野勇斗)と別れた結(橋本環奈)は、合コンの場で栄養士になる意味がないのではと言われ、帰り道に考え込んでしまう。...
桧山珠美 2024-12-25 16:30 エンタメ
「M-1」2位! バッテリィズ・エースの愛され力。“アホ”が殺伐とした現代に必要とされるワケ
 もはや年末の風物詩となった『M-1グランプリ』(ABC・テレビ朝日系/以下M-1)が今年も12月22日に開催され、チャ...
【今日のおむすびにモヤっと】翔也は金髪ギャル男というよりディランに見える!?
 野球ができなくなった翔也(佐野勇斗)は、総務課でフルタイムで働くことになるが、パソコンを使えないため先輩からお荷物扱い...
桧山珠美 2024-12-24 17:19 エンタメ
紅白司会の橋本環奈、NHKは「パワハラ疑惑」を完全スルー! ジャニーズ問題への提言はなんだったのか
 地方アイドルグループに所属していた中3当時、ライブ中に撮られた奇跡の一枚によって、「千年に一人の逸材」と騒がれた橋本環...
堺屋大地 2024-12-24 10:11 エンタメ
ぐるナイゴチ、高橋文哉残留を願うのみ。大晦日は“結婚間近”報道後もヤキモキする佐藤健に懸ける!
 毎年この時期になると、どうしても気になってしまうのが「ぐるナイ」(日本テレビ系)の“ゴチになります”で誰がクビになるの...
【最新回のおむすびにモヤっと】“秒”で作ったHPでもう繁盛店?「初回半額」特典でも付けたのか
 愛子(麻生久美子)が家出をしたために結(橋本環奈)がヘアサロンヨネダで働いていると、店のホームページを見て来たという客...
桧山珠美 2024-12-21 06:00 エンタメ