「性的合意」を描く舞台に主演俳優が思うこと。傷に蓋をしても「消える」わけじゃない【内田慈インタビュー】

望月ふみ
更新日:2025-01-14 06:00
投稿日:2025-01-14 06:00

傷を乗り越えた体験から、今思うこと

――『Yes Means Yes』での、内田さん演じる主人公の性にまつわる問題は、中学時代から始まっています。最初に性的ハラスメントを受けるのは、一見、生徒にも人気がある学校教師から。おそらく彼は最後まで、彼女が傷を受けたと気づいていないように思います。
※主人公は先生から車で送られた際に突然キスをされ、体が固まってしまう

 こうしたケースはたくさんあるだろうと思いますし、彼女がその後、経験する出来事に比べれば、些細に映るかもしれません。でもそれがどれだけの傷になってしまうのか、キャッチできる人とハテナとなってしまう人がいる。

――本作の主軸は「性的合意」についてですが、性的ハラスメントや性虐待など、様々な問題が登場します。今回の出演には、作・演出の詩森ろばさんが内田さんのSNSを見たことも関係しているそうですね。

 過去に仕事場でセクハラとパワハラを受けた経験があり、その経緯を、具体名や時期などは出さずに2022年にSNSに投稿したことがあります。それをろばさんが見てくれていて、「今度舞台でこういうテーマをやりたいなと思っているんだけど、どうでしょうか?」と、とても丁寧に慎重に聞いてくださることから始まり、企画が進んでいきました。

 SNSに投稿するまで、この件に関して、私は長い間、蓋をしてきました。というのも、当時、一番身近な人に相談したところ、「自分の立場が悪くなるだけだから黙っていた方がいい。よくあることだよ」と言われたんです。

 しばらく1人で抱え込みましたが、「せめて誰かが知ってくれていたら」と別の人に相談したところ、面白おかしく吹聴されてしまって、いろんな人の言葉に二次的、三次的に苦しめられました。人間不信になり、次第に本当に自分が悪いことをしたかのような気持ちになっていきました。

 やがて向き合うのがつらくなり、この件に蓋をしてしまったんです。でも後年、自分の仕事をする権利を守るために、蓋を開けるべきタイミングが訪れ、向き合う決意をしました。

望月ふみ
記事一覧
70年代生まれのライター(ときどき撮影)。映画やドラマ、タレント本などのエンタメ関連記事を執筆。現在はインタビューが中心で、月に20本ほど取材。ねこ検定上級、2級愛玩動物飼養管理士取得と愛猫家街道をばく進中。

X

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


円満退職に必要な最低限のマナー6選、「立つ鳥跡を濁さず」は社会人として当たり前!
 終身雇用の時代は終わり、今では6割の社会人が転職経験ありだというデータも出ています。読者の皆さまのなかにも、「転職しよ...
更年期、それはある日突然に…45歳女の体が『倦怠感で満タン』になった
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老...
生理前を穏やかに過ごすご機嫌アロマ術【調香師が解説】タイプ別おすすめの香り・精油・香水は?
 女性の体は生理が近づくとホルモンのバランスが崩れ、精神的なイライラや落ち込みに加え、むくみや便秘、疲れやすさなど、PM...
兄弟姉妹なのになぜ不仲? 怒る前に知っておきたい原因5つと対応策3つ
 子育てをしていると、兄弟姉妹の不仲に悩む人が多いですよね。一体何が原因なのでしょうか? また、自身が親になっても兄弟姉...
思わず二度見!『バブ』新商品・MEGA級のボコボコ泡の実力は? 自宅の風呂がジャグジーになるのか
 話題のコスメや、広告でよく見かける化粧品や日用品。「webでよく見るあの商品、本当にイイの? 」「買ってみたいけれど、...
手のぬくもりとともに
 自然と手を合わせるときの気持ちって、  みんな、おんなじだよね。
実りの秋! 澄みわたる青空の下“たまたま”狩りに出かけませんか?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
女と水がいっぱいだ…『娑婆』は何て読む? ヒント:「娑婆はいいな」
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
ほっこり癒し漫画/第83回「迷いインコ歌をうたう 前編」
【連載第83回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
中目黒「ダコー」はまだ大混雑? 代官山「無印良品」新店はオサレな店員さんだらけだった!【秋の東京散歩】
 8月のオープン時には話題を呼び、大行列をなしていた中目黒のパン屋「ダコー(dacō)」。あれから2カ月が経ち、やっぱり...
下世話な仕事がバレた? 夫や息子の「意外な反応」で主婦が気づいたこと
 大崎の高層マンションに暮らす華は、テレビ局に勤める夫・大輔と二人の子供に囲まれ悠々自適な専業主婦生活を送っている。毎日...
地味な女に負けた? 夢を諦めた“こたつライター”の「プライド」が砕かれるまで
 大崎の高層マンションに暮らす華は、テレビ局に勤める夫・大輔と二人の子供に囲まれ悠々自適な専業主婦生活を送っている。毎日...
私の「仕事」は夫に内緒。専業主婦が下世話なゴシップにのめり込むワケ
 夫を仕事に、ふたりの息子を小学校に送り出してからが、自分の時間だ。  長時間かけて丁寧に淹れたブルーマウンテンを...
プロ作家・村上龍先生をリスペクト。64歳のプロ童貞が語る「自己啓発本を好きなこれだけの理由」
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...
「#男児ママ」トレンド入り 小学校低学年の息子が大浴場で誰かに触れて問題になったら?【弁護士解説】
 9月末、X(旧ツイッター)で「男児ママ」がトレンド入り。これは男児を銭湯や温泉、または女子トイレに連れてくる男児の母親...
え、これだけで? 爆速で人と仲良くなれる「超簡単」なテクニック
 みなさんは距離を縮めたい人にはどんな風に接していますか? 私はミリ単位でジリジリ近づくことが多いのですが、スナックでの...